「ふぃ~、ようやく終わったな」
「ワシはいつバレるかとハラハラしておったぞい……」
Cクラス戦を終え、秀吉と2人で雄二のもとまで戻る最中である。
適当に雑談しながらのんびり歩いていた。
「おいおい、僕達の
「まぁ大丈夫じゃとはおもっとったが、『もしも』を考えたらのぅ……」
「その精神状態でもボロを出さないというのはなかなかやるな」
「完全に演技すれば安定するんじゃが……
……一言も喋るなと言われておったからのぅ……」
前の事件の影響か、『演技の声で喋る事は一切許さない』という条件のもと、木下姉の協力(と言うより、身分貸与?)を許されたらしい。
まぁ、試召戦争の時の事件を考えたら無理も無いか。
ちなみに、本物の木下姉(と光)はどっかの部屋に隠れてるらしい。
とまぁそんな話をしながら僕達の部屋の前に到着したんだが……
「皆さん、本っ当にすいませんでした!!」
「え、ちょ、姫路さん!? お、落ち着いて!!」
……そこには、土下座している姫路の姿と、
うろたえている明久と康太の姿が……
「……おい明久」
「あれ? 空凪さん?」
「僕は剣だ」
「…………え?」
「そんな事より、雄二はどこだ?」
「いやいやいやいや、ちょ、ええええっ!?」
「…………雄二なら補習室だ」パシャパシャッ
「そうか。
あと康太、写真販売する時は光の許可も貰っておけよ」
「…………馬鹿な!!」
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってよ!?
ほ、ホントに剣なの?」
「ん~……昨日お前がトランプ麻雀で振り込んだ役と点数を全部言ってみようか?」
「スイマセンデシタ!!」
「このように、『本人しか知らない情報』を要求すれば本物か偽者かは割と簡単に把握できるぞ」
裏をかかれる事もあるが。
「いや、そんな事言われてもね……」
「ん、じゃあこっちの『木下』が姉か弟か当ててみろ」
「何故!?」
「まあそんな事より……」
「いや、剣が言い出したんじゃ……?」
「おい姫路、どうした?」
「わ、私、み、皆さんを勝手に盗撮犯だって、決めつけて! うぅっ!」
「……なぁ姫路、あの腕輪は役に立ったか?」
「え? あ、はい!」
「お前ら、姫路は役に立ってくれたか?」
「勿論だよ! 姫路さんが居なかったらかなり危なかったよ!」
「…………(コクコク)」
「んじゃあ、今回の件はこれで水に流すって事で構わないな?」
「当然!!」
「…………(コクリ)」
「み、皆さん……うぅぅ、ありがどうございばずぅぅぅぅ!!!!」
そうか、泣くほど嬉しいか。誰か、ハンカチ貸してやれ。
……数分後……
「ふぅ……やっと解放された……って、どうしたんだお前ら?」
「ああ、雄二か。ちょっとな……」
姫路を宥めていたら雄二が帰ってきた。
「ん? ……まあいい。
ところで、姫路に作ってもらいたい物があるんだが……」
「え? 何ですか?」
「いやなに、大した事じゃない」
……更に数分後……
(((((……ピクッ、ピクッ……)))))
「わ、私の料理って、そんなに酷いんでしょうか…………」
「(お、おい剣、味見はしたんだろうな!?)」
「(少量なら普通にマズい飯くらいで済んだが?)」
「(……姫路がまともになったんじゃなくて、お前が異常だっただけなんだな……)」
正に地獄絵図だな。
姫路が料理を作ってる側で死にはしないように監督して、少量なら普通に食えるくらいの味にしたつもりなんだが……
「失礼しま……って、何コレ!?」
「ああ、工藤か。気にする事は無い」
「いや、気にするよ!?」
「ただの熱中症だ」
「Fクラス全員が!?」
皆、倒れる直前に姫路の料理を食べていたが……ま、関係ないよね♪
「どうしたの愛子……って、どうしたの!?」
「ああ、うん、正直な所はもうちょい人が来てからな。
何回も説明するのも面倒だし」
……更に更に数分後……
「まずは礼を言っておく。
今回の戦争という名の私闘に協力してくれて感謝する」
「そんな事より坂本、この地獄絵図は一体何なんだ?」
「戦争に協力しなかったバカ供への制裁だ」
「一体何をしたらこんな惨状になるのよ……」
「大丈夫だ。この程度でくたばるようなヤワな連中じゃない」
光がボソッと『うちの学校はいつから戦場になったんだろう……』と言った気がしたが、まぁ気のせいだろう。多分。
「そんな事より……合宿最後の時間、皆でトランプでもしようぜ?」
と、僕が言った瞬間……
空気がピシリと凍りついた……気がした。
「あ、楽しそうですね。何をやるんですか?」
……姫路を除いては
「ん~、シンプルに大富豪?」
「待て待て待て待てぇい!!!
お前がやったら姫路のトラウマになりかねんだろうが!!」
「そ、そうだよ!! 大富豪だけはとりあえず却下!!」
「…………別のゲームを要求する!」
「剣よ、それは酷というものじゃぞ!?」
え~……そうかなぁ……
『っていうかお前ら、俺が参加した時は何も言わなかったよな……』
『代表の人望の差ね♪』
『いや、お前も参加してたよな?』
『ハッ、そう言えば!!』
向こうの方でBクラスコンビが何か言ってるが、気にしないでおこう。
「……チッ、しゃーない。
特別にお前たちに僕の秘密を教えてやろう」
「何だそれは?」
「僕のあの極悪な運だが……
……何故か、物を賭けると一般人レベルになるんだよ……」
「…………はい?」
「実際にやってみようか。
僕はこのノートのページ一枚を賭ける。
大富豪になった奴が貰えば良い」
「え、そんなんで良いの……?」
「ああ。
ちなみに、ノートのページが要らないなら勝ち取った後返してくれ」
「……分かった。
だが、全員でやるのは難しいぞ?」
言われて、回りを見渡してみる。
姫路、雄二、明久、康太、秀吉、霧島、光、工藤、優子、根本、御空。
そして僕で12人。
「……確かに多いな」
適正人数は……6人くらいか?
「じゃあ、僕はとりあえず見てるよ。何かコワいから……」
「…………不正の確認」
「……そもそも、お前たちって課題終わってたっけ?」
「ハッ! そう言えば!!」
「…………不覚っ!!」
「そう言えば、ワシも終わっておらんかった……」
「しごいて……教えてる最中に宣戦布告されたのよね」
「じゃあ、私たちも抜けるわね」
これで、明久、康太、秀吉、光、優子が脱落と。
「んじゃあ、私はその『一般人レベルの運』になった空凪くんを後ろから観戦させてもらうわ」
「OK。6人なら丁度いいだろう。
諸君、手加減なんて舐めた真似はするなよ? 全力で……やるぞ!」
「ええ。精一杯頑張ります!」
「ああ。望む所だ!!」
「……頑張る」
「今回の合宿で初めてだからネ。やっちゃうよ!」
「昨日の雪辱を晴らさせてもらうぞ!!」
そうして、戦いの火蓋が、切って落とされた……