バカ達と双子と学園生活   作:天星

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01 閑話

  ……合宿一日目 午前……

 

 案内すら無しというあまりに酷い待遇だったが、逆に言えば自由に行動が出来ると開き直った。

 ちなみにAクラスは2~4人毎にリムジンが手配されるらしい。金の使い所を全力で間違ってる気がする。

 そして現在、合宿所近くの駅へと向かう電車の中。

 ガタンゴトンという音と供に景色が流れていく。

 …………………………

 

 

 

 

「暇だ!!」

「うおっ、何だいきなり?」

「暇過ぎるぞ!! あと二時間くらいこうして揺られてるんだよな!?」

 普通ならゲームとかをやって時間を潰せるのだが、持ってったら多分没収される。

 自分から提出して教師に預かってもらうという事も可能ではあったかもしれないが……そもそもこんなに暇になるなんて考えて無かった。

「お、お前が持ってきたっていうトランプでもやるか?」

「揺れるし、テーブル無いし、無理」

「そ、そうか……」

 何か……何か無いのか!!

「……ん? 島田。それは何だ?」

「え? ああこれ?

 100均で売ってた心理テストの本。やってみる?」

「その程度で僕が測れるかは疑問だが、まあやってみて損は無いな」

「お前そんなキャラだっけ!?」

「それより、どうせだから全員でやってみないか?

 他人と比較した方が楽しいだろう」

「俺は構わないが……」

「うん、僕もやってみようかな」

「ワシも構わんぞ」

「それじゃあ私も……」

「……あれ? 康太は?」

「何か寝てるみたいだね」

「そうか……それじゃ、出題頼む」

「え~っと……

 

 『1から10の数字で、今あなたが思い浮かべた数字を順番に2つ挙げてください』

 

 だって。どう?」

 1から10で二つか……

「俺は5・6だな」

「ワシは2・7じゃな」

「僕は1・4かな」

「私は3・9です」

「……5√3と2π」

「ちょっと!?」

「何か問題でも?」

「大有りよ!!」

「フッ、考えてもみろ。今の出題に整数や自然数で答えなさいという記述は無い。

 だったらこれもまた正しい回答だ!!」

「強引過ぎでしょ!!」

 ちなみにそれぞれ約8.66と約6.28であり、1から10の範囲に収まっている。

「仕方ない。四捨五入して9と6だ」

「9・6ね。えっと……

 『最初に思い浮かべた数字はいつもまわりに見せているあなたの顔を表します』

 だって。

 それぞれ……

  クールでシニカル(坂本)

  落ち着いた常識人(木下)

  死になさい(吉井)

  温厚で慎重(瑞希)

  意志の強い人(空凪)」

 一つだけおかしな内容があった気がするんだが?

 

「それで、

 『次に思い浮かべた数字はあなたがあまり見せない本当の顔』だって。

 それぞれ……

  公平で優しい人(坂本)

  色香の強い人(木下)

  惨たらしく死になさい(吉井)

  意志の強い人(瑞希)

  公平で優しい人(空凪)」

 ……なかなかユニークな心理テストだな。意外と楽しめそうだ。

 

 

  ………………

 

 

「…………(トントン)」

「ん? 康太、起きたか」

「…………空腹で起きた」

 時刻を確認すると確かにお昼時だ。

「確かに頃合いじゃの。そろそろ昼にせんか?」

「それもそうだね。あんまり遅くなると夕食が入らないし」

「あ、お昼ですね。それなら……」

 うん? 姫路(プラス)お昼。何かあったような……

「実はお弁当を作ってきたんです。良かったら……」

「ストップだ!!

 姫路、その弁当、味見はしたか?」

「は、はい! もちろんです!」

「…………………………

 念の為に毒味させてくれ」

「ど、毒味って……」

「以前の屋上での件は光から詳しく聞いた。

 自分の弁当で昏倒したと聞いたぞ」

「う、うぅ……」

「少しだけだ。失敬」

 適当なおかずを少しだけつまんで口に放り込む。

 う~~~む……?

 

「ど、どうですか……?」

「……薬品くさいな。何を入れた?」

「しょ、塩っぱさを出す為に塩酸を……」

「…………何故、塩を入れようとしない?」

 ほんの一つまみで十分のはずだが……」

「家に塩が無くて……」

「塩が無いのに何で塩酸があるんだ?」

「え?」

「……姫路、後で料理を一から叩き直してやる。覚悟しておけ」

 料理はあまり得意な方ではないが……短時間の集中講座くらいなら開ける。

「だ、大丈夫ですよ! 教えて貰わなくても!」

「そんな寝言をほざくのはその弁当を完食してからにしろ。

 但しゆっくりと食ってくれよ。蘇生するのは面倒だ」

「ちょっと! 流石に言い過ぎだよ!!」

「そんな事を言って、将来死人が出たとき後悔しないのか?

 いや、間違いなくするな。

 ここで黙ってても誰も幸せになれない」

「それでも……ちょっと酷すぎるよ」

「…………はぁ、確かにちょっと言い過ぎたか。

 姫路、改めて言うが、お前の味付けはいろんな意味で致命的だ」

「ちょっと!!」

「……だが、見た目だけは素晴らしい。

 それ以外を直しさえ出来れば完璧だ。

 だから頑張れよ」

「は、はいっ!」

 

 ……しかし、本当に味見したのか?

 味見をしてアレとなると、姫路の味覚はかなりヤバい事になるんだが…………


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