試召戦争が終わったその日の午後は、補充期間に充てられた。
こうやって、夏休みが削れていくんだなぁ……
っと、そんな感傷(?)は置いておいてだ。
僕は今、屋上に居る。
時間と場所を指定したメモをさり気なく渡しておいたので、そろそろ来ると思うんだが……
ギィ、バタン
あ、来た。
「よう島田、時間ピッタリだな」
「え、空凪!? なんでアンタが……」
そんなに驚く事かねぇ……？
「えっと、何の用なの？」
「むしろ用事があるのはお前の方だと思うが」
「??」
「少なくとも僕はお前の本音を看破したが、あいつらとはまだ和解できてないんだろ？」
「ゔ、まあ、そうだけど……」
「せっかく戦争で頑張ったのに結局負けちまったからな」
「……うん」
「お前の頑張りを無駄にしてしまった詫び……と言う言い方もどうかとは思うが、呼んでおいた」
「………………え？」
ギィィ……
「どうしたの剣、こんな所に呼び出して……」
「滑車の実験をしようって類の話ならパスだぞ」
「…………今更写真を欲しがっても、もう遅い」
「……と、いうわけで機会は作ったからあとは頑張れ」
「（か、簡単に謝れないから困ってるんじゃない!!!)」
「あれ、島田さん？ どうしたの？」
「……ああ、なるほど、そういう事か」
「…………」
「(ほれ。当たって砕けろ)」
「(告白じゃないんだから……
……うぅぅ……仕方ないか……)」
覚悟を決めた(決めさせられた？)島田が３人に向かって口を開く。
「あ、あの、その……
が、合宿の時の……ご、ごめんなさい！」
……よく頑張ってる気はするが……しゃーない。手を貸してやるか。
「島田、それだといまいち伝わらんぞ。
具体的に何がどうごめんなさいなのか、ちゃんと伝えろ」
「えっと、えっと、うぅぅ……」
具体的な罪状を読み上げていったらキリがない……とまではいかないが、結構あるからなぁ……
「し、島田さん？ 合宿の時の事なら、僕達はもう気にしてないから、大丈夫……」
「それじゃダメ!! ウチは、ちゃんと謝らないといけないの!!」
頑張れ、島田。今の台詞はかなり格好いいぞ。
「すぅぅ……はぁぁぁ……
まず、吉井たちを犯人だと決めつけた事。
ろくに話も聞かないでお仕置きしようとした事。
Ｃクラスとの戦いでＣクラスに味方した事。
……本っっ当にごめんなさい!!!」
……よくやった。よく言いきってくれた。
これでこれからも、安心して味方で居られるよ。
「だそうだが、お前ら、許してやるべきだと思うか？」
「さっきこっちのバカが言ったように、そこまで気にしちゃいなかった。
そして正面からはっきりと謝罪されたんだ。許さない方がおかしい」
「…………結果論だが、被害もほぼ無かったからな」
「島田さんが本当は悪い人じゃないっていうのは分かってるから、大丈夫だよ」
ははっ、良かったな島田。お前思ったより信頼されてるみたいだぞ。
「うぅ、うぅぅ、うわぁぁぁぁぁんん!!」
ああ、泣き出しちゃったよ。
どっかで見たな、この光景。
ああ、姫路が謝った時もこんな感じだった気がするなぁ……
とりあえず、今日の仕事は終わりだな。皆が島田に気を取られてるうちに帰るか……
……しっかし明久の回りにフラグが立ちすぎてないか？
できるだけ、誰も悲しまないように物語がすすんでくれると良いんだが……
その運命は、神のみぞ知る……と言ったところか。
……side out……
……島田side……
勇気を出して、ちゃんと謝れた。
しっかりと話す事って、やっぱり大事なんだなぁ……
そう言えば、このバカと最初に会った時も、言葉の事で悩んでたっけ。
あの時はそもそも言語が違ったわけだけど……同じ言語であっても話さないと伝わらない。
勇気をもって、ちゃんと、話したい。
あ、そうだ。この機会に、もうちょっとだけ勇気を出してみようかな。
「……ねぇ吉井」
「どうしたの？」
「今度から、あんたの事、『アキ』って呼んでいい？」
「え、いいけど……どうしたの突然」
「じゃあアキ、今度からウチの事を『美波』って呼んでよ」
「？？ うん……」
「ありがとう。アキ……」
言ってみれば、あっさりとしてた。
きっといつの日か、この想いを伝える事ができるのかな。
いえ、きっと、きっと伝えてみせるわ。
「……ところで、俺たちはすっかり忘れられてるな」
「…………(コクリ)」
「…………帰るか」
「…………(コクリ)」