バカ達と双子と学園生活   作:天星

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02 覚悟

「やっと落ち着けるな」

 電車やバスで乗り換えを繰り替えしてやっと合宿所に到着した。

 この部屋を使うのは五人。

 明久、雄二、秀吉、康太、そして僕だ。

「ふぅ~…やっと着いたね」

「ところで康太。例の件はどうなってる?」

「…………調査中」

「手伝うか?」

「…………(コクリ)」

 よし。

 

  ……そして、数時間後……

 

「……情報をまとめるとこんなもんか」

「何か分かったのか?」

「昨日から康太が収集していた情報をしらみつぶしに洗ってみたが…

 まとめると『二人の犯人は同一犯で、その犯人は同学年の女生徒でお尻に火傷の痕がある』ようだ」

「君たちは一体何を調べたんだ」

 ホントにまとめたらこうなったんだよ……

「一応過程をざっと説明すると…

 まず手口が似てる事から同一犯だと断定できるらしい。

 専門家が言うのだから間違いないだろう。

 次に、犯人は強化合宿を理由に納品を遅らせた。

 同学年である可能性が高い。

 活動範囲を見ても同学年だと推測できる。

 更に、活動範囲から、女子ではないかと推測出来る。

 自分の事を乙女とも言ってるからな。

 最後に。盗撮や盗聴が親にバレて文字通りお灸を据えられたらしい。

 尻にな」

「それでお尻に火傷の痕か」

 立派な犯人の特徴だよ。役に立つ気が全くしないけど!!

「なるほどな。分かったのはそれだけか……」

「でも、これだけの情報で犯人を『学生全員+教師』から『二年生女子』まで絞り込めた」

 約1/6だ。流石に教師は始めから除外して良かったとは思うが……念のためだ。

「お主ら、さっきから何の話をしておるのじゃ?」

「秀吉、実はね……(以下略)」

「そうじゃったのか。それにしても、尻に火傷とは……」

「皆。一応言っておくが……女子の尻を片っ端から見て回るとかいうのは無しだぞ」

「え!? どうして!」

 微妙に残念そうな顔をしているのは気のせいであってほしい。

「…………脅迫犯を捕まえるのも大事だが、犯罪を犯したら意味が無い。

 そんな手は絶対に使いたくない」

「じゃあどうするの!」

「そうだな……たとえば……

 ……ん? 複数の足音……?」

 

ドバン!

 

『全員頭の後ろに手を組んで伏せなさい!』

「なっ、何事じゃ!?」

「騒々しいな。何だ一体」

 

 んっと……F~Cクラスの女子混合部隊?

 指揮官は……

 

「木下はこっちへ! そっちのバカ三人は抵抗を止めなさい!」

 ……こいつ(島田)か?

 っていうか……

「お前ら……ここは三階だぞ……」

「なぜお主らは咄嗟の行動で窓に向かえるのじゃ……?」

 緊急時にすぐに逃げ出せるというのは実は結構重要な能力かもしれんが……

「仰々しくぞろぞろと。一体何の真似だ?」

 堂々と雄二が語りかける。さっきまで一目散に窓を目指していた人物と同一人物だとはとても思えない!!

「よくもまぁ、そんなシラが切れるものね。

 あなたたちが犯人だってことくらいすぐにわかるというのに」

 島田の後ろから出てきたのはCクラス代表の小山だ。

 ……なるほど。こいつが指揮官か。

 しかし気になる言葉が出てきたな。

「犯人……ねぇ。

 この世に生きる存在は全てが業を背負っている。

 それは人如きが裁けるものではない。

 そんな事も分からないのか。愚か者が」

「はぁ!?」

「……冗談だ。だが、目的は簡潔に言ってくれ。僕達も暇じゃないんだ」

「コレの事よ!」

 うん? あれは……

「…………CCDカメラと小型集音マイク」

 非常に見覚えがある。あれは……例の盗撮犯のものか?

「……で、それはどこにあったんだ?」

「白々しい。女子風呂の脱衣所よ」

 女子風呂の脱衣所か。なるほどなるほど……って、

「何だと!?」

「え!? それって盗撮じゃないか! 一体誰がそんなことを」

「とぼけないで。あなたたち以外に誰が

「黙れ。いま考えてるんだ。

 集中の邪魔だからとっとと出てけ」

「なんですって!?」

 

 犯人は女子。これは10割に近い精度で確定している。

 その『女子』が女子風呂に仕掛けた?

 男子に売るため? いやいや、客層は女子が中心だった。

 客に男子が居ないわけではないのかもしれないが、その少ない客の為に風呂場の盗撮まで行うのはリスクが高すぎる。

 となると、女子に売る為に仕掛けた?

 いやいやいやいや、女子の殆どはそんなもん要らないだろう。事実、今こうやって殴り込みに来てるわけだし。

 客の為ではないとなると……自分で使う為?

 盗撮映像をばら撒くと言えば大抵の女子は屈服するだろう。

 う~ん……何か違う気がするな。

 そもそもこの盗撮犯は現状でかなり稼げている。わざわざ顧客と仲が悪くなるような事をするメリットが見当たらない。

 他に考えられるのは……自分で鑑賞する?

 …………………………アレ? これ、当たってないか?

 

「一応目星はついたか……後は証拠が必要だな」

「ちょっと! 聞いてるの!?」

「あれ? まだ居たのか。で、えっと……何だっけ?」

「アンタは私を怒らせたいの? どうなの!?」

侵入者(お前ら)の感情なんて心の底から興味が無いが……言いたいことは終わりか?」

「ふざけないで! 盗撮はアンタ達がやったんでしょう!?」

「ああ、そういえばそんな事を言ってたな。

 んん~っと、僕達はやってないぞ。

 これで満足か?」

「アンタ達じゃないなら誰がやったって言うの!!」

「そんな事知る訳が無いだろうが」

「じゃあアンタ達しか居ないじゃない!」

 あまりに雑な論証だな。とてもじゃないがCクラス代表とは思えない。

「まさか、皆さんが本当にこんなことをしていたなんて……」

 そしてこっちは本当に学年トップクラスの学力の持ち主なのか?

「吉井……信じていたのに、どうしてこんなことを……」

「島田さん。信じていたなら拷問道具は用意してこないよね?」

 交渉や尋問なら拷問道具をチラつかせるのは駆け引きとしてはアリだが、明久の言う通り、信じていたなら必要ないな。

「姫路さん、違うんだ! 本当に僕らは……

「もう怒りました! よりによってお夕飯を欲張って食べちゃった時に覗きをしようなんて……!

 い、いつもはもう少しその、スリムなんですからね!?」

 たった一日多く食べたくらいじゃ体型は変わらんと思うが?

「う、ウチだっていつもはもう少し胸が大きいんだからね!?」

 嘘だな。

 っていうか貴様等が気にするのはそこなのか?

「それはウソ」

「皆、やっておしまい」

「ご、ごめんなさい! つい咄嗟に本音が!」

 素早い動きで女子どもが囲んできて僕達を石畳の上に……ってちょっと待て。

「ストップだ!」

 盗撮犯も気になるが、今はこっちが優先だ。

「……お前ら。今ならまだ()()で済まされるぞ。

 僕達を座らせ、その上に重石を乗せた時点で、お前らは一線を越える。

 覚悟はいいんだな?」

「どういう意味よ?」

「そういう意味だよ」

「やってしまいなさい!!」

 そうか……そうするのか。

 ん? そういえば雄二は……

『雄二、来なさい』

『しょ、翔子待て! 髪を引っ張るぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!』

 ……なるほどね。

 

「さて。真実を認めるまでたっぷりと可愛がってあげるからね?」

 

 そして石畳に座らせられ、

 

 重石が、乗せられる。

 

 駆け引きでも何でもなく、ただの拷問だな。

 

 だったら、お前たちは今から……

 

 ……僕の『敵』だ。


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