バカ達と双子と学園生活   作:天星

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07 引継

  ……御空side……

 

 空凪くんは強い。

 だけど、流石にこの点数差の前では無理だったみたいね。

 

 [フィールド:数学]

Bクラス 御空 零 289点

 

Fクラス 空凪 剣 39点

 

 でも、まだ油断はできない。

 いざとなったら特攻を仕掛けてくるだろう。

 事実、Aクラスではそれで引き分けをもぎ取ったらしいし。

 現時点では、空凪くんと心中する気は無い。

 

「「………………」」

 

 すぐに増援も来るだろうし、急いで仕留めたいんだけど……焦ったら失敗する。

 風ダメージを待つと80秒かかる。そんなに待ってもいられない。

 

「……どうしたの? 来ないの?」

「流石にこれだけの点数差を相手するのは無理だ。

 潔く戦略的撤退をさせてもらおう」

「させると思う?」

「させたくないのであれば……お前から来いよ」

「じゃ、遠慮なく!!

 ……何て言うと思った? これ以降は不用意に近づいたりしないわ」

「そうか。じゃあ遠慮なく撤退させてもらおう。

 3、2、1……0」

 

 カウントが0になったその時、奥の方にあるFクラスの扉が勢いよく開くのが見えた。

 ……まぁ、仕方ないかなぁ……

 

 

  ……御空side out……

 

  ……剣side……

 

 

 現在の点数は……

 

Fクラス 空凪 剣 19点

 

Bクラス 御空 零 269点

 

 これだけ削っときゃ十分だよな?

「そうだよな? 島田」

「ま、間に合った……?」

 

 増援部隊の先頭に居たのは島田。

 まぁ、数学と言ったらこのヒトだよね~。

 

「ああ。良かったな。汚名返上のチャンスだ。

 存分に暴れてくれ」

「へ?」

「ん? 違ったか?

 合宿が終わった後に盗撮の真犯人が清水だって噂が流れて、

 本人を問い詰めたらあっさり白状して、

 僕達に謝らなければならない事に気付いて、

 でもいざ謝ろうとすると怖くなって、とりあえず遠くからタイミングを伺ってたけどやっぱり上手く話せなくて、

 試召戦争で手柄を立てればそれをきっかけに話せるかもしれないと思ったのだと予想したのだが……

 どうだ? 違ったか?」

「え? ええ、え、え!?」

「……まあ何でもいいや。頑張れ」

「え、うん」

 

 う~ん、島田はやはり日本語が苦手だな……理解が追いついてないな。

 ……え? 理解が追いつかないのは別の理由? 気のせいだ。

 とりあえず、島田と交代で召喚フィールドから出る。話してる間に風ダメージで戦死なんてしたら目も当てられないからなぁ……

 

「あ、島田だけじゃなくて全員に言っておく。

 御空の腕輪の能力は『風』だ。気をつけろ。

 あと、御空一人だけが召喚しているときは最大でも3人程度で相手しろ。範囲攻撃にやられるぞ」

「……分かった」

「じゃあな」

 

 ああ、疲れたな……

 

  …………

 

「ただいま~」

「お帰り。ご苦労だった」

 拠点にしている空き教室に帰還し、とりあえず椅子に腰掛け……

 

ガタッ、ガタンッ

 

「っ!」

「お、おい! 大丈夫か!?」

 無様だなぁ……椅子に座る動作すらできずに床に倒れるとは……

「……ちょっと……無茶……し過ぎた……かな……?」

「……すまん」

「謝る……事は……無い……さ…………

 こき使うのが……代表の仕事……だ。

 ただ……少しだけ……休むぞ……」

「ああ。ゆっくりと休んでくれ」

 

 そうして、僕の意識は闇へと落ちた……

 

 

  ……side out……

 

  ……雄二side……

 

 

 働かせ過ぎたか……

 こいつは指示した事は死んでも果たそうとするからな。

 いや、実際に死ぬまで働き続けるかは試してみなきゃ分からんが、試すつもりは全く無い。

 今はとりあえず……

「おい、誰か手が空いてる奴、こいつを保健室に……」

 いや、無理か。保健室は1階。窓から放り投げでもしない限り敵とぶつかる。

(注、ここは3階です)

 協定を結んで見逃してもらうという手もあるが……少々面倒だ。

 それに、剣が行動不能だとバレると戦略的に良くない影響を及ぼすだろう。

「……手が空いてる奴はカーテンか何かでクッションを作ってくれ。

 こいつを寝かせてやってくれ」

「了解っ!」

 

 ……次に戦争する時は、こいつに無理をさせないような作戦を立てるか……

 

 

  ……雄二side out……

 

  ……御空side……

 

 

試獣召喚(サモン)!!」

 

 空凪くんから引き継いだ島田さんが召喚獣を召喚する。

 

 [フィールド:数学]

Bクラス 御空 零 265点

 

Fクラス 島田美波 232点

 

 ……ヤバい。意外と競ってる。

 点数だけならこちらの方が上だけど、相手はFクラス。

 (補習)の恐怖を背に上位クラスと2回も戦い抜いた熟練者が揃っているクラスだ。(Aクラスは代表者のみの戦いだったらしいので除外。Cクラス戦も除外)

 見かけの点数以上の戦力だと見て問題ない。

 一騎打ちだと……良くて五分五分といった所かな?

 勝率5割で挑むのはちょっとねぇ……

「じゃ、全員突撃! さんざん回り道したけど、最初の予定通り行動して!!」

 だったら一騎打ちにこだわる必要なんて無い。

 そもそも、最初は集団戦の予定だったわけだし。

 私も適当に戦ってから適当に撤退しておけば大丈夫かな。


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