さて、これから語る事はあくまで僕の主観が入っている事に注意してくれ。
光の心情とかも完全に推測になる。
可能な限り再現するが……意外な所に落とし穴があったりするかもしれん。一応注意しておいてくれ。
あ、あと、あいつらを見失わないように気をつけてくれよ? 僕も一応見てるが。
そうだなぁ……入学式の日まで遡るのが一番分かりやすいな。
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……光side(再現)……
……1年前 入学式……
……眠い……
学園長とか、そういう人の話ってどうしてこうも長いんだろう?
まぁ、この学園では学園長の話自体は短かったんだけど、教頭の話が長い……
ここで熱中症か何かを装ってぶっ倒れたら処罰されないかしら? あの教頭。
『以上で、教頭先生の話を終わります。一同、起立!』
ああ、やっと終わった……
確かこの後は……自分のクラスに移動だったわね。
さっき掲示板で確認したらAクラスだったから……この先……かな?(一年次のクラス分けはランダムなので、普通の学校のように掲示板に張り出される)
…………
この学校に入学する前、兄さんからは格差社会を体現したような学校だと聞かされていたけど……流石に一年次ではそこまでの違いは無さそうね。
そこら辺の私立高校と同じくらいの設備だと思う。
学費の安さから考えるとかなり豪華かもしれない。
適当な席に着いてのんびりしていたら教師らしき人が入ってきて教壇に上がった。
「皆さん初めまして。このクラスの担任の『高橋洋子』です。
これから1年間、よろしくお願いします」
なんとなく真面目そうな印象を受ける人だ。
熱血教師……というわけではないが、何か相談があれば割と誠実に対応してくれそうな感じかな。
あの腐れきょ……ゴホン、教頭先生みたいな人ばかりだったらどうしようかと半分くらい心配していたんで安心だ。
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「ちょっと空凪くん!? 腐れ教頭ってのは言い過ぎなんじゃない!?」
「少なくとも僕はそう思った。光もそう思ったに違いない!!」
「ホントに……? なんか現在の印象で補正がかかってない?」
「僕としては清涼祭を妨害された事なんかより、入学式やら始業式やら終業式で偉そうに長々と中身の無い話を語る方がよっぽど悪印象だ」
「そこまで!?」
「それよりほら、あの二人タクシーに乗るみたいだぞ?
……勘付かれた? いや、探知範囲からは外れているはずだ」
「え!? どうしよう?」
「まぁ落ち着け。
ヘイタクシー!」
近くに居たタクシーを呼ぶ。
休日なせいか結構居るからね。
「お客さんどちらまで?」
「あのタクシーを追ってください!」
「ちょ、空凪くん!?」
「ほぅ、10年はこの業界に居ましたが、そういう注文は初めてですよ」
「無理でしょうか?」
「とんでもない。一度やってみたかったんですよ。
お客さん、舌噛まないように注意して下さいね?」
「OKです。タクシー代も10万までならキャッシュで支払えるんで、そのつもりで」
「いやいや、こんな面白い注文して下さったお客さんからお代なんて受け取れないですよ」
「なかなか分かってますね。名刺頂けます? 今度機会があれば利用させて頂きます」
「また面白い注文頼みますよ?」
「都合良く居合わせてくれるのであれば」
「な、何コレ、私がおかしいの?」
そう思うんならきっとそうなんじゃないか?
さて、じゃあ続きを話すか。
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「それでは、まずは自己紹介から始めましょう。
廊下側からお願いします」
これまた入学後定番のイベントだ。
趣味は音楽鑑賞で、クラシックをよく聞きますとか言ったらウケるかな?
……やめとこう。多分通じないし、通じたら通じたで面倒だし。
……うん、無難な自己紹介でいいか。
とりあえずのんびりと自分の番を待つ。
…………………………
「……あの~」
「……ん? 何か?」
「あなたの番だけど」
「あ、ありがと」
のんびりしすぎたらしい。気づいたら私の番になっていた。
「え~、ゴホン、私は空凪光。一年間よろしくお願いします」
無難な自己紹介で適当に凌ぐ。
席について、声をかけてくれた隣の女子に話しかける。
「ありがとね。えっと……」
「木下優子よ。よろしくね」
「さっきも言ったけど、空凪光よ。よろしく」
……これが、私と優子の最初の出会いだった……
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「……ねぇ、こういう話って、普通は『私と秀吉の最初の出会いだった……』みたいな締めになるんじゃないの?」
「まぁ落ち着け。お前との出会いのイベントはあの二人を語る上で極めて重要な事だ。
これを外したら語れない」
「そうなの……?」
「ところで、あの場面がお前たちの初遭遇で合ってるか?」
「ええ。確かに初めて話したのはその時ね」
確か久保くんや代表も同じクラスだった気がする。
1年次はクラス分けはランダムだったらしいけど……実は操作されてたんだったりして……
いえ、姫路さんがCクラスだったはずだからやっぱり偶然ね。
ちなみに愛子は一年次の末に転入してきたのでその時は居なかった。
「お客さんなかなか面白そうな話してますね。
もしかして今追ってるのって、その空凪光さんと秀吉とかいう人ですか?」
「察しが良いですね。あ、ちょっと距離が詰まりすぎです。うちの妹は勘が鋭いんでもうちょい離して下さい」
「了解っ!」
さっき、この人10年業界に居たって言ってたけど、単にノリが良いだけのアホな気がしてきた……
「ん? どうした?」
「……いえ、何でもないわ」
……うん、気にしたら負けな気がしてきた。