バカ達と双子と学園生活   作:天星

53 / 243
理屈と心と

「お前はアホか? アホなのか!? アホなんだな!?」

「雄二、そんな言わなくても分かる」

 

 ウェディング体験が終わった後、俺たちは真っ先に医療ルームとやらに駆けつけた。

 

「……雄二、怪我人をいじめちゃダメ」

「そーだぞー雄二」

「自分で言うなよ!!」

「まあ安心しろ。怪我した所で馬鹿正直に受けたわけじゃない。

 ちょっとズラして受けた」

「そういう問題じゃねぇぇぇえええええ!!!!」

 

 こいつには人をおちょくって楽しむ趣味でも……あるのか。

 

「しかし何でまたぶっ倒れたんだ?

 自分から倒れてたように見えたんだが……」

「ああ、ちょっと目測を誤って頭をぶつけただけだ。大した問題じゃない」

「お前には自分の体を軽視する悪癖でもあるのか!?」

「はっはっはっ、何を今更」

 

 こいつ、一発ぶん殴ったら直るかな?

 

「ほら、隻腕の副代表とか、カッコいいだろ?」

「テメェはいつから中二病になったんだ」

「そんな事より、お前ら二人は上手く行ったみたいだな。

 体を張った甲斐があったというものだ」

「お前の目的は結局何なんだよ……」

「今回の件でのお前たちに対する目標は二つだった。

 一つ、霧島翔子を一度『爆破』しておく。

 二つ、坂本雄二に『霧島翔子』と『坂本雄二』を認めさせる。

 お前たちはお互いに問題を抱えてたからな。

 いっぺんに解決出来て良かった」

「俺が訊いてんのは目的じゃなくて動機だよ。

 お前は何のためにここまでやらかしたんだ」

「そんなもん、決まってるだろ」

 

 一拍置いて、剣が語る。

 

「イチャイチャしてるカップルを見てニヤニヤしたかったからだ!!」

 

 ああ、そうだったなぁ……

 こいつは『面白そうだから』で命を張るような奴だったなぁ……

 

「一応訊くが……それ以外の理由は?」

「えっと……殺人事件が身の回りで起こるのが嫌だったから?」

「…………」

 

 こいつの本心はたまに推し量れない事がある。

 この台詞が言葉通りの意味なのか、俺を気遣った事を遠回しに告げてるのか。

 

「動機なんて訊いたってしょうがないだろ。

 人の行動理由なんて後から簡単にねじ曲がる。行動と結果が全てだ。

 その行動から生まれた印象だけは真実だろうがな」

 

 やたらとややこしく言ってるが……要は『やりたいからやった』って事なんだろうな。

 なるほどなるほど。

 

「ははっ、そうかそうか。それじゃあ……

 

 ……一発殴らせろ!!」

「え? 今終わる流れじゃなかった?

 ちょっと!? マジで!? 確かに後でとは言ったけどさ! ベッドに横たわってる怪我人に対して殴るの!?

 ちょ、待っ!!

 

ドグシャァァァアア!!

 

 ……人体から響いてはいけない音がした気がするが、あいつなら大丈夫だ。多分。

 

「それじゃあ翔子、行こうか」

「……うん」

 

 

 

  ……そして、帰りのバスの中で……

 

 

「……ねぇ雄二」

「どうした?」

「……また、来たいね」

「……ま、そうだな。

 今度はまともに楽しめるといいな」

「うん!」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。