……雄二side……
「開戦まであと10分程度か……」
「雄二、これからどうするの?」
「戦いが始まったら俺たちはどこかの部屋にひたすら籠城する」
「籠城? 僕達の戦力で出来るの?」
「連日の戦闘で剣が証明しているように、入り口と部屋部を繋ぐ短い廊下で戦えば戦闘人数をかなり制限出来る。
あとは畳とかで更に幅を狭めれば割と何とかなるだろう」
本当は完全に塞いでしまいたいが、代表への通り道を完全に塞ぐのはルール違反となり、教師から注意を受ける。
なお、言うまでもない事だが人で塞ぐのは問題ない。
「う~ん……なるほど。
それで、どこの部屋に籠城するの?」
「部屋の構造はどこも変わらんからな。俺たちの部屋で十分だろう」
「え? でもそれだとすぐに場所がバレちゃうと思うけど……」
「別に構わん。
本来、代表は常に場所を公開しなきゃならない。それを確認されたらどうせすぐにバレる」
「ああ、なるほど」
剣なら多分これで完全に通じるんだが、明久なら半分しか理解出来てないだろうな。
まぁ構わん。
「翔子、教師の方はどうなってる?」
「……半分くらいは押さえられた」
「分かった。ありがとな」
「……雄二の為ならどうって事は無い」
これでCクラスは勝負を挑むのも一苦労になるな。
立会いの教師が居なけりゃ戦闘は仕掛けられない。
まだ半分近くが残ってはいるが……教師は普通の会社員だからな。アウトドア派な
要するにいざという時は足で逃げきれる。
「こっちもそこそこ押さえられたよ~」
「御空か。分かった」
「ただ、補充試験の監督として繋ぎ止めてるんだけど、目の前で戦闘が起こりそうになったら監督と立会いを同時に出来るし、補充試験が終わった時に他のクラスに立会いとして呼ばれたら流石に行かなきゃならないって」
「そうか……」
となると制限時間は今から約1時間か。
「わざわざ補充試験をやってまで押さえてくれたのか。済まないな」
「まぁ、合宿の成果を試したいって人は結構居たからね。丁度良かったみたいよ」
「それなら良いが」
「空凪妹の方はどうだ?」
「兄さんたちが補充試験受けてる補習室まで行ってみたけど……扉はまるで開かなかったわ」
「そ、そうか……」
本校舎の補習室だけじゃなくてここも完全防音なんだろうか……
「流石に開戦したら中に居る鉄人に伝わって開放されると思うけど、宣戦布告の段階だと伝わらないみたいね」
「それなら仕方ないか……」
どうやら開戦する前にコンタクトを取るのは無理らしいな。
出来る事はこんなもんか……
後は……天命を待つだけだ。
……そして10分後、Fクラス対Cクラスの試験召喚戦争が始まった。
……雄二side out……
……小山side……
やっと始まった。ようやくあいつらをボコボコに出来るわ!
「代表、部屋の包囲完了しました!」
「ご苦労さん。
それじゃ、突入するわよ!!」
連中が自分の部屋に立て籠もってるのは分かってる。
わざわざ追い詰められてくれるなんて、やっぱりFクラスはバカね♪
ドアノブに手を掛け、勢いよく扉を……
ガッ
「痛っ!」
鍵が掛かってる!?
こういう方法で道を塞ぐのは戦争中は禁止のはずなのに!
とにかく……
「先生! 鍵を持ってきて下さい!!」
「そうですね。少々お待ち下さい」
まったくもう、これだからFクラスは!!
……15分後……
「お待たせしました。今開けますね」
先生に鍵を開けてもらってから今度こそ勢いよくドアを開ける。
「さぁ、年貢の納め時よ!!
………………あれ、誰も居ない……?
「どこに居るの? 隠れてないで出てきなさい!!」
だが返事は無い。
内側から鍵が掛かっていたし、鍵も先生しか使えないはずだから確実にこの部屋の中に……
「……ん?」
よく見ると、窓が開いている。
まさか……
「先生! 盗さ……Fクラス代表の居場所を確認して下さい!!」
「少々お待ち下さい。
……どうやら、105号室に居るようですね」
「なっ、くっ……」
騙されたぁっ!!
……小山side out……
……雄二side……
現在、俺たちは一階の
「……ねぇ雄二、こんな事してて良いのかなぁ……?」
「別に構わん。ほれ、革命だ」
「くっ、ここで仕掛けるのか?」
根本が苦悶の表情を浮かべている。
ああ、剣が居ない大富豪って素晴らしいな。
本人には悪いが。
「雄二はもともと上手いからのぅ。
……剣さえ居なければ」
「しっかし窓から脱出して敵の目を欺くって、オモシロイ事考えるよね~」
「一応窓の外も敷地内だからな」
「俺としては3階の窓から降りる事を思いつけるのが気になるが……」
FFF団に捕まるのと、3階から飛び降りるのとでは後者の方が明らかにダメージが少ないからな。
「でも、さっき自分の部屋に籠城するって……」
「代表の居場所を確認されたら一発でバレる。
だからこそ、確認するまでもないと思わせればちゃんと騙せるってことだ」
情報は隠そうとすると探られる。
だったら、大っぴらに明かす事で探る気を無くさせるのも一つの手というわけだな。
『さぁ、年貢の納め時よ!!
開けてある窓から小山の声が聞こえてきた。そろそろ限界か。
「しっかし、小山が先頭に立ってるのか……
試召戦争だって事を理解してるのか?」
「どうでしょうね。
一番厄介な敵である空凪くんも今は居ないから楽勝だってタカを括ってるのかもね」
「……まあいい。小山に代表の位置を確認するだけの余裕があればもうじきやってくるだろう。
その時は、作戦の第2フェイズを頼むぞ」
「OK~」
「ああ。任せろ」
どれだけ時間を稼げるか、どれだけ相手を疲労させられるかが勝利の鍵だ。
小山、俺たちにどこまで着いてこれるかな?