バカ達と双子と学園生活   作:天星

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03 妹と弟の出会い

※ 但し妹の方に自覚なし

 

 

 

  ……光side(再現)……

 

 私が文月学園に入学してから数日が経った。

 クラスの中で『いつものグループ』と言えるくらいの時間は経ったかな?

 とは言っても、私は一匹狼だったんだけどね。

 兄さんもそうに違いない! ……と思ってたら面白そうな人とつるんでるらしい。剣のくせにっ!!

 ……閑話休題。

 まあとにかく、そんな時期だったなぁ。あの出来事があったのは。

 

  …………

 

「えっと……こっちだったかな?」

 高橋先生にプリントを運ぶように頼まれたわけだけど……道に迷った。

 3-Aってこっちの方じゃなかったっけ?

 だれか知ってそうな人に訊いた方が良さそうかな。

 えっと……あ、木下さんだ。知ってるかな。

「木下さん!」

「む? 呼んだかの?」

 ……あれ?

 よく見たら何かおかしい。

 男子の制服着てるし……どういう事だろう?

「えっと……木下優子さん……だよね?」

「姉上の知り合いかのう?

 ワシは木下秀吉、優子はワシの姉上じゃ」

 えぇっと…………?

 …………ああ、なるほど。

「そういう事だったの。私は空凪光。よろしくね、秀吉くん」

「空凪……なるほどのう。

 よろしくお願いするのじゃ」

「あ、ところで3-A教室って場所分かる?」

「それならこっちじゃ」

 その後、『秀吉くん』の道案内のおかげで何とかプリントを届けられた。

 

 ……しかし意外だった。あの普通そうに見えた木下さんに……

 ……まさか男装癖があったなんて……

 

 ~~~~~~~~~~

 

「ちょっと待ちなさい!!」

「何か?」

「『何か?』じゃないわよ!! 私って光にそんな風に思われてたの!?」

「らしいな」

 な、何かあの頃の光の視線が妙に温かかったのはそういう事だったの!?

「『秀吉という別の人間を無理やり作り上げてそれに変装しているんだな』と解釈したらしい。

 まぁ、お前たちの瓜二つっぷりを考えれば無理も無いがな」

「それは……まぁ……うん…………?」

 似ている自覚はあるけどさぁ……

「ハッハッハッ、お客さん面白いですね~」

「笑い事じゃないでしょうが!!」

「「ハッハッハッハッ!!」」

 何なのこの初対面のはずの二人は!!

 実はドッキリか何かに嵌められてるんじゃないでしょうね!?

「ああ、それは無いから安心しろ。お前と会ったのは全くの偶然だ」

「さりげなく心を読むなっ!!」

「だって、いつもの優等生を演じてるお前と比べたら30倍くらい読みやすいぞ」

 つまりいつも30分の1くらいは心を読まれてるんだろうか……?

「そうなるな。休日なせいか学校で会う時と比べて心理的な防壁がかなり薄いようだ。

 まぁ安心しろ。普段はほとんど分からんレベルだ」

 それって安心できるのかなぁ……?

「しっかし、向こうのタクシーの運転手もやりますね。

 やや変則的なルートを通ってる見たいですよ」

「ちゃんと追えてますか?」

「フッ、この私を舐めてもらっちゃぁ困りますね! 楽勝ですよ!!」

「そうですか。安心しました」

 っていうか、それはもう尾行がバレてるんじゃぁ……?

「いや、光は倒錯的な所があるからな。追われている設定を勝手に作って楽しんでるんじゃないか?」

 ……この尾行中に、光の評価がガラリと変わりそうな気がする……

「謎の直感で感づいた可能性もあるが……完全に気付いてたら向こうから電話してくるはずだ。多分大丈夫だろう」

「謎の直感って……」

「まぁいい。では話の続きといこうか」

 

 ~~~~~~~~~~

 

「木下さん!」

「え、何?」

「木下さんって弟が居るんだね。そっくりな」

「ええ。それがどうかしたの?」

 弟の話を振られても動揺してない……なかなかやるわね。

 うん、面白そうだ。木下さんの男装がバレないように手伝ってあげよう。

 じゃあまずは、いくつか質問してみましょうか。本番でボロが出たら困るからね。

「秀吉くんって、どこか部活に入ってるの?」

「確か……演劇部に入ったって言ってたけど」

「なるほど……じゃ、木下さんは?」

「今のところは帰宅部ね」

 なるほど。

 弟を演じながら演劇部で演技するなんて……一度見てみたいわね。

「一体急にどうし……」

「じゃあ好きな食べ物は?」

「え?」

「好きな飲み物、好きな音楽、好きな女子のタイプは?」

「え、ちょ、あのっ!?」

 

  ……数十分後……

 

「はぁ、はぁ……た、確か……だいたいそんな感じだったはず……よ……」

「なるほど、結構作り込んであるのね」

「? 作り込んで?」

「いえ、何でもないわ」

 ここまで受け答えができるならそうそうボロは出ないかな。

 あとはまぁ、さりげなくフォローしてあげるか。

「突然どうしたのよ。まさか、あいつの事が好きになったとか?」

「まっさかぁ」

 百合の趣味は無いわ。

 そもそもそんな趣味を持ってる人はそうそう居ないでしょうし。

 ましてや学校の中に居る可能性なんてあり得ゴホンゴホン。

 ……おっかしいなぁ。風邪かな?

「そう……」

「どうかしたの?」

「いえ。ただ……あいつが誰かと付き合い始めたらあいつに告白してくる男子が減るのかぁ……って」

「それは……大変ね」

 木下さんは可愛い部類に入るから男子から告白されるのは分かるけど、男って設定の秀吉くんでも告白されるのね。

 男になり切ってるのに男から告白されたらそりゃ迷惑だろう。

 付き合う振りくらいなら私が……いや、ダメか。

 私は振られた可哀想な人になる気も無いし、振った悪女になる気も無い。

 あ、一生くっついたままってのは論外ね。

(しかも秀吉と間違えて私に告白してくる)(人も居るし、ホント迷惑なのよね!)

「木下さん何か言った?」

「いえ、何でもないわ」

 さて、次は発生するであろうトラブルや、それへの対処法を考えて……

 うん、なかなか面白くなってきたわね!!


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