「意外と人が残ってるな」
僕は今、Aクラス教室の前に居る。
「失礼しまーす」
扉を開けて中を見回すと、目的の人物はすぐに見つかった。
何人かのクラスメイトと談笑しているようだ。
「よう、光」
そ、大事な家族だ。
「あ、剣。試召戦争で派手にやったんだって?」
「情報が早いな。とりあえず勝ってきたぞ」
「あ、この人が例の弟くん?」
「……見ない顔だな。誰だ?」
「ああえっと、優子と翔子は分かるわよね?
こっちの子は一年の終わりに転校して来た
「よろしくね、弟クン」
さて、そろそろ何故この僕が『弟』と呼ばれているか説明しておこうか。
ちなみに、光の名誉の為に言っておくが、光が見栄を張って僕の事を弟だと言ったわけでは決して無い。
「よろしく。工藤さん。
一応言っておくと僕の方が兄だ。
……戸籍上は」
「え? そうなの!?」
「何かね、ほぼ同時に競い合うようにして腹から出て来たらしくてね、
どっちが上の子か不明確らしい」
子供を二人同時に産んだ母はさぞ辛かっただろう。
尊敬に値する人物だ。
「そ、そんな事が……有り得るの……?」
「うん。んで、戸籍登録する時にどっちが上の子か書かなくちゃいけないから、仕方なくコイントスで決めたらしいわ」
「ま、そんな事情があって、公式な場では『兄と妹』だが、それ以外の場所では『兄と姉』という暗黙の協定が結ばれている」
「『姉と兄』よ!!」
「いや、『兄と姉』だ!」
「いやいや、『姉と兄』よ!!」
そんな細かい事どうでもいい?
いやいや、僕達にとってはかなり重要な事だ。
「二人共、その辺でストップ」
「ああ、済まん、木下姉」
うん、こっちは工藤と違って頭の中に情報があるぞ。
Fクラスの木下秀吉の双子の姉。
本人の学力はAクラスでも5指に入るレベル。
それにしても双子でどうしてここまで学力が違うのか……
ちなみに外見は普通に美少女だ。秀吉みたいに性別逆転してないから、そこは安心してくれ。
「んで剣、わざわざAクラスまで、どうしたの?」
「単に迎えに来ただけだが、要らんかったか」
「それだけで済ませるとは思えないけど?
私だったら偵察も済ませる」
「当然だな。もっとも、予想してたメンバーと大差無いみたいだから意味は無かったかもしれんが」
「……やっぱりFクラスの目標はAクラス?」
今初めて口を開いた無口系少女は……
学年一位の常連。
おそらくはAクラスの代表。
男子からの告白を撃墜した数でも学年一位……かもしれない。
そのあまりの男子への興味の無さから同性愛者ではという噂まで流れているが……
……噂を流す奴もどうかとは思うがあっさり信じる方もどうかと思うぞ?
つまりは敵将だな。適当に誤魔化すか。(もう手遅れな気もするが)
「さぁ。僕は代表じゃないんでね」
「……じゃあ空凪、雄二に伝えて。
いつでも、待ってるって」
バレバレだなおい。
こっちの代表もバレてるし。
「あと霧島、僕の事は下の名前で良いぞ、光と混同するから」
「ボクも下の名前で呼んで良い? 剣君?」
「既に呼んでるじゃないか。まあいいけど」
「FクラスがAクラスまで攻めてくるなんてね、身の程知らずと言うか……」
「木下姉、そうは言うけどな、今日僕達はランクが二つも上のDクラスに勝利してのけた。
普通は不可能である事をあっさりとやってのけた。
ならもしかしたら……とは思わんか?」
「ゔ、ううん……」
「まぁ一週間も経てば結果が出るだろう。
んじゃ、帰るぞ」
「先帰ってて良いよ~。
まだちょっと残るから」
「ん、りょーかい」
妹(?)を心配しないのかって?
バカ言え。あいつは大抵のトラブルなら自力で解決できる。
無理に連れて帰るのは失礼ってもんだ。