「お前はアホか? アホなのか!? アホなんだな!?」
「雄二、そんな言わなくても分かる」
ウェディング体験が終わった後、俺たちは真っ先に医療ルームとやらに駆けつけた。
「……雄二、怪我人をいじめちゃダメ」
「そーだぞー雄二」
「自分で言うなよ!!」
「まあ安心しろ。怪我した所で馬鹿正直に受けたわけじゃない。
ちょっとズラして受けた」
「そういう問題じゃねぇぇぇえええええ!!!!」
こいつには人をおちょくって楽しむ趣味でも……あるのか。
「しかし何でまたぶっ倒れたんだ?
自分から倒れてたように見えたんだが……」
「ああ、ちょっと目測を誤って頭をぶつけただけだ。大した問題じゃない」
「お前には自分の体を軽視する悪癖でもあるのか!?」
「はっはっはっ、何を今更」
こいつ、一発ぶん殴ったら直るかな?
「ほら、隻腕の副代表とか、カッコいいだろ?」
「テメェはいつから中二病になったんだ」
「そんな事より、お前ら二人は上手く行ったみたいだな。
体を張った甲斐があったというものだ」
「お前の目的は結局何なんだよ……」
「今回の件でのお前たちに対する目標は二つだった。
一つ、霧島翔子を一度『爆破』しておく。
二つ、坂本雄二に『霧島翔子』と『坂本雄二』を認めさせる。
お前たちはお互いに問題を抱えてたからな。
いっぺんに解決出来て良かった」
「俺が訊いてんのは目的じゃなくて動機だよ。
お前は何のためにここまでやらかしたんだ」
「そんなもん、決まってるだろ」
一拍置いて、剣が語る。
「イチャイチャしてるカップルを見てニヤニヤしたかったからだ!!」
ああ、そうだったなぁ……
こいつは『面白そうだから』で命を張るような奴だったなぁ……
「一応訊くが……それ以外の理由は?」
「えっと……殺人事件が身の回りで起こるのが嫌だったから?」
「…………」
こいつの本心はたまに推し量れない事がある。
この台詞が言葉通りの意味なのか、俺を気遣った事を遠回しに告げてるのか。
「動機なんて訊いたってしょうがないだろ。
人の行動理由なんて後から簡単にねじ曲がる。行動と結果が全てだ。
その行動から生まれた印象だけは真実だろうがな」
やたらとややこしく言ってるが……要は『やりたいからやった』って事なんだろうな。
なるほどなるほど。
「ははっ、そうかそうか。それじゃあ……
……一発殴らせろ!!」
「え? 今終わる流れじゃなかった?
ちょっと!? マジで!? 確かに後でとは言ったけどさ! ベッドに横たわってる怪我人に対して殴るの!?
ちょ、待っ!!
ドグシャァァァアア!!
……人体から響いてはいけない音がした気がするが、あいつなら大丈夫だ。多分。
「それじゃあ翔子、行こうか」
「……うん」
……そして、帰りのバスの中で……
「……ねぇ雄二」
「どうした?」
「……また、来たいね」
「……ま、そうだな。
今度はまともに楽しめるといいな」
「うん!」