……部屋の前の廊下……
「よくもノコノコ帰ってこれたわねアンタ達!」
「僕には廊下で夜を明かす趣味は無いからな」
自室に戻ろうとすると案の定と言うべきか、女子たちが待ち構えていた。
流石に全員残ってるという事はなく、小山を筆頭としたCクラスが中心の10人が残っていた。
う~ん? Fクラスの二人がそうそう簡単に引くとは思えんが……
もしかすると館内を探し回ってるのかもしれない。
「で、何か用か? 邪魔だからとっとと帰って欲しいんだが」
「まだシラを切るつもり? この状況で認めないなんて、よっぽど馬鹿なのね」
どの状況の事を言ってるんだろう?
「お前ら、ヒマでいいな。羨ましいよ」
「何ですって!?」
「要件を言えよ要件を。
こっちは部屋でのんびりしたいんだ」
「認める気が無いようなら仕方ない。あなた達に召喚獣勝負を挑むわ!!
補習室に送ってあげる!」
「ふ~ん……勝負と言われて退くわけにはいかんな。
で、立会いの教師は……そこの高橋先生ですか?」
「盗撮犯を制裁すると聞いたのですが……貴方達なのですか?」
「盗撮については全面的に否定しますが、勝負なら受けて立ちますよ」
「そうですか……では、承認します」
「「「「「「「「「「
待ってましたと言わんばかりに召喚獣が召喚される。
10人か。何とかなるかなぁ……?
「
とりあえず召喚する。敵前逃亡で補習室送りは悲しいので。
「……? 召喚するのはアンタだけなの?」
「貴様等には関係ないだろう、この愚民供」
「何ですって!? 皆、あのフザケた口を利けないようにしてやりましょう!!」
こんな見え見えの挑発に引っかかるって、Cクラス代表は根本的に指揮者に向いてないんじゃないのか?
「御託は要らない。どっからでも掛かってこい」
「ぜ、全員突撃よ!!」
この状況が計算通りだと何故気づかないんだろうなぁ……
現在、僕はフィールドギリギリに立っている。
そして足元から数十センチの位置に召喚獣。
……戦死の条件ってのは点数0だけじゃないんだけどなぁ……
敵の突進に合わせて勢いよく後ろに避けさせる。
この回避行動は極自然なものだ。決して咎められるようなものではない。
やや高く飛びすぎた気もするが……大した問題ではない。
そうなると必然的に僕の方に飛んでくる事になる。
召喚獣の体当たりだ。ガードしないと少々痛い。故に多少腕で体を守っても何も問題ない。
そもそもが咄嗟の行動なのだ。
その結果、あらぬ方向に召喚獣が飛ぶ事になる。そうならなかったら物理法則を無視する事になるからな。
そしてその方向が
「っ!!」
当然、高橋先生は召喚獣を避ける。少なくとも避けようとするはずだ。
とっさの行動で体制を崩した所に召喚獣が飛んできて転ぶ? あるいは避けるのに成功する?
どっちでも構わない。結果的に高橋先生は大きく後ろに下がる事になる。
「っと」
そうなる前に一歩大きく踏み出す。足元には敵の召喚獣が群がってるが、物理干渉能力を持たない普通の召喚獣だから気にする必要は無い。
そして……
シュゥゥゥン……
「えっ!?」
「召喚獣の操作が下手くそだな。場外は戦死扱いだぞ」
場外にならなかった召喚獣も手早く追い出す。
そもそも点数が桁違いだし、不意を突いたので簡単に追い出せた。
「戦死者は補習!!」
「せ、先生! 今のは事故ですよね!?」
「残念ながら文月学園では結果が全て。戦死は戦死だ」
「ちょ、待っ、離してぇぇぇぇ…………
鉄人先生……どうやって10人も同時に運んでるんだろう?
実際に目で見ても理解出来ないな……
「今回の戦争はこれで終了のようですね。承認を解除します」
「お疲れ様です。
あ、ちょっと話しておきたい事があるのですが……」
「何でしょうか?」
「……ちょっとこの場では話せません。どこか、人に聞かれない所ってありませんか?」
「では、そこの学習室で話しましょうか」
「ありがとうございます。
お前たちは先に帰っててくれ。話し合いはやっておくから」
「おう、頼むぞ」