バカ達と双子と学園生活   作:天星

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05 それぞれの戦場

  ……雄二side……

 

「伝令です!!

 先鋒部隊による相手の被害は、戦死、9名!

 現在交戦中の人数は、8名です!!」

「8人? 8人掛かりで剣を囲んでるのか?」

「いえ、直接交戦しているのは2人で、残りは横一列に並んで廊下を塞いでいます」

「……なるほど。ご苦労だった。別命があるまで待機しててくれ」

「了解!」

 厄介な陣形だな。

 例えば全員が召喚獣を出してるなら、姫路を急いで向かわせて熱線で一掃する事も可能だ。

 白の腕輪は姫路が持ち続けてるらしいので(アイツには不要だからなぁ……)科目に関わらず対応できる。

 ちなみに姫路は柔軟な対応ができるように教室に待機中だ。

 『姿を見せない』事が相手へのプレッシャーにもなるからな。

 

 だが、とりあえずの目的は達成する事が出来た。開幕早々に17人無力化できりゃあ十分だろう。

 剣も不死身ではないので、適当なタイミングで交代する必要はあるだろうがな。

 

 さて、もう片方の部隊は今どうなってるかな?

 

 

  ……雄二side out……

 

  ……明久side……

 

 何だか知らないけど、いつの間にか先鋒部隊(その2)の部隊長に任命された。

 ま、まさか、体のいい捨て駒にされたわけじゃないよね……?

 まあそれは置いておいて……

 僕達の部隊はBクラスと交戦中だ。

 戦況は、かなり良い。何故なら……

 

「みんな! 階段の段差を上手く使って!! 敵を同じ高さに上がらせないで!!」

『ぐっ、ひ、卑怯だぞ!!』

『これも戦術だ! 文句あっか!!』

 

 そう、階段の上で待ち構えているからだ。

 古来より、戦争では上から攻撃した方が有利だと言われている。

 弓矢とかの飛び道具があればもっと良いけど、無くても十分な効果が期待できる。

 って、これは雄二の受け売りなんだけどね。

 だけど、実際に戦ってみるとその凄さが良く分かる。

 召喚獣のサイズだと、階段の段差は身長と同じくらい。

 その段差、もとい、壁を敵の攻撃を掻い潜りながら登らなきゃならない。

 うん、ものすごく戦いやすい。

 流石に無傷とは行かないけど……相手に与えるダメージの方が圧倒的に多い。

「みんな、深追いはしないで、確実に有利な環境で戦って!!」

 

 『『『おう!!』』』

 

 

  ……明久side out……

 

  ……根本side……

 

 

「伝令です!

 敵は階段を利用して守りを固めています!!」

「階段? っ、その手があったか……」

「なるほど、確かに有効な戦術ね」

 恐ろしい手だ。よくもまぁ思いつくな。

「敵の人数は? 後方待機含めて」

「10人程度です」

 Fクラスは最低人数で凌ぎきるという目標でも立てているんだろうか?

 戦争が始まって相手クラスの生徒が11人しか目撃されてないってかなり異常な話なんじゃないか?

「どうする? このままじゃかなりヤバそうだけど?」

 地の利を取られているとなるとかなり厳しい。

 点数では完全に勝っているはずだが、事実として苦戦している。

 階段からの侵攻は無理か?

「仕方ない、階段の部隊は下げる。

 とりあえず、この階のこの教室に近い方の階段の上まで下げる。

 相手が追撃してきたら同じ事をやりかえしてやれ」

「了解です。すぐに伝えてきます!」

 伝令が教室を出たのを見届けてから溜め息を吐く。

「迂回ルートは諦めたの?」

「ああ。出来ればもう少し温存しておきたかったが……

 正面のルートを突破する。

 御空、頼めるか?」

「ふふっ、仰せのままに」

 

 

  ……根本side out……

 

  ……剣side……

 

 

 これで、止めっ!!

『危ないっ! 試獣召喚(サモン)!!』

 割り込んできた別の召喚獣に攻撃が弾かれる。

 防御に徹しているからこそしっかりした対応が出来ているという分もあるだろうが、単純な頭数の差も結構働いてるな。

『済まん、助かった!』

『それより、早いとこ補充してこい』

『ああ。頼んだぜ!』

 あと一歩の所まで削った生徒が撤退してしまう。

 僕の一番の目的はとりあえずは足止めなので無理に倒す必要は無いんだが……倒せるに越した事は無い。

 そしてその目的はとりあえずは達成できてるわけだが……やられっぱなしで終わる連中ではないだろう。

 ここを突破する方法なんていくらでもあるからな。割に合わないってだけの話であって。

 例えば……そうだな……

 

「全軍道を開けて!! 私が出る!!」

 

 ……高得点者が出てくる……とか。

 

「久しぶりだな御空。合宿所の屋上以来か」

「ええ。そうね。

 宣戦布告した時は居なかったからね」

「ああ、そういえば聞きたい事があったんだ。

 なんでまた戦争なんて起こしたんだ?」

「そうねぇ……

 私に勝てたら教えてあげる……ってのはどう?」

「……僕も何か賭けた方が良いのか?」

「いいえ。戦争に付き合ってもらってるだけで十分よ」

「そうか……じゃ、始めようか」

「ええ。試獣召喚(サモン)!!」


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