……翌日 朝……
電池を取り替えた目覚まし時計で無事に起床し、いつも通りの時間に学校に到着する。
ちなみに尾行はいなかったようだ。単純に気付かなかった可能性もあるが……
いつも通りに学校に着くと、いつもとは違う教室に入る。
具体的には同じ階にある空き教室だ。
C教室から見てB教室は目と鼻の先。こんな状態で開戦したら総力戦になり、地力の差で一瞬で潰される。
籠城すれば結構保つと思うが、閉じ込められる、行動を封じられるという事はゆるやかにではあるが確実に敗北に向かう事と同義である。
そういう訳で、雄二が事前に申請を出してB教室と離れた空き教室の使用許可を貰った。
今日はここを拠点に戦争する事になる。
そしてこれは容易に相手に読まれる事だ。何かの仕掛けが施されている可能性は0ではないな。
例えば盗聴器とか。
試召戦争中は試験中と同じ扱いになる為、通信機器の類は全て使用禁止となる。
もし使用したら最悪の場合は退学も有り得るので、警戒する必要は無いかもしれないが……それはあくまで『戦争中』に限られる。
試験直前の詰め込みが認められるように、開戦直前の通信は全く問題ない。
こういうのは康太の専門だが……この時間にやっておいて損は無いだろう。
コンセントの裏とかの定番な所を調べてみるが、そうそう簡単に見つかるわけが……あったよ。
僕達に対して仕掛けられたものなのかは不明だし、康太の物である可能性もあるわけだが。
とりあえず電源を切って教卓の上に置いておこう。
他には……そうだな……扇風機が壊れてるとか。
試しに操作してみたが、そんなセコい手を使うとは……思えなかったんだけどなぁ……
完全に故障してるぞこれ。
普段は誰も使わない教室だから自然に故障したのに誰も気付かなかっただけかもしれんけど。
とりあえず、職員室から工具を借りてきて適当にいじってみるか。
………………
とりあえず操作盤を開いてみたが、イマイチよく分からなかったので、用務員のおじさんに頼んで直してもらった。
「ほれ、これで……動いたな」
「ありがとうございました。
ところで、故障の原因は何だったのでしょうか?」
「ん~、配線の一部がちぎれてた。それが原因だな」
「劣化でしょうか? それとも人為的な?」
「残念だが分からん。どっちとも取れるような破損状況だったんでな」
「……そうですか。本当にありがとうございました」
「おう。戦争頑張れよ」
……人為的なものか、ただの劣化かは分からんが……他にも不備があるかもしれん。時間が許す限り探してみよう。
……数分後……
「おはよう剣」
「ああ、おはよう雄二」
教室の点検をしていたら雄二も登校してきた。
「何やってるんだ?」
「教室に細工されてる可能性を考えて点検してた」
「なるほど。で、どうだった?」
「盗聴器がいくつか。あと、扇風機が故障していた。
戦争への影響を狙ったものかは不明。元から仕掛けてあったのかもしれないし、自然な故障かもしれないし」
「なるほどな」
分かりやすい所は大体探したと思うから、後は康太に任せるか……
「じゃあ、僕は寝るから、最後のミーティングの前に起こしてくれ」
「おう、お疲れ」
……更に数十分後……
「おい、起きろ」
「んぁ? 時間か。
康太は?」
「…………何だ?」
「盗聴器、お前の以外で見つかったか?」
「…………清水の物が少々混ざっていた。後は異常無し」
「そうか」
平常通り……で良いのか?
「…………ただ、探知機は持ってきていないから、見落としている可能性はある」
「それを言ったらキリがない。怪しい所だけで十分だよ。助かった」
「…………(コクリ)」
…………
「それでは最終ミーティングを始める」
雄二が教卓の前に立ち、語りかける。
「まずは全員
『へっ、水臭え事言うなよ』
『俺たちは代表の為なら火の中水の中だぜ!!』
『アンタは胸を張って偉そうに指示してくれりゃいいのさ!』
……これが純粋な信頼から発せられた言葉だったら感動的なんだけどなぁ……
「俺たちがここで勝つ事ができれば、俺たちはBクラスの教室を得る事が可能だ。
そして、その一つ上は、Aクラスだ!!」
別に1ランク下の教室を得てもAクラス戦で有利になるわけではないんだが……盛り上げる為の台詞なので問題は無い。
「俺たちはこの戦い、勝つ。そして、それを足がかりに今度こそAクラスに完全勝利する!!
やるぞ、お前ら!!!」
『『『『『『おおおおぉぉーーー!!!』』』』』』
「では具体的な編成を発表する。
まずは……」
そして、時間は過ぎ……
午前9時、試召戦争が始まった。
※ 原作では空き教室を借りる事は不可能という設定ですが、それを遵守するとかなり面倒な事になるので本作では可としています。
※ アニメ版ではDクラス戦の最中に通信機らしきものを使用していますが、原作では携帯電話はカンニングに当たる為に使用禁止となっているので、通信機全般は不可としています。