拳を振るい、敵を殺す。
殺して殺して殺して殺して殺して、幾千の敵を屠った。
たくさん殺せばみんなが褒めてくれると思った、だから殺した。
たくさん殺せばみんなが幸せになれると信じてた、だから殺した。
たくさん殺せば物語で見たような格好良い英雄に成れると思った、だから殺した。
でも、違かったよ。全然違う。
『この、化け物!!』
........違うんだ。
《聖櫻学園招待状》
「ん〜.......これはどういうことだ?」
俺、綻(ほころび)東(あずま)は今しがたポストから取り出した手紙を見て、一人呟いた。
俺の中にある知識からすると、聖櫻学園とは国営の超有名高校で、“美男美女”ならぬ、“美少女美女”が集まる(笑)なネタ的高校とされている。
これでも俺は立派なネトゲ廃人なので、掲示板でネタ扱いされている聖櫻学園についてはにわか知識ながらも普通の人よりは多くのことを知っている。
曰く、受験枠が一切なく、推薦受験オンリーだとか、
曰く、招待状が来たら強制的にその学校に所属することになるとか、
曰く、年中無休で珍生物や不審者があふれているとか。
そんな普通とは言えないような噂話を、掲示板では良く見ることができる。
実際、聖櫻学園は俺が今住むこの家から徒歩十分くらいで着く距離にあるので、たまに聖櫻学園に出没するという不審者に遭遇する機会が先日あったが、あんなのがたくさん出没するという聖櫻学園にはあまり近寄りたくはない。
というかぶっちゃけて俺はこれをイタズラだと思うし、面倒なので無視することにしよう。
「それがいい〜それがいい〜っと。」
俺はそのまま振り向きもせずにゴミ箱のある位置にポイっとよく分からない大量の書類を投げ、パソコンがある自分の部屋に向かった。俺はネトゲーで今日も忙しいのだ。
閑話 招待状が届く二日前
俺、綻 東はたまたまアイスがむしょうに食べたくなったので、夜にコンビニに来ていた。
そしてそんな夜の帰り道、俺はよく分からない不審者に遭遇した。
超レア悪宇宙飛行士 Lv.156
一見、遠目から見れば宇宙服を着た人だが、普通に見るとリーゼントが宇宙服を突き破って出ていたり、よく分からないものが付いていたりと、かなりカオスでデンジャラスな不審者だ。
「.............」
絶句。それが以外に言える言葉は今の俺にはなかった。
確かに聖櫻学園に不審者が出ることは噂だが知っていたし、ここはその近くだからもしかしたら会えるかもなんて思っていたが........。
「こんなアグレッシブな変態、初めてみたぜ.......。」
コスプレといい、こんな夜中に出歩くといい、ガチり過ぎだぜ?変態さん。
「.........うぉぉぉおおおおお!!!」
変態、という言葉に怒ったのか、なんだか声をあげながら襲いかかってくる変態、もとい不審者。
急な襲撃に少し驚いたが、世界が変わり肉体が変わっても身に付いた技は忘れていないようで、全盛期の俺となんの衰えもなく自然と最小の動きで身を動かし、俺が繰り出したカウンターの裏拳が不審者を宇宙服越しにぶっ飛ばした。
十分に手加減した一撃だが、俺は不審者を殴った拳に違和感を覚える。
(硬い......まるで鉄を殴ったような感覚だ。それに感覚的にあれは人間じゃない気がする。この世界では一切感じない、魔力をあいつから感じた、あいつは何者だ?)
一秒もかからずに思考した俺は、ゆらりと立ち上がる不審者を見ながら拳を構える。
「まあ、倒せば問題ないな。」
刹那、縮地を使い瞬く間に不審者との距離を詰めた俺は、先ほどとは違い気で強化した拳を不審者に叩きつける。
奥義、浸透剄。オリハルコンだろうとタングステンだろうと全てを貫通する防御無視の必殺技。いささか人間に使うには物騒過ぎるが、あれは人間じゃないと俺の直感がいっている気がするので、まあ大丈夫だと思う。
「さて、帰るか。」
その場で崩れ落ちてピクリともしない不審者を尻目に、特に俺はなんの不安も抱かずにその場を去った。
その場にあった監視カメラが、その光景をしっかりと捉えているのも知らずに。
イベントの時系列は適当にやります。
昔からやってるハイレベルプレイヤーさん達にはすいません。作者はお正月から始めた素人です。