バカ達と双子と学園生活   作:天星

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01 動機

「……と、いうわけだ」

「Bクラスからの戦争ねぇ……

 開戦時刻は?」

「明日の午前9時からだそうだ。

 勿論、日本の標準時間でな」

 わざわざ言われたんだろうか? 根に持たれてるなぁ……

「さて剣、お前はこの戦争をどう見る?」

「ん~……いくつか気になる事はあるが……

 まず、Bクラスには驚くほどメリットが無いな」

「ああ。その点に関しては俺も思った」

 試召戦争の主なメリットは倒したクラスと教室の設備を入れ替えられる事だが、上位クラスが勝った場合はわざわざそんな真似はしない。

 そして負けた場合は……うん。

 更に付け加えると、戦争を行うと授業が潰れるので潰した分だけ夏休み等の時間を利用しての補習が待っている。

 それを見越して予備日が多少は設けられているが……学校に行く日が増える事に変わりはない。

「となると、戦争を行って得られるものではなく、戦争行為そのものに意味があるとか?」

「例えば?」

「単純に練度を上げるためとか?

 他の可能性は……かなり低いとは思うけど、僕達の教室をランクダウンさせて困らせるとか」

「それこそメリットが無いな」

 今までFクラスの惨状(清涼祭の後でかなり改善されたが)で過ごしてきた連中にとって、Cクラスの設備もDクラスの設備も大して変わらんからな。

 連続で攻められたらマズいかもしれんけど、それだけの為にそんな事をするのはリスクが高すぎる。クラスの同意が得られるとはとても思えない。

 しかも、学期が変わるとランクダウンはリセットされる。現在が6月下旬で、夏休みの開始が7月中旬。意味が無い。

 (なお、『下位のクラスと設備交換した場合』はリセットされない)

 

 

「そしてもう一つ気になるのが……

 ……開戦まで一日空けてる事だな」

「そうだな。普通はもうちょい早く始めるよな」

 小山の『30分後』は流石に早すぎだが、大抵の場合は前に僕達がやっていたように『午後から』というケースが多い。

 理由は色々とあるが……仕掛ける上でのマナーと言うか何と言うか……

 単純に午前中に補充しておいてから午後に戦争というパターンもある。

「急いで始めた方が相手に準備期間を与えずに進められて有利になる。

 そのアドバンテージをわざわざ捨てたという事は……」

「向こうはそもそも勝つ気が無い。または、向こうが用意した策は1日開ける必要がある……とかか?」

「そうなるよな」

 同意しておいてこう思うのもどうかと思うが、一体どんな策だそれは……?

「まあいいか。時間ができた事を喜んでおこう。

 作戦会議は始めないのか?」

「明久が来た始め……

 

ガラガラガラ

 

 噂をすれば。

「おっはよ~! 今日は早めに到着……

「遅いぞこのゾウリムシ野郎」

「ヒドッ!! 今日はいつもより早いよ!!」

「剣、確かに明久の言う通りだ。いつもよりは早い」

「でしょう?」

「だからゾウリムシ野郎は言いすぎだ。

 明久、今日からお前はワラジムシ野郎だ!!」

「一瞬でも信じた僕がバカだったよ!!」

 

 

  …………

 

 

「では、Fクラス作戦会議を始める。全員揃ってるな?」

 

 雄二がCクラスの壇上に立つ。

 ああ、設備のおかげか、いつもより格好良く見えるな。

 

「諸君らも聞いたと思うが、俺たちはBクラスに宣戦布告された。

 開戦時刻は明日の朝9時だ」

 

 そわそわしていたクラスメイトの一部が安堵の表情を浮かべる。

 理由はおそらく……

 

「言っておくが、もし明日、納得の行かない理由で休んだら……」

 雄二がゆっくりと、姫路の方へと視線を投げかける。

「ふぇ?」

 

 姫路はすっとぼけたような表情をしているが、Fクラスの連中は顔色を激変させた。

 アレでもかなり改善されてるはずなんだけどなぁ……

 

「……まぁ、俺も鬼じゃあない。

 明日戦争に参加した者には、あるモノを配布する」

 

 アメとムチというやつだな。こいつらを納得させる報酬となると……

 

「康太、頼む」

「…………(コクリ)」

 

 康太がプロジェクターを操作する。

 これもCクラスの設備ならではだな。

 で、康太+プロジェクター(映像)となると……

 

 

『うおぉぉぉ!! 女子の写真!!』

『これ清涼祭の時の奴か!?』

『メイドさんハァハァ!!』

『む、ムッツリーニ!! もっとゆっくり流してくれ!!!!』

 

 

 かなりのハイペースで女子の写真が流れる。

 プロジェクターって便利だなぁ~。

 

「さて諸君。戦争に参加するかは各自の判断に任せよう。

 ただ、これだけは言っておく。

 戦争に参加し、功績を打ち立てた者には数量限定のレア物も用意してある。

 繰り返すが、強制はしない。

 今日のうちに点数を補充しておくのも自由だ。

 自由に参加してくれ」

 

 なんて言い草だ……

 

『うおぉぉぉおお!! やってやるぜぇ!!!!』

 

『『『『『『オオーーーー!!!!!!』』』』』』

 

 ……ところで、これ、FFF団には効果てきめんだと思うけど、女子は……?

 姫路は……

「? どうかしましたか?」

「いや、何でもない」

 まあ問題ないとして、島田は……

「っ! …………」

 目が合った途端に顔を背けられてしまった。

 う~ん……どうなんのかなぁ……?




※『下位のクラスと設備を交換させられた場合、新学期になったら設備がどうなるのか』
 という事が不明だったので本作ではそのままとしています。

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