バカ達と双子と学園生活   作:天星

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07 選抜

 やたらと豪華な昼食も終え、しばらくするとアナウンスが流れてきた。

 

『皆様、本日はこの如月ハイランドのプレオープンイベントにお集まり頂きありがとうございます』

 

「ん? なんだろう?」

「さっき剣君が言ってたイベントかしらね?」

 

『これより、本日の目玉イベント、『如月ハイランドウェディング体験争奪クイズ大会』を開始したいとおもいま~す!!』

 

「……え? ウェディング体験……?」

 ウェディングって言うと…あのウェディングよね……?

 

『それでは、クイズ大会への参加を希望する方はこちらの列にお並び下さい』

 

「え、えっと……どうする……?」

「え、えっと……」

「参加すりゃいいじゃん。タダだし」

 タダより高いものは無いとも言うけど?

「それとも何か?

 お前たちは勝ち取る自信が無いのか?

 そうかそうか、だったら仕方ないなぁ」

「……剣君、私がそんな安っぽい挑発に乗ると思ったら大間違いよ」

「……チッ、光のようにはいかんか」

「光がこんな手に乗るとも思えないんだけど……?」

「少々言葉を付け足したがだいたいあんな感じで引っかかってくれたぞ」

 というか、光も参加したの……?

「まあいい。なら手を変えるまでだ。

 明久、さっきの写真の焼き増しだが……

 ……出場しないなら有料な」

「さぁ木下さん!! 一緒に行こう!!」

「え? ちょ、待っ!!」

 

 ……こうして、私たちは無理やり(?)参加させられる事になった……

 

 

  ………………

 

 

 参加したのは8組のペア。

 あれ? あそこに居るのってもしかして代表? そういえば代表もチケットを貰ってたわね。

『え~、それではルールを説明致します』

 いつの間にか剣くんが司会役をやっていた。

 もうこれは突っ込んだら負けなのかもしれない。

『今から問題を出します。

 皆さんはお手元のフリップボードに答えを書いて頂きます。

 見事正解した方は1点加算されます。

 これを5問繰り返し、最終的に最もポイントが高かったペアの勝利です。

 なお、同率1位を避ける為、『最も正解に近い答え』のみ正解とします。

 中には無回答が正解……なんていう捻くれた問題もありますから、気をつけて下さい。フフフ。

 以上です。それでは始めます。

 それでは第1問!』

 じゃあ、まずは1点を……

『ヨーロッパの首都は?』

 いきなり度肝を抜かれた。

「(……ねえ木下さん。

 ヨーロッパっていう新しい国ができたの……?)」

「(その発想は無かったけど……私が知る限りではそんな国は無いわ)」

「(……だよね~)」

 とりあえず無回答にしておく。

 

『……時間です。それでは答えを発表して下さい』

 事前の警告もあったせいか、殆どが『無回答』。チンピラっぽいカップルが何故か『ドイツ』。

 そして一組だけ……

『なるほど。綺麗に分かれましたね。

 無回答でも正解のつもりでしたが……想定した模範回答をきっちり叩き出すとは。

 坂本・霧島コンビにプラス1点です!!』

「(……うわぁ……あれは予想外だったわ)」

「(えっと…あれ? 雄二!?)」

「(今気付いたの?)」

「(うん……雄二、何で、ここに!?)」

「(……伝わってないみたいね)」

 サインだから、当然相手に見えないと伝わらない。

『まあ、モスクワが抜けていますが…アジアかヨーロッパか微妙なのでよしとしましょう。

 そして…一つ訊きたいのですが…

 首都を訊かれて何故ドイツになるんですか』

『あン? ヨーロッパの首都っつったらドイツに決まってんだろ!!』

『そーよそーよ!!』

 …………何故?

 

 

『では、次の問題です。

 さる筋では有名なクソゲー、『ファイナルクエスト~国王最後の聖戦~』ですが、最初のチュートリアルバトルからいきなりラストバトルに突入できる裏技が存在します。

 その方法とは?』

 正直、私にゲームの事なんて訊かれてもさっぱり分からない。

「(吉井君、分かる?)」

「(えっと確か、そんな裏技があったような……無かったような……)」

「(どっちよ!!)」

「(えっと……あ、思い出した!!

 たしかこうしてああして……できたよ!!)」

「(凄いじゃない吉井君!! ……ん?)」

 

 『ヒロインに『捕食』コマンドを使った後、ダレイオス三世と勇者アークに対して『お前はもう死んでいる』を使う』

 

「(……えっと、これ、ウケ狙いとかじゃ……ないわよね?)」

「(うん……この『捕食』コマンドが無駄に生々しい事からクソゲー扱いされてるんだよ……)」

「(…………そのゲームだけは絶対やらないと思うわ)」

「(その方が良いよ……)」

 

『……時間です。答えをどうぞ』

 殆どが無回答。

 そして私たちだけが回答した。

「(何で、こんな、ところに!?)」

「(それは、こっちの、台詞だ!!)」

『はい。正解者は1組です。

 補足しますと、製作者によれば

 

『おかしな裏技を作ってはみたけど、あっさりラストバトルに入れると色々マズいので、ビギナーなら絶対に選ばないような組み合わせにした』

 

 とのことです。

 まあ、味方、しかもヒロインに対して『捕食』なんてコマンドはそうそう使わないし、明らかにヤバげな技を味方に使うなんて事はまずしないでしょうからね……』

「(っていうか、何で吉井君は知ってたの……?)」

「(前に間違えてヒロインを捕食しちゃった事があってね。

 とりあえずゲームオーバーにしてやり直そうとしたらいきなりラスボスになってビックリしたよ!!)」

 間違って食べられるヒロインって……

 

 

『では第3問。

 先ほどの食事でも出てきましたが……唐揚げと豚カツ。

 仮に一つずつ買うと合計972円とします。

 そして二つの価格差は127円とします。

 安い方の価格はいくらでしょうか?』

 これは、よくある引っ掛け問題をさらにややこしくした形ね。

「(……ん? 問題として成り立ってない…?)」

「(え? そうなの??)」

 ……どうしましょう……?

 ……とりあえず答えを書いてみる『422.5円』

 

『……時間です。それでは答えを』

 どうなった?

 『359』が4組。

 『無回答』が2組。

 『422.5円』が2組。

『そうなりましたかぁ。

 正解者は……

 

 4組ですね』

「(え!?)」

「(えっと……正解は359ってこと……?)」

「(そんなはずはない!!)」

『分かる人はすぐに分かったと思いますが、この問題には正答が2つあります。

 小数点以下の円を認めて強引な値段を付けるか、それとも出題ミスとして無回答にするか。

 この選抜クイズでは少ない方どちらかを正解にしようと思ったのですが……同じになってしまったので4ペアとも正解にします』

「(そ、そういう事……ふぅ……)」

「(えっと……正解……でいいのかな?)」

「(そうらしいわね……)」

 なんていやらしい問題を出して来るのよ……

 今のところ代表と同率一位だけど……頑張らないと。

 

 

『では4問目。

 え~このコインを見てください』

 剣が取り出したのは見たところ何の変哲も無い100円玉。

『よ~く見て下さいね』

 そう言いながらくるくると100円玉を回す。

『ではこれからこれを5回投げます。

 その時、裏表が『表、裏、裏、裏、表』となる確率は何分の1でしょうか?』

「(単純に考えて、2 (5)で1/32よね……)」

「(え、えっとソウダネ!)」

「(……分からないならそう言っていいのよ?)」

「(うっ、ごめんなさい……)」

 急に問題の難易度が下がった? 今までがおかしかったのかもしれなけど……

 とりあえず1/32と書く。

 

『時間です。回答を』

 『1/32』または『32』と回答したのが3ペア。

 様々な回答をしているのが4ペア。

 そして……

「危なかったぁ……」

 

 『∞』

 

「(あ、アレ? 光……?)」

 何で秀吉と組んでるの……?

「正解は……

 1ペアです」

「!?」

『実はこのコイン……偽物です。

 そして、両面を加工してありまして……両方とも表です』

「(なっ!! そんなのっ!!)

『そして問いは『何分の1か』なので、確率ゼロを示す分数は1/∞。

 よって答えは『∞』です』

 ……確かによく見て下さいとは言われていたけど……

 

 

『今のところ同率一位が3ペアですね。

 それでは最後の問題です!!』

 これで最後……頑張らなきゃ。

『では……

 

ピーン パシッ

 

 表か裏か』

「(…………え?)」

 ここに来て…運試し!?

「(う~ん……表……じゃないような……)」

「(どうして?)」

「(さっきが両方とも表だったから、今回は裏かなって)」

「(そういえばそもそもあのコインって……)」

「(さっき使ったコインじゃないのは確かだよ。すり替えるの見てたから)」

「(う~ん……)」

 さっき表だったから今回は裏……

 だけどその裏をかいて表……

「(分かんないけど……これでっ!!)」

 

  『表』

 

「(なんで表?)」

「(剣君だったら、吉井君の裏をかいてるかもしれないと思って)」

「(なるほど~)」

「(間違ったらゴメンね)」

 

『時間です。それでは答えを発表して下さい』

 2ペアの答えは……光と秀吉が『表』、坂本君と代表が『裏』

 果たして……

『さて、正解は……『裏』です!!』

 ……外したか

『おめでとうございます。

 ウェディング体験を見事勝ち取ったのは坂本・霧島ペアです!!

 お2人はそのまま準備があるので、係員の指示に従って下さい。

 今回残念ながら勝ち取れなかった方々も参加賞が御座いますので、そのままお待ち下さい』

「ゴメンね吉井君。失敗しちゃった」

「ううん、いいんだよ。運が悪かっただけだよ」

 

 

  …………

 

 

「残念だったなお前ら」

「っていうかあの最後の問題は何だったのよ……」

「ああ。実は八百長だ」

「やお……ちょう?」

「要はイカサマ。坂本・霧島ペアの答えに合わせて正解を変えた」

「どういうこと!?」

「仕組みは簡単。コインをあらかじめ二つ用意しておき、雄二が答えた方を正解として見せた」

「そうじゃなくて!!」

 それって、最初っから勝てなかったって事じゃないの!!

「出来レースを組んだのは悪かったな。

 だが、安心しろ。誰も1位のみ権利を獲得できるとは言ってない」

「…………え?」

「1位のペアは公開処け……ゴホン、観客がつくが、2位3位の人も別の会場で体験だけはできる。

 ……まぁ、結構手抜きだが」

「今公開処刑って言おうとしてたような……」

「気のせいだ」

 絶対気のせいじゃ無い。

「まあそういう訳だから、あっちのスタッフに付いて行ってくれ」

「あれ? 剣はどうするの?」

「メインイベントの方で色々やるからな。そっちはそっちで楽しんで来い」

 って言うかそもそもウェディング体験なんて要らないんだけど……

 まあ、折角の機会だし、やってみましょうか。


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