バカ達と双子と学園生活   作:天星

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06 遊園地

「ふ~、やっと着いたね」

「ええ、そうね」

 公共機関を乗り継いで2時間。

 そうそう来る事は無いだろうから、今日は目一杯楽しまなきゃね。

 

「いらっしゃいマセ! 如月ハイランドへようこソ!

 本日はプレオープンなのデスが、チケットはお持ちですカ?」

「はい、お願いします」

「拝見しマース。

 ……ハイ、ダイじょうブデース。それでハ、お楽しミ下サイ」

 随分とキツい訛りね……キャラ作りか何かかしら?

 

 

 ……あれ? 何か見覚えのある人影が……

「うっ、もう来たのかお前ら」

「あれ? 剣? どうしてここに?」

「一言で言うとここで一日だけアルバイトをやってる。

 しっかしお前ら予想より早いな。

 さては2本早いバスに乗ったな?」

「まるで私たちが来ない方が良かった言い方だったわね……」

「いや~、ついさっき肉体労働しててね。単純に休みたかっただけだ。他意は無い。

 そんな事より、僕はガイドをしてる。いつでも連絡してくれ」

「ふ~ん、じゃあ、お勧めのアトラクションとかある?」

「ん~、あるぞ。

 あっちのカップル用ジェットコースターとか、

 そっちのカップル用メリーゴーランドとか、

 向こうのカップル用観覧車とか……」

「ちょっと待ちなさい。何で勧めるものが全部カップル用なの!?」

「だって、一人で乗ってみたら普通に良かったんだもん」

「それ、カップル用って付ける意味あるの……?」

「行けば分かる。カップル用と名付けるのに相応しいアトラクションだ」

 

 何その不気味なアトラクション……

 まあでも、一人でもちゃんと楽しめるみたいだし……大丈夫よね?

 

「……それじゃあ行ってみましょうか。吉井君は何が良い?」

「それじゃあ……ジェットコースター?」

「じゃあそうしましょう」

「それでは、お楽しみ下さい」

 

 

 

   ……そして数分後……

 

 

 

 ……まず、乗る前に製作者の正気を疑った。

 そして実際に乗った(乗せられた)らその疑惑は確信に変わった。

「え、えっと……その……木下さん大丈夫……?」

「………………」

「お客様~、お楽しみ頂けましたでしょうか♪」

「誰よあんな代物作ったの!? 頭のネジが2~3本ぶっ飛んでるんじゃない!?」

 コースが複雑だったとか、そういう事ではない。

 そこらの遊園地より多少は凄かったかもしれないけど……

 問題は、シートにあった。

 安全バーが、二人で一つなのだ。

 つまり、一緒に乗った人と密着しながらガックガック揺さぶられるわけで……

 ……っていうか、安全基準とかその辺は大丈夫なのかしら……?

「クックックッ、見てて飽きないなぁ、お前たちは」

 コイツ……いつか女子とこのジェットコースターに乗せてやる……

「で、お客様方、まだカップル用アトラクションは残っておりますが、いかがなさいますか?」

「乗るわけ無いでしょうが!! こんな狂った乗り物!!」

「そうだよ剣!! 木下さんが可哀想じゃないか!!」

「……一番可哀想なのはお前の発言だ」

「…………うん」

 な、なんだか凄くいたたまれない雰囲気に……

 吉井君へのお礼の為に来てるはずなんだけど……

「……吉井君、私が可哀想なんて事はないから、一緒に行きましょう」

「え? でも……」

「それとも、乗りたくないの?」

「え、いや、そういう訳じゃないけど……」

「それなら、行きましょう?」

「……うん、ありがとね!」

 

 

   ……更に数分後……

 

 

「よう、おつかれさん二人共。

 当施設のアトラクションはお楽しみ頂けたでしょうか?」

「え、ええ……まぁ……ね」

 楽しいかどうかはともかく、心臓に非常に悪い事は分かった。

「あ、そうそう、写真も撮っておいたぞ」

「へ? しゃ、写真!?

 ちょっと見せなさい!!」

 剣から写真の束(100枚以上はある……?)を奪い取る。

「………………」

「どうですかお客様、ご感想は」

 コイツは私を悶絶死させる気なの!? 一体どうなの!!

「……剣」

「ん? どうした?」

「……これ、1グロスほど貰える?」

「ちょ、吉井君!? こ、こんな恥ずかしい写真を!?」

 っていうか、グロスって……144枚も何に使うの……?

「だって、どの木下さんも可愛いじゃないか!」

「か、可愛いって!! もう!!」

 吉井君は無自覚にこういう事を言っているんだろうか?

「OK。タダでくれてやる」

「ほ、本当に!? 本当に貰って良いの!?」

「ああ。ただ、グロスはちょっと待ってくれ。

 せいぜいダースだと思ってた。

 僕の予測もまだまだだな……」

 いや、ダース()を予測する時点で十分凄いと思うけど……

 

 

「あ、そうそう。もう少ししたら昼食の時間だ。

 あっちのレストランでイベントをやるから、行くといい」

「そうなんだ。ありがとう。じゃあ行ってみようか」

「ええ。行ってみましょうか」


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