バカ達と双子と学園生活   作:天星

65 / 243
05 捕縛

  ……学習室……

 

「それで、話とは何ですか?」

「単刀直入に言います。盗撮犯がほぼ分かりました」

「……誰ですか?」

「恐らくは、Dクラスの清水美春です」

「……どうして彼女が犯人だと?」

「ちょっとした事情があって、前々から今回の犯人を調べていたんですよ。

 と言うか、調べていた人物が今回の犯人のようで。

 事前情報も含めて今回の事件を考察してみたら彼女が浮かび上がって来ました」

「……そうですか。では彼女から話を聞いて……」

「まあそう焦らずに。

 お話したい事はあと二つほどあります」

 疑いがある生徒に対して話をきくというのは学校側としては当然の対応なんだろうが……今は止めてほしい。

「一つ目。

 じつはその盗撮犯ですが、僕のクラスメイトに脅迫までやってましてねぇ……

 今の話を真っ正面から話されると色々と困るんですよ」

「なるほど。それで、2つ目は?」

「あくまで僕達の予想ですが……まだカメラは残っています」

「? どういう意味でしょうか?」

「あっさりと見つかりすぎなんですよ。

 隠しカメラがあっさり見つかるような代物なら、今頃この世に盗撮という犯罪は無くなってます。

 見つかったカメラは故意に見つけさせられたんですよ」

「盗撮犯がわざわざ見つかるような真似をするとは思えませんが……」

「だが実際に見つかりました。

 そうして油断させておいて本命のカメラを隠しておく。という可能性は十分にあります。

 なので、僕達に女子風呂の脱衣所を調査する許可を下さい。

 あ、もちろん西村先生あたりに監視してもらいながら……ですが」

「……仮にカメラを見つけたとしてその後どうする気ですか?」

「ん~、そうですね……」

 そこまで深く考えていたわけではないが……

「もし盗聴器も仕掛けられてたら挑発でもしてみましょうか」

「盗撮犯がそんな手に乗るのでしょうか……?」

「さぁどうでしょう。別に効果が無くてもデメリットがあるわけでもないですし。

 何もなければカメラ類は先生に引き渡しますよ」

「………………いいでしょう。許可します。

 いつ行きますか?」

「だれかと鉢合わせするのも面倒なので……1時間後、ここに集まりましょうか」

「分かりました。では、また1時間後に」

「はい。では失礼します」

 

 

  …………

 

 

「ただいま」

「おうお帰り。上がりだ」

「くぅぅ……また僕が大貧民だぁ……」

「大富豪か。キリも良いみたいだし一旦止めてくれ」

「ああ。で、どうなった?」

「高橋先生から女子風呂の脱衣所を調べる許可を貰った。勿論監視付きで……だが。

 決行は1時間後。そこの学習室に集合だ」

「なるほど、お疲れ」

「僕も行くが、メインは康太だ。頼んだぞ」

「…………隠しカメラくらい、5秒で見つけ出す」

「頼もしい限りだな。それじゃあ……

 僕も混ぜろ」

「ああ、望む所だ!!」

 

 

 

「さぁ行くぞ! 10枚階段!!」

「「「「!?!?」」」」

「8を含むので8切り! そして上がりだ!!」

「いやおかしいだろ!!」

「フッ、結果が全てだよ、代表」

「うぐぐ…………」

 

 

「革命だよ!!

 大富豪の剣に躱せるかな?」

「なら、革命返しだ」

「んなっ!!」

「安心するのじゃ。革命返し返しじゃ!」

「なら、革命返し返し返し。そして上がり」

「な、何故勝てぬ……」

 

 

「ジョーカーだ。スペ3は出るか?」

(あいつの手札は9枚……出すべきか?

 だが、この3は革命の為のキーカード。

 …………パスだな)

「なら、8切り4枚階段が2回とAで上がりだ」

(くっ、ミスったか!?)

 

 

(……ここで場を一掃できれば勝てる。そしてジョーカーが手にある。

 ……だが、あいつの手札2枚に、もしスペ3があったら……)

「どうした? まぁ存分に悩むと良い。それがこのゲームの醍醐味だ」

(今回のルールでは最強、最弱上がりと役上がりは禁止だ。

 残り2枚の片方が3だと極めて上がりにくい事になる。

 ……仕方ない、行くぞ!)

「それを待っていた。スペ3、からの4で上がりだ」

「ちくしょうっ!!」

 

 

「……さて、そろそろ時間だ」

「…………(スック)」

「……うん……行ってらっしゃい」

「……のじゃ」

「……行ってこい」

 なんか皆燃え尽きて真っ白になってる気がするが……きっと気のせいだろう。

 

 

  ……学習室……

 

 

「失礼します」

 部屋に居たのは予想通り、高橋先生と鉄人先生だ。

「来ましたか」

「話は聞かせてもらった。俺と高橋先生がお前たちを監視する」

「分かりました。では行きましょう」

 

 

  ……脱衣所……

 

 

「(それじゃ、康太、頼む!)」

「…………(コクリ)」

 そして5秒後。

「(…………これで全部だ)」

 マジで5秒で見つけたよこのヒト。

 見つけたカメラには集音機能も付いてるようで、リアルタイムで情報をどこかに送るようになっているようだ。

 流石に電源は切ってるようだが……

「(…………タイマー方式になってる。そこのスイッチでもつく)」

「(OK)」

 さて、適当に挑発してみるか。

 運が良ければ、本当に運が良ければ一気に解決できる。

 盗撮犯が、清水とかいうのが慌てて駆けつけるような台詞が良いか。

 ………………よし

「(それじゃ皆さん、演技スタートです)」

 

カチッ

 

「クハハハハ!! 脱衣所に侵入してやったぜ!!

 今なら何かあっても疑いの目はあのバカ供に向く! やりたい放題だぜ!!

 お? こんな所にカメラが……ククッ、俺様と同じ事を考える奴が他に居たと……

 

ドドドドドッ ガラッ

 

「私のカメラに触るんじゃありませんこの薄汚い豚野郎!!」

 ……ホントに来たよ。

 このツインテールならぬドリルテールが清水か。

 既に『私の』カメラって言ってるが……一応もうちょい話を続けておこう。

「なるほど、最初の盗撮犯はお前だったのか」

「盗撮とは失礼な!! 私はお姉様の生まれたままの姿を記録したかっただけです!!」

 ……うん、もういいね。

「じゃ、先生、お願いします」

「本当にお前が盗撮犯だとはな……」

「なっ、何故ここに西村先生が!?」

「お前は罠に掛かったんだよ。

 さっきのお前の台詞はきっちり録音してあるし、二人もの教師に聞かれている。

 言い逃れは出来ないぞ」

「くっ…………」

「さぁ、こってり絞ってやる。覚悟しろ!」

「わ、私はただお姉様の……」

「言い訳は補習室で聞く」

「は、離してぇぇぇぇ…………

 

 

 ……こんなにあっさり片付くとはなぁ……

「二人共、ご苦労様でした。

 貴方達のおかげで盗撮犯を捕まえる事が出来ました。教員を代表して感謝します」

「どういたしまして。あと、清水が持っているであろう明久の脅迫写真も処分させておいて下さいね」

「そうですね。どんな写真ですか?」

「……後で明久に訊いといて下さい」

「……分かりました。

 後はこちらで何とかするので、二人共部屋に戻って結構ですよ」

「はい。では失礼します」

「…………失礼します」

 

 

  ……自室……

 

 

「戻ったぞ」

「…………」

「ああお帰り。上がりっ!」

「くっ、明久のくせに……」

 今度はババ抜きのようだ。

 3人で大富豪ってキツいものがあるからな……

「早速報告だが、盗撮犯を捕まえた」

「速っ!!」

「相手が予想以上に間抜けだったんでな……

 あと明久、例の脅迫写真も消させるから、どんな写真か鉄人先生か高橋先生に言っておけ」

「あ、アレを僕の口から言えと!?」

「僕が言った方が良いのか?」

「い、いや、自分で言うよ……

 ……はぁ……」

 ……ホント、一体何が写ってたんだろう……?

「ふむ、一段落したところで、今日はもう遅いから寝ようではないか」

「そうだな。えっと布団は……」

 

 

 こうして、やたらと濃密だった合宿一日目がようやく終わった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。