バカ達と双子と学園生活   作:天星

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05 撃破

「……そろそろキツいか?」

 

Fクラス 空凪剣 28点

 

 乱戦の中で流石にノーダメージで居るのは不可能だからな……

 可能ならフィールドの科目を変えたいのだが、これ以上教師が増えて戦線が拡大するとかなりヤバい事になる。

「隊長!! 副代表!! どうやら相手は数学の木内を連れ出したみたいだ!!」

「木内って言うと……」

「採点の速い先生だよ!!」

「そうそう、そうだった。畳み掛ける気か?」

 召喚獣の点数がテストの点数で決まる以上、教師が採点しなければならない。

 そしてある意味当然の事だが、教師によって採点スピードがかなり違うんだよ。

 件の木内先生は採点がかなり速い代わりに評価が辛いという性質の教師だ。

 で、現在化学で埋め尽くされている状態で数学の補充を準備しているという事は……立会いの数学教師がもう間もなく来るって事だよなぁ……

 何とかしないといけないんだけど……

「……よし、須川君」

「何だ?」

「偽情報を流して欲しいんだ。時間を稼ぐために」

 なるほど。明久にしては良い案だ。

「だったら代表にでも知恵を授けてもらうと良い。すぐに良い案をひねり出すだろう。

 頼んだぞ」

「了解!!」

 それじゃ、あっちはあっちに任せて、こちらはこちらで最善を尽くすか。

 

 

  ………………

 

 

『くっ、埒があかない!!』

『もう少し待ってろ!! 今数学の船越を呼んでいる!!』

 

 向こうの方でDクラスの連絡が聞こえる。

 かなりヤバいな……

 僕個人に関して言えば今直ぐにでも科目変更して欲しいんだけどね?

 地力で劣ってるFクラスに取っては戦線の拡大は命取り、そのまま部隊が全滅する可能性もある。

「くっ、このままじゃぁ……」

 って言うか明久、まだ戦ってなかったのかよ。さっさと戦えよ。

 

ピンポンパンポーン『連絡します』

 

 須川の声か。よろしく頼むぞ。

 

『船越先生、船越先生』

 

 そして対象はちょうど呼び出されている船越先生。

 流石は雄二の指示だ。ナイスタイミ

 

『吉井明久君と空凪剣君が体育館裏で待っています』

 

 ング…………はい?

 

『生徒と教師の垣根を越えた大事な話があるそうです』

 

 ………………えっと……

 

  船越先生 (女性)

 婚期を逃し、ついには単位を盾に生徒に交際を迫ったとか何とか……

 あくまで噂だが。

 

 ……僕の脳内辞書の情報から考察すると……

 ……うん、間違いなく体育館裏に行くね。

 そして何時間、下手すると数日単位で待つ可能性もある。

 でも、待たせる時間が長ければ長い程大変な事に…………

 相手は手段を選ばない人物だ。それはもうエラい事になる。

 

『隊長……副代表!! あんた、漢だよ!!』

『俺たちの為にここまでしてくれるなんて!!』

『お、おい聞いたかお前ら!! あいつら……死ぬ気で勝ちに来てるぞ!!』

『あんな覚悟を持った奴等に……勝てるのか……?』

『ば、バカな!! あいつら、命が惜しくは無いのか!?』

 

 ……あんな放送で戦術的にかなり良い影響が出てるみたいだ……

「……とりあえず、今のうちに少しでもダメージを与えておくか」

「………………」

「……ん? どうした明久?」

「…………す」

「す?」

「須川ぁぁぁぁああああ!!!!!!」

「フッ、まぁ落ち着けよ明久」

「何でさ!! っていうか何で剣はそんなに落ち着いていられるのさ!!」

「考えてもみろよ。須川……じゃない。雄二を始末するなんていつでも出来るだろ?」

「へ? 雄二?」

「そりゃそうだろ。僕達を売るような命令を出すのは僕達の代表くらいだろ?」

「雄二ぃぃぃぃいいいいいい!!!!!!」

 ……さて、どうしたもんかなぁ……?

 

 

  ………………

 

 

「とまぁこんな感じだ」

「ご苦労だった」

 その後、一時的に士気は上がったものの、流石にキツかったので補充してきた元先鋒部隊と交代してFクラスまで戻ってきた。

「ところで、明久はどうした?」

「…………さぁ?」

 家庭科室に寄ってたから、多分包丁でもパクってるんだろう。

 ……え? 止めないのかって?

 バカ言え。雄二の方が何百枚も上手に決まってるだろ。

「んじゃ、僕は体育館裏に行ってくる」

「おまっ!! 本当に行くのか!?」

「放置しても良いが、後々の戦略に悪影響が出るだろ?

 まぁ……何とかなるさ」

「…………頼んだぞ」

「了解」

 

  …………

 

「……遅れてすいませんね。船越先生」

「あ、空凪君♪ 話って何?」

 要するに、適当な話題を吹っ掛けて穏便にお帰り頂けば良いんだよな。

 上手くまとめるかどうかでその後の僕の学園生活が変わってくるが……

「……一つ、訊きたい事が御座いまして」

「あら? 何かしら?」

「単刀直入に言わせてもらいますが、

 貴女が単位を盾に生徒に交際を迫った……という噂が広がっています。

 ……事実ですか?」

「え!? そ、そんな噂が……?」

 この反応は……どっちだ?

 黒なら録音機を学園長に渡してチェックメイト。

 白なら、冤罪が流布している事を教える訳だから、相手に取ってかなり重要な事だ。

 誤解させるような言い方をした分くらいは釣り合うだろう。そうであってほしい!

「……で、どうなんですか?」

「そんな事する訳ないでしょう。

 確かに、愛さえあれば立場なんて関係無い!!

 とは思ってるけどね」

 白……かな。

 ややアブない発言はしているが……とりあえずは問題無い。

 ……と言うか、生徒の噂を把握出来てないってどうなんだ……?

「そうですか。良かった」

「そ、それだけ……かしら?」

「ええ。お時間を頂いてすいませんね」

「う、うん……」

「では、失礼します」

「あ、空凪君、良かったら私と付き合っ……」

「却下です!!」

 前言撤回だ!! とりあえず逃げるぞ!!

 

 

  ………………

 

 

 ふぅ、ここまで来れば安心……か?

 現在の時刻はだいたい各クラスの授業が終わり、下校し始める頃だ。

 それで当然、廊下には試召戦争と関係ない生徒で溢れている。

 

『人ごみを上手く使って奇襲するんだ!!』

『全員固まって動け!! Fクラスが襲ってくるぞ!!』

 

 そして我々Fクラスは人ごみを生かしたゲリラ戦というなんとも姑息な手段を用いている。

 僕も適当、もといテキトーに参戦すべきなんだが、とりあえず状況を確認するぞ。

 現在のフィールドは現代国語。点数は十分あるからどうとでもなるな。

 ……あ、明久だ。右手に包丁、左手の袋は……ブラックジャックか何かか?

 んでもって……あそこに居るのは平賀(敵将)か。

 この状況なら奇襲を仕掛ければ……

 あ、明久が仕掛けていった。ちゃんと戦争中だって覚えてたんだな。

 まぁ、当然の如く近衛部隊に阻まれたが、どうやらチェックメイトのようだ。

 

試獣召喚(サモン)!!」

 

[フィールド:現代国語]

Dクラス 平賀源二 129点

    VS

Fクラス 姫路瑞希 339点

 

 これにて、Fクラスの勝利……と。


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