「それで、どこの本屋に行くの?」
「ん~……城前書店にでも行くか。
と言っても10分もかからんだろうが」
「う~ん、そうねぇ……」
「せっかくだから買った本を読んで時間を潰そう」
『
『
『
特にアレだ。『
確か妹の革命に対して姉が革命返しをして、さらに妹が革命返し返しをして、それを姉が革命返し返し返しをして……5往復したあたりで止まってたんだよね~。
「……ん? お前は読まないのか?」
「え? わ、私は秀吉に頼まれた本しか買って……」
「もっと上手い嘘を言うんだな。
あの秀吉が姉をパシリに使うとは思えん。
お前が本を買うついでに頼んだんだろう」
「う、えっと……そ、そう! 目当ての本が売りきれてて!」
……本来なら、『そんな朝早く売り切れるわけが無いだろう!』と指摘する所だが、あの店だからなぁ……
「……そういう事なら一応は納得しておこう」
「納得してないように聞こえるけど?」
「気のせいだ」
まぁ、変装っぽい事をして開店直後の朝早い時間帯に書店に居るって事は……大体の見当は付くな。
……お、ここで他のプレイヤーが革命合戦に割り込んだか。流石は全国の舞台、レベルが高い。
……数分後……
「ふ~……素晴らしかったな」
まさか姉が卓に最後の一枚を叩きつけようとした所で女神の別人格が乱入してくるとはな。
誰も予想できなかった展開なんじゃないか? これ。
「……それ、面白いの?」
「読んでみるか?」
「うーん……前の話を知らなくても読める?」
「多分無理」
「そう、じゃあいいわ」
今までの話の流れをことごとくぶち壊していく面白さがあるからな~。
かなり無茶苦茶な話が多いけど、大富豪の描写はかなり丁寧だし、一応の筋は通ってる。
「……あれ?」
「? どうかしたか?」
「いや、あそこに居るあの二人なんだけど……」
「…………ん?」
……なんか、見覚えある気がするなぁ……あの二人。
『ほら秀吉くん、早く早く~』
『う、うむ……』
そう言えば、光もどっか出かけるとか言ってた気がするなぁ。
「私に漫画の買出しさせておいて自分はデート? 良い度胸ね……」
「…………よし木下、尾行するぞ」
「え?」
「一つ質問だ。秀吉は女性をエスコートできるタイプか?」
「う~ん…………
演劇の知識とかで何とかなるんじゃない?」
「演劇……嫌な予感がするな」
「??」
「例えば……そうだな……
騎士を演じてお姫様を
……歩いて5分くらいの所まで」
「それは流石に……
……なんか、意外とあり得るような気がしてきた」
あいつもFクラスだからなぁ……
「では、あいつのクラスメイトとして、光は秀吉をエスコートできると思うか?」
「…………微妙?」
「あいつ、学力や統率力の割には子供っぽい所あるからなぁ……
そういうわけで、兄と姉である僕達が影から応援してやるのは当然の務めだろう?」
「何故!?」
何故ってそりゃぁ……
「そういう名目にしておけば心置きなく観察してニヤニヤできるじゃないか!!」
「そっちかい!!」
「ふ~、分かってないなぁ。
これはある意味予行演習だぞ?
あいつらの失敗を見ておけばいざお前が明久とデートする時に同じ失敗はしないだろう?」
「確かにそうかもしれな……って、何で吉井くんと私がデートする事になってんのよ!!」
「ああ、スマンスマン。不特定な誰かとデートする時に同じ失敗はしないだろう?」
「一理あるとは思うけど……失敗する前提なの?」
「成功したなら丸パクすりゃいいだろ?」
「…………それもそうね……」
「じゃ、あいつらを応え……尾こ……ストーキングしますか」
「何故最後に一番危なそうな単語を……?」
「適当な言葉で言い繕っても仕方ない。そう思う事って無いか?」
「いや、意味が分からないから。
っていうか本は買わないの?」
「どうせしばらく暇なんだ。暇つぶしには丁度いいだろう」
「1時間じゃ終わらない気がするけど……」
「あ、そう言えば……」
「どした?」
「光があの弟を好きだってなった時かなり驚いたのよね。
何であんな愚弟が光に好かれたんだろうって」
「ふ~ん、本人に訊いてみりゃいいんじゃないの?」
「一応前に訊いてみたんだけど、はぐらかされちゃって。
お兄さんなら知ってるかなって」
「ん~、そうだなぁ……
光から聞いたちょっとしたエピソードなら語れるが、心の動きまでは想像しかできないぞ?」
「え、教えてくれるの?」
「そっちから訊いてきたんだろ?」
「何ていうか……もうちょっと渋るかなって」
「そんなわけ無いだろう」
こういう話をしておけば、面白い事になるかもしんないからな。
「じゃ、とりあえず追うぞ。
追いながら語っていくぞ」