バカ達と双子と学園生活   作:天星

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心の行方

 私が見ているのは、一枚の写真の裏。

 そこにはこう書かれている。

 

 

  多分、光の事だからウェディング体験の最中に告白するんだろうな。

  もし……まぁ十中八九そうなるだろうが、そうなったら秀吉に電話をかけてくれ。

  予想外の告白に慌てふためくあいつが容易に想像できるからな。

  まずは落ち着かせて、その後伝言を伝えてくれ。

 

  『嘘偽りの無い本音を見せてみろ』

 

  あとは、お前からも何か言ってやってくれ。

 

  これはただのお願いだから、やりたくなかったらやらなくても良い。

  秀吉が自力で答えられるならそれでも良い。

 

 

 そして、二枚目の裏を見る。

 

 

  あと、この伝言はお前に対してのものでもある。

  自分を偽るなよ? 後悔する事になるから。

 

 

 そう言われてもなぁ……

 自分の本音なんて、意外と分からないものだ。

 

 『私は吉井君に感謝している』

 

 これは間違いなく本音だ。

 では、

 

 『私が吉井君が好きだ』

 

 …………どうだろう?

 即座に否定出来ないという事は正しいのか? それとも……

 

 

「スイませン! 空凪の妹サンの方はいますカ?」

「え? もうすぐ戻ってきますけど、どうかしましたか?」

「空凪の兄ノ方が倒れマシた!」

「えっ!?」

 あ、あの超能力者じみた剣君が!?

「ただいま~って、どったの? 何かあった?」

「アナタのお兄さんガ、倒れまシタ!!」

「それは……面白い冗談ね。

 あいつがそう簡単に倒れる訳が無い」

 その反応はどうなの!?

「冗談ではアリまセン! ハヤく医療ルームへ!」

「……どうやら本当みたいね。

 あいつがそう簡単にくたばるとは思えないけど……」

「私も行く! こんな時に呑気にウェディング体験なんてやってる場合じゃない!」

「……まあいいけど。そこのスタッフさん、男子の方にも医療ルームに来るように伝えて下さい。

 それじゃ、行こう!」

「光、着替えなくていいの?」

「…………先行ってて」

 

 

  ……数分後 医療ルーム前……

 

 

「とりあえず、命に別状は無いのね?」

「ハイ、命に別状ハありまセン。

 ただ、腕が折れテいますネ」

「あの兄さんが骨折って……隕石でも落ちたのかしら?」

 それなら腕だけじゃ済まないと思うけど……?

「直接聞いた方が早そうね。入れて」

「だめデース。空凪サンが、坂本夫妻と三人だけで話したいとの事デース」

 一体いつからあの二人は夫婦になったんだろうか?

「医者を追い出せるくらいには元気なのじゃな。良かったわい」

 確かに、秀吉の言う通り。殆ど心配要らないみたいね。

「剣なら大丈夫だよ。ギプス無しで平然としてても不思議じゃないくらいだからね」

 よ、吉井くん……流石にそれは無いんじゃない……?

「へ~、兄さんの事よく分かってるね。たとえ医者に無理矢理ギプスを付けさせられても自力で破壊するでしょうね」

 じょ、冗談よね……?

 

 

『ドグシャァァァアア!!』

 

 

「「「「!!??」」」」

 な、何今の音!!

 

ガラッ

 

「ん? お前らどうしたんだこんな所で」

「剣の様子を見にきたんだけど……

 雄二、さっきの音は何?」

「……強いて言うなら……天罰じゃないか?」

「……(コクコク)」

 代表が当然のように頷くから突っ込めないっ!!

「それじゃあ俺たちは帰るから、また学校でな」

 そう言い残して、坂本君たちは去って行った。

 

 

 ……あ、剣君は大丈夫かな?

 

ガラッ

 

「ふぅ……死ぬかと思ったぁ……」

「つ、剣っ!! 大丈夫なの!?」

「一瞬脳裏に綺麗な川がよぎった気がしたが、気のせいだ」

「それ大丈夫じゃないヤツだよね!?」

「と言うか剣君、腕を折ったと聞いたのだけど……」

「ああ。そうだが?」

「…………ギプスは?」

「こんなんテーピングで十分だ。医者のヤローがうるさかったがな」

「いやそこは医者に従いなさいよ!!」

「そんな事より、ウェディング体験は終わったのか?」

 どうやら剣君の中では腕よりもウェディング体験の方が優先順位が上らしい……

「私の方はバッチリよ」

「ん、そうか。

 じゃあ秀吉」

「う、うむ?」

「……光を、頼んだぞ」

「……うむ!」

「そしてお前たちのウェディング体験は……

 ……また今度にするか?」

「え?」

「無理に今やる必要は無い。

 今すぐに結婚式を挙げたいなら止めはしないが」

「な、何か言い方が生々しいような……」

「で、どうしたいんだ?」

「………………

 じゃあ、また今度にしとくわ」

「そうか。じゃあ係員には僕から言っておくから、後は2人で適当に楽しめ」

「……うん。

 それじゃあ……またね」

 

 

 

 

 

 

  ……帰りのバスにて……

 

 

「あ、そういえばこれ、預かってた」

「ああ、写真か。ずいぶん分厚いね……」

「1グロスも頼むからでしょ……」

「……あれ? 1グロス頼んだはずなのに、1ダースくらいある」

「…………え?」

「1枚につき軽く100枚はあるよ。剣が間違えるなんて珍しいなぁ」

「……えっと、吉井君? 1グロスって何枚?」

「え? 12枚でしょ?」

「……1ダースは?」

「12グロスだよね」

「…………」

 剣君の予想は正しかったのね……

 

 

 

「ところで、今日は楽しかった?」

「うん! 誘ってくれてありがとね」

「また、こういう機会があったら誘って良い?」

「もちろんだよ!!」

「じゃあまた、機会があったらね」


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