バカ達と双子と学園生活   作:天星

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08 疑問

  ……合宿2日目 夜……

 

  ……自室……

 

ドバン!

 

「お前らも暇だなぁ……

 あ、上がりだ」

「うぅ、また僕がビリかぁ……」

「いや、ジョーカーを処理出来なかった秀吉がビリだ」

「あ、そうだった」

「こっちを向きなさい!!」

 仕方ないなぁ……

 勢いよく開け放たれたドアの方を見ると島田と姫路を筆頭とする複数の女子。

 そして高橋先生。

 ……先生も大変だなぁ……

「一応訊くけど、今日は何の用だ?」

「あんた達を補習室に送りに来てやったわ。覚悟しなさい!!」

 ここで血で血を洗う殴り合いに発展しないだけマシなのかもしれんが……

 一応断る事も可能だ。わざわざ向こうが先生を呼んでくれたから暴力沙汰が発生したらすぐに鉄人先生が飛んでくるだろうし。

 でも……

「……はぁ、科目は? 面倒だからそっちが決めてくれ」

 こっちの点数は大して変わらないし。

「じゃあ数学で、高橋先生お願いします!」

「……空凪君、この戦いに意味はあるのでしょうか?」

「やってみなければ分かりませんよ」

「そうですか…… では承認します」

「んじゃ、試獣召喚(サモン)っと」

 

 [フィールド:数学]

 

Fクラス 空凪剣 399点

 

 昨日の総合科目勝負のせいで微妙に点数が削られたみたいだ。

 ちなみに減る前の点数は400点なので腕輪はちゃんと使える。

 まあ、点数が足りてなくても学園長からもらった白の腕輪使えば使えるけどね……

「まとめて掛かってこい。

 と、言いたい所だが地の利を利用させてもらうぞ。二人が限界かな」

 入り口は普通のドアだから大して広くないし、ドアから部屋まではドアと同じ幅の短い廊下がある。

 部屋まで侵入される前に塞いでしまえば2人、無理しても3人が限界だろう。

「美波ちゃん、私も!」

「そうね……行きましょう!」

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

Fクラス 島田美波 195点

Fクラス 姫路瑞希 422点

 

 さて、この2人を倒しても後ろには複数名の女子。

 連戦は少々面倒だ。

 後ろの方で七並べ……じゃなくて大富豪かな? をやってる連中と交代する事も可能だが……こんな事の為に神聖なトランプタイムを減らすのは嫌だ。

 ではどうすれば良いか?

 答えの一つとして、『一番やる気(殺る気?)のある2人に圧勝する事で戦意を挫く事』だ。

 この2人相手に可能か? 可能だ。

 だって、この2人が来る事は容易に想像できた。

 意外と対処は簡単……って前に言った気がするなぁ……

 

「まずは、リリース」

 一ヶ月以内に複写した全ての腕輪の能力を開放するコマンドを使用する。

 ちなみにトレースも同時に発動するので姫路の腕輪も複写できる。

 ここで『熱線』を使えば……僕と、ついでに学園長が刑務所送りになりそうなので止めておく。

 敵の召喚獣と一緒に召喚者まで一掃してしまうからな……

 それでも、真っ先にリリースを使う必要があった。何故なら……

「消えてくださいっ!」

 姫路の召喚獣の腕から熱線が放たれる。

 この能力はこの環境では凶悪過ぎる。

 回避は極めて困難だ。

 ……普通に躱すなら……だが。

「ディストーション」

 コマンドを口にすると同時に熱線が脇に逸れる。

 一定範囲外からの飛び道具の軌道を逸らす能力だ。

 コストは20点消費で1分継続と、かなり燃費が良い。

「なっ!?」

「隙だらけだな」

 姫路の召喚獣に向かって突進を……

「させない!」

 ……しようとしたら島田の召喚獣が立ちふさがった。

 なら……ぶち破るまでだ。

「エンハンス」

 武器強化コマンド。

 召喚獣のナイフの威力を増幅させて敵を葬る。

 

Fクラス 島田美波 Dead

 

「戦死者は補習!!」

「は、離して! ウチはまだっ!」

 毎度毎度思うけど、鉄人はどうやって戦死者を感知してるんだろう……?

「美波ちゃん!!」

「余所見とは余裕だな」

 隙を突いて真っ正面からの体当たり……は流石に無茶なので、召喚獣の鎧で被われていない部分や鎧の隙間を正確に突く。

「くっ、このっ!」

 姫路の召喚獣も剣を振るが、重装備の召喚獣の動きでは軽装でかつ操作に慣れてる召喚獣には当たらない。

 そしてそのまま……

 

Fクラス 姫路瑞希 Dead

 

 ………………あれ?

 鉄人先生が来ない。いつもならすっ飛んでくるはずなのに。

 島田を補習室に送ってる最中だからだろうか?

 ……ふむ。

 

「なぁ姫路」

「…………何ですか」

「お前はさ、自分を疑った事ってあるか?」

「へ?」

「深い意味は無い。ただ……「戦死者は補習!!」……まあいいや。頑張ってこい」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 一体どういう……」

 

 中途半端な所で鉄人先生に割り込まれたが……まあいいや」

「……さて諸君、まだ戦うのか?

 戦う意志のある奴は5つ数えるまでに召喚獣を出せ」

 …………………………

「……居ないようだな。

 じゃ、とっとと自分の部屋に帰るといい」

 そして、ドアを閉める。

 これで、今日はもう来ないだろう。多分。

 

 

  ………………

 

 

「奴らも懲りないなぁ……パス1」

「一晩経っても全く変わらなかったな」

「何であの2人は僕達を目の敵にするのかな……? パス2」

 誰だスペードの6止めてる奴は。

「この後はどうする気なんだ? Aっと」

「とりあえず……放置して様子見?」

「…………パス3」

 康太、後が無いな。

「パス2じゃ。

 盗撮犯を捕まえた事を言えば皆納得して引き上げるのではないのかのう?」

「それでもいいけどさぁ……

 こんな言葉を知ってるか?

 『証拠を基に潔白を信じる事は容易だが、主張を基に潔白を認めるのは困難だ』 そしてパス2だ」

「うーん……パス3だよ」

「初めて聞いたな。スペードの6だ」

「今僕が適当に作ったからな。お前が持ってたのかよ。

 確かに証拠を出せば誰もが認めるだろう。

 だが、僕達は既に潔白を主張している。

 僕達の主張は無視しておいて証拠が出てきたら手のひらを返すように潔白を認めるってのはヒドい話だろう?

 ベストな結果を迎えたいなら、もう少しだけ様子を見た方が良いだろう」

「ってか、お前が作ったのかよ」

「…………パス4」

 康太が脱落。AやKが目立つな。ジョーカーも持ってたのか。

「スペードの5じゃ。これ以上悪感情が増える前に止めるのも1つの手じゃと思うのじゃが……」

「あらゆる観点から正しい選択肢なんて無いさ。

 ダメだったらそんときはそんときだ。

 …………パス3」

 ヤバい、後が無い。

「スペードの4っと。

 あの2人は僕達の事は信じてはくれないのかなぁ……」

「信用云々以前に話を聞いてないからな。

 スペードの3……誰だよハートの8持ってる奴」

 ホント誰だよ……

「スペードの2。あと一枚じゃ」

「ちっ、パス4だ。

 ……話を聞かないで思い出したが、霧島は最近どうだ?」

「ん? ああ。ちゃんと話を聞いてくれるようになったよ。

 昨日もちゃんと話し合いをしてくれたからな」

「ハートの8っと。確かに霧島さんの雰囲気が変わった気がするけど、何かあったの?」

 お前が持ってたんかい!!

 ……まさか、他のカードと重なって見えてなかった……なんてこた無いだろうな?

「上がりじゃ。そういえば、最近姉上の雰囲気も何となく変わってきた気がするのぅ」

「俺も上がり。木下姉がどうかしたのか?」

「ああ、その件ならこれを見れば分かる」

「上がりって、その写真は!!」

 明久が前に1グロス要求してきた余りだ。

「明久ぁ……お前なかなかやるじゃないか」

「ふむ、なるほどのぅ」

「剣ィィィッ!! どうしてこんな事するのさ!!」

「どうしてって、そりゃぁ……」

 ハートの8を止められた恨みに決まってるじゃないか。


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