バカ達と双子と学園生活   作:天星

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08 勝利の条件

  ……Dクラス戦翌日……

 

  ……早朝……

 

「今日も一番乗りだな」

 やたら早く来るのは習慣であって、昨日今日に限った事ではない。

 まぁ、今日はやる事があるが。

 とりあえず、職員室に……居た居た。

「布施先生、おはようございます」

「ああ空凪君、おはよう」

「補充試験を受けさせて頂けないでしょうか?」

「良いですよ。場所はどうしますか?」

「Fクラス教室で良いでしょう。

 ……あの教室で先生に異存が無ければ……ですが」

「……行きましょうか」

 

 戦争直後は補充期間が必ず用意される。

 その期間は戦争の長さによってまちまちだ。

 今回は数時間で終わったので、翌日の午前中、つまり今日の午前中が補充期間になり、その間試召戦争は出来ないし、他クラスから仕掛けられても断る事が出来る。

 まぁ、自由時間に先生に頼んで補充試験を受ける事も出来るし、他のクラスの迷惑にならない範囲で試験時間を設けてもらう事も可能だ。

 ……潰した授業数の分だけ後で補習が待っているが……

 とりあえず早朝の自由時間を使って試験を受ける。

 辺りに人が居ない、集中するには最適の環境だ。

 

「では、始めて下さい」

 

  ……30分後……

 

「……以上です」

「それでは採点します」

 布施先生の採点速度は……まぁ普通だ。

 流石に高橋先生とかと比較してしまうと悲しい事になるが……アレが規格外過ぎるだけだ。

 まぁでも、今回はずっと見ていたので……

「終わりました。どうぞ」

 かなり早く終わる。

「ありがとうございます」

 点数は400点。

 理想的な環境のおかげで十分な余裕をもってその点数に達する事が出来る。

「あ、そうそう。他の連中も消耗しているはずなので、宜しければ準備をしておいて頂けないでしょうか?」

「そうですね。1限目までには準備をしておきます」

 さて、とりあえず雄二が来るまで眠って……

 

ガラガラガラ

 

「おはよう剣……と布施先生」

「おはよう。坂本君」

「おはよ~。丁度良いタイミングで来たな」

 一度寝ると起きるのダルくなるからね~。

 さてと……

「雄二は補充試験は要らないよな」

「ああ。代表だから前線には出なかった」

「じゃあちょっと訊きたい事があるんだ。

 そうだな……屋上で良いか」

「人に聞かれるとマズい話か?」

「まぁな」

「んじゃ、行くか」

 

  ……屋上……

 

「で、話って?」

「単刀直入に訊くぞ。Aクラスにどうやって勝つつもりだ?」

「……確かに人に聞かれる訳にはいかんな。

 しかし突然どうした? 不安か?」

「そりゃそうだ。

 僕なりにいくつか考えてみたが……どこを通っても、どっかで塞がれそうな気がする」

「仕方ない。教えてやろう。

 代表同士の一騎打ちに持ち込む」

「あの学年主席とか?

 勝率はかなり低いと容易に分かるが?」

 多めに見積もって2……いや、1割ってとこか?

「あくまで召喚獣で戦った場合だろ?

 対戦条件が指定出来れば勝てる」

「具体的には?」

「日本史のテストの点数対決。

 但し範囲は小学生レベルで、100点の上限有りだ!」

 試召戦争の目的はあくまで『学習意欲の向上』にある為、召喚獣バトルではなく純粋な試験の点数対決にする事も可能だ。(両者の合意があれば……だが)

 だけどねぇ……

「…………霧島が100点プラマイ3点程度、

 お前が50~60って所か。

 勝率が更に下がったな」

 0に。

「オイコラちょっと待て、何だその点数予測は!!

 何で俺の点数がそんな低いんだよ!!

 っていうか翔子のプラマイ3点のプラスって何だよ!!」

 あまりにも深い回答を弾き出したり、先生の採点ミスを指摘すればプラス3点くらい……どうだろう?

「少なくとも満点が取れるとは到底思えん。戦術を練り直すべきだろう。

 反論があるなら……そのテストで100点を取ってからにしろ」

「ああやってやるよ!!」

 

 

  ……数十分後……

 

 

 上限有りとはいえ、流石に小学生レベルの試験で補充試験は受けさせてもらえなかった。

 なので、模擬試召戦争という形でゴリ押しした。

 んで、その結果……

 

「で、言い訳を聞こうか?」

「お前の言う通りだったよチクショウ!!」

 

科目:日本史(上限100点)

 

Fクラス 空凪剣  100点

 

Fクラス 坂本雄二 53点

 

「っていうか何でお前は100点取れるんだよ!!」

「こんなもん集中してなくても満点取れる」

 霧島も同じだろうな。

「まぁ、お前も今から勉強すれば満点取れるようにはなるだろうが……

 はっきり言おう。つまらない」

「つまらない……だと?」

「仮にだ。霧島が99点、お前が100点だったとしようか?

 いくら実戦主義のこの学校って言っても流石に酷すぎる。

 そんな偶然に頼った、少なくともそういう風に見える作戦で勝って嬉しいか?

 それに、お前の目的は『この世は学力が全てでは無い事を証明する』事なんじゃないのか?

 勝ってどうする。学力(テストの点)で」

「グッ……」

「日本史の細部を無駄に暗記し過ぎていて、その細かすぎる知識で強引な追加点を貰う……くらいなら何も言わない。

 点数上限無しにして試験時間が10時間で結局体力勝負……とかも問題ない。

 無駄知識とか、アホ体力とかで学力のアドバンテージを上回れるんだからな」

 ちなみに姫路の学力はどうなんだという事に関しては問題ない。

 その学力は結局は評価されず、事実としてFクラスに来ているわけだからな。

 僕がしたいのは『評価されなかった才能の証明』だから。

「………………」

「……まぁ、お前なりに勝算があっての作戦だったんだとは思うが……

 代案が欲しい。お前なら、出来るだろ?」

「……ったく、簡単に言ってくれるぜ……

 昼休みだ。昼休みまでに捻り出してやる!!」

「頼んだぜ。代表」

 

 

  ………………

 

 

「おっはよ~」

「遅いぞこのウジ虫野郎」

「剣、それは古い。

 今のコイツはゾウリムシ野郎だ」

「チッ、そうだった」

「ちょっと!! 何で僕は来ただけでそんな罵倒されなくちゃならないの!?」

「遅刻したからに決まってるだろうが!!」

 このゾウリムシ(明久)には早めに来て補充試験を受けようという発想は無かったんだろうか?

 最後の方は結構乱戦状態だったみたいだから化学以外もそこそこ消耗してそうなんだが……

「まあいい。僕は寝るから適当に起こしてくれ」

「ず、ズルい!! 一人だけ!?」

「そういう台詞はコイツのように早朝来て補充試験を済ませてから言うんだな」

「そういう事だ。それじゃ、お休m『空凪く~ん♪』

 ……雄二、今幻聴が聞こえた気がしたんだけど、気のせいだと言ってくれ」

「もし、お前の聞いた幻聴とやらが船越先生の声だったなら……

 それは幻聴ではなく本物だ」

「……雄二、気が合うな。全く同じ幻聴を聞くなんて」

「剣……現実逃避するなよ」

 ええ~? 仕方ない。

「で、一体全体何の用なんですかねェ、船越先生?」

「今日の補充時間の監督になったから」

 ……なるほど。確かに補充時間……と言うより試験には監督が必要だ。

 みな様々な科目の試験を受けるので、学年主任の高橋先生か、補習担当の鉄人先生が来てくれるのが理想的だが……

 流石に毎回呼び出していたら他のクラスの迷惑になるので適当(ヒマ)な先生が来る事になる。

 今回はそれが船越先生だった……と。

「そうですか。じゃ、お休みなさい」

「待って!! 私と付き合って!!」

「昨日はっきりとお断りしたはずですが?」

「一回断られたくらいで、私は諦めたりしない!!」

 時と場合によっては感動的な台詞だが、時と場合を間違えると迷惑極まりない台詞だなぁ……

「……先生? そんなに僕を怒らせたいんですか……?

 フフ、フフフフフフフ……」

「え? そ、空凪君……?」

「……貴女は身を以って知る事になるでしょう。

 鉄神滅剣(ダーインスレイヴ)の真の怒りを!!」

 

 ……その後の記憶は……無い。


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