我々Ｆクラスが運用する部隊は大まかに分けて四つ。
真っ先に敵とぶつかる先鋒部隊。
その先鋒部隊が危なくなったら交代する為の中堅部隊。
代表への奇襲を警戒する近衛部隊
そして余った……もとい、厳選された雑よ……遊撃隊。
後衛部隊とかを作るクラスもありそうだが、Ｆクラスではその辺は遊撃隊が兼任する。
戦争が進むと部隊を解体して再編成したりする事はあるが、基本的にはこんな感じだ。
さて、この中で最も戦力を注ぐべき部隊はどこだろうか？
理想論を言ってしまえばどこも大事なのだが、Ｆクラスにそんな余裕は無い。
あくまで僕の意見だが、先鋒部隊はかなり重要だ。ケース・バイ・ケースではあるが。
ここに手を抜いたら蹂躙されて無駄死にだ。そんな事なら最初から居ない方がマシだ。
かと言って、あまりに大人数を投入するとまともな指揮が出せない乱戦状態になる。そうなると個々の力量がものを言う戦いになってしまう為Ｆクラスは不利になる。
更に、仮に全戦力を送ってしまうと代表への奇襲に対してものすごく弱くなってしまう。
代表までもが前線に立つと今度は普通に危ない。
つまり、先鋒部隊に限った話では無いかもしれないが、『まとまった指揮が出せる範囲の人数で最大限の人数を投入する』が妥当な所だろう。
そして、そのセオリーは相手にとっても同じ事だ。結局の所『そこそこの大人数でのぶつかり合い』を想定して先鋒部隊は編成される。
長々と語ってみたが……その上で、相手の意表を突くにはどうすれば良いだろうか？
……なるほど、これなら意表は突けるだろう。だけどさ雄二、ちょいと極端過ぎやしないかい？
いやまぁ確かに有効なんだけどさ。
これは果たして『部隊』と言えるのだろうか……？
……side out……
……御空side……
とりあえず正攻法で攻めてるわけだけど……
「このままあのヒト達がやられてくれるわけが無いよねぇ」
「だろうなぁ……」
私たちは指揮者として、後方で待つしか無い……か。
「伝令入ります!!」
「どうしたの？」
「敵の先鋒……部隊ですが……」
「？」
何か歯切れが悪いような？
「敵の、先鋒部隊、１名のみ……です」
「…………」
部隊……ではないような……
「なっ!? 誰だそいつは!!
いや、あいつ以外あり得ないか」
「空凪君……でしょうねぇ」
数の暴力に抗えるレベルの操作技術を会得しているのは観察処分者くらい。
吉井君だと流石に苦しいだろうから、間違いなく空凪君だろう。
「……さて、どうする？ 代表」
「……撃破は無理か？」
「かなり難しそうでした」
こっちの編成はそこそこの規模の部隊を殲滅するように組んである。
一人だけだと的が小さすぎて正常に機能しなくなる。
撃破不可能……ではないかもしれないけど、多大な犠牲と時間を要するだろう。
「横をすり抜ける事は？」
「何度か試みましたが、通ろうとする度に的確に勝負宣言をされます」
試召戦争のルールとして、勝負を挑まれたら受けなければならないという基本的なルールがある。
そして１対１でなければならないというルールも無い。
人数に開きがあればどさくさに紛れて突破できるもんなんだけど……相手が相手だからなぁ……
「一応ほんのわずかな人数だけは突破できたんですが……戻って来ません」
部隊から一人離れた生徒なんて絶好のカモだろう。むしろ狙って通したんじゃないかな？
「……なら仕方ない。最低限の足止めを置いて、別の場所から突破する」
「そうね。最低限の足止めってどれくらいにする？」
「そうだな……
防御に徹してればそこまでの人数は要らないだろう。
一度に交戦する人数を２人まで減らして、念のため４組の編成にする。
交戦してない６人はＦクラスの急襲を警戒して廊下を物理的に塞いでおいてくれ」
「了解です、伝えてきます！」
「……こんな感じで大丈夫か？」
「上出来じゃない？ 流石は代表ってとこね」
……御空side out……
……剣side……
う～ん、やっぱり対策されるよな。
さっきまで死に物狂いで攻撃してきてたが、防御主体の戦闘に切り替えられた。
腕輪を使えば一応殲滅できるが……２人だけ倒してもなぁ……
すり抜けを試みる連中が出る度に叫んでて喉が疲れてきてたから丁度良かったと言えば丁度良かったんだがな。
しかし思ったより残さなかったな。たった８人か。くそっ。
手を抜いてくるようであれば後方待機してる部隊を呼んで突破する予定だったが、廊下は物理的に塞がれてる。
突破する前に増援が来るだろう。
今頃一つ下の２階ではドンパチやってんのかなぁ……？