バカ達と双子と学園生活   作:天星

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Answer

  ……優子side……

 

 尾行を断念した私達は、手近な本屋に向かっていた。

 そろそろ10時。丁度いい時間だ。

 

「あったあった。これだ」

「んじゃ、私が払っとくね」

「おう」

 目的の本を買い、本屋の外に出る。

「……そう言えば……」

「どうした?」

「結局あの二人はどこに向かってたのかしら?」

「ん~……方角的に如月ハイランドとかか?

 確証は無いが」

「……ちょっと待ちなさい。あそこにタクシーで!?」

「ああ」

「どんだけお金がかかるのよ!!!」

 タクシーなんて普段使わないから具体的な金額は見当もつかないけど、電車やバスの乗り継いでもかなりかかるのに!!

「道に迷うよりはマシだろう」

「迷うの!?」

「光だからな」

「…………」

 アレ? 何故か否定できない気がする。

「前回行った時はあいつらに色々と作業を押し付けたからなぁ……

 のんびりと楽しんでくれるといいが」

「押し付けてないで働きなさいよ」

「いや、準備中も当日もある意味むちゃくちゃ働いたぞ」

 それだけ作業量が多かったって事なのかしら……?

 

「ところで、お前とあいつのその後はどうなんだ?」

「え? 吉井くん? いや、どうって言われても……」

 特に遊ぶ機会とかも無かったからなぁ……

「僕は明久とは言ってないんだが……

 そうか、あいつの事が気になるのか」

「っっ!!!」

 騙されたぁぁぁっっ!!

「い、いやいや、さっきまで如月ハイランドの話をしてたんだから、吉井くんだと考えるのが自然のはずよ!!」

「お前のクラスメイト()(秀吉)が今から行くと思われる場所の話をしていたわけだが……」

「くぅぅっ……」

 ああもう、ああ言えばこう言う!!

 だったら……

「じゃあ、空凪くんは誰かとああいう場所に行ったりしないの!?」

「ん? 面白い切り返しをしてくるな」

 全然動揺してないわね……

 むしろ面白がってるように見える。

「では木下優子よ、逆に問おう。

 仮にだ、僕に誰か好きな人ができたとしようか」

「う、うん……?」

「その『好きな人』が、この僕についてこれると思うか?」

「……?」

「約一時間だけだが僕と過ごしてみてお前も感じただろう。

 僕のいつも以上のイカれっぷりを」

 自覚はあったのね……

「こんなのについてこれる人間が居ると思うか?

 せいぜいあのやり手のタクシードライバーくらいだろう」

「比較対象が何かおかしい気はするけど、言いたいことは分かったわ」

「そういう事だ。僕の感情がどうこう以前に、僕と付き合える奴はそうそう居ない。

 それが全てだ」

「なんか話を逸らされただけのような……」

「仮に僕が誰かと付き合える日が来るのであれば……

 僕に合わせられる程の精神力を持った奴か、僕を変える程の力を持ってる奴だけさ」

「……結局、あなたに好きな人は居るの?」

「質問が直球になったなオイ。

 まぁ、居ないんだが」

「居ないんかい!!」

 最初からそう言いなさいよ!!

「で、お前はどうなんだ?」

「どう……って?」

「明久……って名指しするとややこしい事になりそうだから誤魔化すが、お前には好きな人についてはどうなんだ?」

「ムギュッ」

「じっくりと考える事も重要な事ではあるが、世界は常に回っているんだ。

 気がついたらもう手遅れ……なんて事もあり得る」

「…………」

 どういうつもりだろう……?

 さっきまでの人をおちょくってるような雰囲気は感じないんだけど……

「……ま、最終的に決めるのはお前だ。

 だって、それはお前の物語なんだからな」

「……あなたは……何が言いたいの?」

 

 私がそう質問すると、空凪くんはフッと微笑んで……

 

「さぁな」

 

 そう、返事をした。

 

「……確かに、あなたと付き合う人は相当苦労するでしょうね」

「正直に思ったことだけを答えてるつもりなんだがなぁ……」

「そうなのかもしれないけどね」

 隠そうとしてるわけでもないから余計に質が悪い。

 これ以上訊いても何も得られる物は無さそうだ。

 

 

「それじゃ、また今度。じゃあな」

「うん、じゃあね」

 

 

  ……その日の夕方……

 

 

 家に帰って、私は今日買った(BL)本を読んでのんびりくつろいでいた。

 しかしあんな所で知り合いに遭遇するとは……

 幸いバレてなかったようだけど、もっと遠くの本屋に行くべきかもしれない。

 ……ホントにバレてなかったかな?

 ……空凪くんなら面白半分に言い触らす事は無い…………はず…………

 ……多分……

 

『ただいまなのじゃ』

「ああ、お帰りなさい」

 そんな事を考えていたら秀吉が帰ってきた。

「秀吉、頼まれてた本買っといたわよ」

「かたじけないのじゃ」

「ところで……如月ハイランドは楽しかった?」

「なっ、何故姉上がそれを!?」

 ホントに当たってたよ。空凪くんの予想。

「で、どうだったの?」

「う、うむ、楽しかったのじゃ」

「そう、なら良かったわ」

「何故姉上が……? なんか不気味なのじゃが……」

「この程度で不気味がってたらあの兄妹とまともに付き合えないと思うけど?」

「……それもそうじゃな」

 あの兄妹のぶっとび具合に比べたら居場所を当てられるくらい些細な事だと思う。

「ところで姉上よ、まるで実際に付き合ってみたかのような言い回しじゃが……」

「え~、あ、うん。今日ちょっとだけ剣くんと会ってたのよ。

 ちょっとの間一緒に行動してたんだけど……」

「なんと、無事じゃったか!?」

「いやまあ無事だけどさ」

 こんな質問が飛び出るなんて、この弟は光とどんな時間を過ごしたのかしら……?

「姉上と剣が一緒におったとは、一体何をしておったのじゃ?

 まさかデートかのう?」

「デート……ではないわね。アレは」

 振り回されていただけとと言うのが正しい表現だろう。

「じゃろうな。姉上が明久以外とデートするとは思えんからのぅ」

「ちょっと? どういう意味よ!」

「前に見た写真に写っていた姉上はとても楽しそうじゃったから……」

「ひ~で~よ~しぃぃぃっ!?」

「あ、姉上!? 肉体言語は勘弁なのじゃ!!!」

「写真ってどういう事!? 一体誰がそんなもの見せたのよ!?」

「合宿の時に剣が見せてくれたのじゃ」

 アイツ……いつかコロす。

「そう言えば明久も同じように慌てふためいておったのぅ。

 意外とお似合いかもしれんぞ」

「お似合いって言われても……」

「姉上は明久の事をどう思っておるのじゃ?」

「…………」

 どう思っているか……

 前に如月ハイランドで同じような事を訊かれたっけ。

 考えてみても、やっぱり分からない。

 

 私の、答えは…………


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