バカ達と双子と学園生活   作:天星

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04 開戦

 昼食を終え、Dクラス戦が始まった。

 明久の昼食はいつも通り塩水と砂糖(本人曰くソルトウォーターと幸せの白い粉)だったが、まぁいつもの事なので心配は無いだろう。

 皆の様子を説明すると……

 秀吉は先鋒部隊長として真っ先に教室から出て行った。

 明久、島田は中堅部隊長、副隊長として少し遅れて出撃。今頃持ち場で待機しているだろう。

 雄二は代表らしく教卓の前で偉そうにふんぞり返っている。

 教卓に体重をかけすぎると壊れるぞと警告しておいたが……大丈夫かなぁ……?

 康太は…………気付いたら消えていたな。雄二の指示か何かだろう。

 んで、僕と姫路は……

 

「保体と数学以外の全科目をお願いします」

「私は現国からお願いします」

「分かりました。制限時間は1時間ですよ」

 

 そ、補充試験だ。

 試召戦争中は担当科目の先生が居れば任意のタイミングで補充試験を受ける事ができる。

 取った点数を加算……ではなく代入なので受ける前よりも減る事はあるが。

 セオリーとしては戦って点数(HP)が減ってきたら教室に退いて補充って感じだな。

 そういう訳で、開幕早々補充試験を受けるメリットは普通は無いが……今回は特別だ。

 途中退席で全科目0点の姫路は言わずもがな。

 僕に関してもある理由から殆どの科目が0点となっている。

 しっかし途中退席だけで全部0点ってどうなんだ? カンニングとかならまだしも。

 実戦的ではあるのかもしれんが……

 

「では、始め!!」

 

 

 ……30分後……

 

 

「……以上です」

「それでは採点します」

 今回、試験監督に呼んだのは学年主任の高橋先生。

 全科目の採点の権限を持つ数少ない教師だ。

 そして、その採点速度が恐ろしく速い事でも有名だ。

「……はい。どうぞ」

「ありがとうございます」

 オール100点だ。

 まぁ、この学園のテストは上限無しという恐るべき採点基準なのでこれでC~Dクラスレベルな訳だが。

「剣、終わったか?」

「ああ。行ってくる」

「おう、頼むぜ」

 30分でこれだけ出来るなら、一時間だと単純計算で1600(8科目×200)点取れる計算になるが……そうも行かない。

 僕は集中が30分程度しか保たない。

 幼い頃にある事故に遭ってから集中が極端になった。

 脳の障害か何かなんだろうな。きっと。

 それに加え、試験問題は点数が上がるにつれてどんどん難しくなっていく。

 1科目に絞っても400点が限界だった。

 今日はもう試験は受けられないだろう。慎重に行かねば。

「ん? 島田と……須川だったな。どうしたんだ?」

 教室に帰還してきたのは中堅部隊副隊長の島田と補佐官の須川。

 そして島田が須川に羽交い締めにされているんだが……一体何があったんだ……?

「離しなさい!! ウチはあいつを殺ゴフッ」

 暴れそうなので鳩尾に一発叩き込んで黙らせてみたが……

「これで良かったか?」

「ご苦労様です、副代表殿!!」

「ん、じゃあ行ってくる」

 副隊長が戻ってくるってのは相当だな……急がないと。

 

  …………

 

 さて、戦況は?

 現在、戦線に居る教師は二名。五十嵐先生と布施先生。どちらも化学教師。

 召喚獣は教師の立会いの下でしか召喚できないので、先生の人数=戦場の数となる。

 どちらの戦場もやや劣勢だが……強いて言うのであれば五十嵐先生の方が劣勢だろうか?

 ふむ……

「布施先生!! Fクラス空凪が参戦します!! 試獣召喚(サモン)!!」

 生憎と一人で劣勢を覆せるような能力は無い。

 兵力の分散を避けるという意味でも優勢な方に加勢する。

 二つの戦場の隙間を突いて突破……というものも考えたが、僕一人が突破した所で大した事は出来なかっただろう。

「剣っ!! 来てくれたんだね!!」

「待たせたな」

 多分明久の心の中は喜びでいっぱいだろう。

 ……自分の寿命が増えた~って。

「さぁ、掛かってこい!」

『来たぞ!! アイツだ!!』

『ブチ殺せぇ!!』

『ヒャッハァァァ!!!!』

 なんかサイコな奴が居たような……

 き、気のせいだと信じたい。

 そんなのは異端審問会(FFF団)で十分だ。

 

 [フィールド:化学]

 Fクラス 空凪剣 100点

    VS

 Dクラス     83点

         91点

         105点

 

 ん~、点数は互角ってとこか。

 まぁ問題ないな。

『くたばれぇぇぇぇ!!!!』

 3人が一斉に向かってきたら……意外と対処法はある。

 特に、相手が召喚獣の操作に慣れておらず、バラバラに向かってくるのであれば。

「こっちか」

 まず、包囲されてはたまらないので。ナイフを投げつけて軽く牽制する。

 その時に一体は残しておく。

 そしてその一体が近づいて来たら……

「そら、よっと!」

 遅れてる召喚獣の内、片方に向かってにフルパワーで吹っ飛ばす。

 これで2体の召喚獣を無力化できる。

『オラァァッッ!!』

「っ!!」

 最後に、遅れて来た一体の攻撃を正確に受け止める。

 鍔迫り合いの状態。これ大事ね。

 だって……

「諸君……殺れ」

 「「「イエッサー!!」」」

『なっ!? しまっ!!』

 

ザクッ

Dクラス   105→0点 Dead

 

 敵陣深くに切り込んだらそりゃそうなるって。

 僕は一人で戦ってる訳じゃないからな。

 鍔迫り合いになったら、僕自身も巻き込むくらいの勢いで殺れとあらかじめ伝えてある。

 これで相手は点数が0、つまり戦死状態になった訳だが……

 

「戦死者は補習!!」

 このように鉄人先生が飛んできて、戦争終了まで補習室で補習(軟禁状態)になる。

『い、嫌だ!! まだ、まだ死にたくないっ!!』

 いや、大げさ過ぎるだろ。

 確かに補習室の床は固いし、広さもFクラスレベルではあるが、授業内容自体はかなり分かり易い。

 肉体派な面が目立つ鉄人先生だが、学力はこの学校でも1、2を争うレベルだと思うぞ。

『や、山田が鉄人に連れていかれたぞ!!』

『そ、そんな!! 山田ぁぁぁぁああああ!!!!』

『い、嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダ!! アイツが逝ってしまう!!!!』

 ……そのはずなのに、なんでこんな恐慌状態に陥るんだ……?

 そして山田って名前だったのか。割と凄い人望だな。

「さて……喰らえっ!!」

 恐慌してる隙に更に敵の召喚獣をぶん殴る。

 

ボカッ、ドカッ

68→0点 Dead

76→0点 Dead

 

「お前らも補習だ!!」

 「「うわぁああああああぁぁぁぁぁ…………

 これで3キル。50名の内僅か6%に過ぎんが、犠牲無しでやれれば上出来だろう。

 ……まぁ、ノーダメージとは行かなかったが。

 

Fクラス 空凪剣 78点

 

 ま、これだけの事を無傷でやれるほど甘くは無いよな。

 補給無しなら同じ事を出来るのは3回……いや、せいぜい2回か。

 上手く立ち回らないとな。

「このまま一気に行くぞ!!」

「「「「「おおおおお!!!!」」」」」

「す、凄いね剣!!」

 そして明久、お前もさっさと参戦しろよ。


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