バカ達と双子と学園生活   作:天星

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04 責任

「あ、こんにちは代表」

「こんな所で奇遇じゃのう」

 康太が居る時点で居る事は予測していた。

 空凪妹に秀吉。

 居ること自体は予測していたが……普通の客のように話しかけてくるとは思わなかったな。

「お前らも仕掛け人か?」

「仕掛け人? 何の事じゃ?」

「私たちは普通にお客として入場しただけだけど?」

 そう言いながらチケットの半券を見せてくる。

 企業に協力してればそんなもんはいくらでも手に入ると思うが……ちょっとからかってやるか。

「仕掛け人ではないという事はお前たちはデートに来たのか」

「「ち、違うわよ(のじゃ)!!」」

「じゃあお前たちは一体何をしに来たんだ!?」

 てっきりデートの振りをすると思ったんだが……まさか図星だったのか?

「あ、ほ、ほら、天気も良いから散歩に……」

「文月学園の方から歩いてきたのか? よっぽど朝早くから散歩してたんだな」

 公共交通機関を利用した時の2~3倍では済まない時間が掛かるだろう。

「き、気がついたらここにおったのじゃ!!」

「もしそれが本当なら翔子の事を放っておいてお前を今すぐ病院に連れていかなきゃならないんだが?」

 逃げ出す口実が出来るなら好都合だが。

「……雄二、今日は私と一緒」

「いや、十中八九嘘だから病院には行かないぞ」

「そそそそんな事より!!

 あっちのお化け屋敷なんかお勧めよ!!」

 苦しい話題転換だな……

 なるほど、お化け屋敷か。

「よし翔子」

「……うん」

「お化け屋敷()()の所に行くぞ」

「……了解」

「ちょちょちょちょっと待ちなさい!!

 どうしてお勧めじゃない所に行くの!?」

「ロクでもない仕掛けがしてあるからに決まってるだろうが!!」

 空凪妹ってこんなんだったか? もっと手強いイメージがあったんだが……

「ほ、ほれ、何と言うか……お得じゃぞ!!」

「何がだ!!」

 こいつらはどうしても俺たちをお化け屋敷に連れていきたいらしいな。

 

プルルルル

 

「ん? 俺か。こんな時に何だ?」

 

from 空凪剣

 

「…………」ブツッ

 

プルルルル

 

「…………」ピッ

『何故切った!!』

「切るに決まってんだろうが!!」

 逆に切られないとでも思ったのか!?

『まあそんな事より、お化け屋敷に来てくれ』

「断る」

『お前が察してる通り、お化け屋敷にはとっておきの仕掛けがしてある。

 他の準備が疎かになってしまうくらいのとっておきのやつがな』

「何でそんな所に好き好んで行かなきゃならん」

『なぁ雄二……頼む』

「…………」

『頼む。お前の意志で、ここまで来てほしい』

 

ブツッ

 

「おいっ、剣?」

 あいつ……何を考えてる?

 手段を選ばなければ、無理矢理連れていく方法なんていくらでもあるはずだ。

 それなのに、真っ正面から頼み込んできた。

 …………………………

「……おいお前ら、あいつは一体何を用意したんだ?」

「それを私達に訊くの?」

「あいつは全く隠そうとしてなかったみたいだからな」

「…………まあいいわ。情報が漏れたくらいで崩れるようなやわな計画を組んでるとは思えないし。

 と言っても、私たちが知ってることは極めて少ないわ」

「構わん」

「剣はあなた達の為に色々と企画してたけど、お化け屋敷の仕掛けにかなりの労力を割いてたみたいね。

 監視カメラも取っ払って一人で作業してたから何をしていたのかは全く不明よ」

 随分と徹底した情報管理だな。

「あと、秀吉君が一回だけ呼ばれてたわね」

「まあそうなのじゃが……手伝った内容は絶対に漏らすなと言われておる」

 大抵の事は時間さえあれば一人で出来てしまうあいつが人を頼るのは極めて珍しい。

 だが何を頼んだのかは全く予想が付かないな……

「なるほど。結局殆ど分からないな」

「そうね。で、結局行くの?」

「行ってやるさ」

「そう。気をつけてね」

「ああ」

 

 

  ……お化け屋敷……

 

 

 ここは確か如月ハイランドの目玉の一つだったな。

 本物の廃病院を改装して使っているらしい。

 足音がいやに響くリノリウムの床に、幽霊が出てもおかしくないような状況。

 幽霊を本気で信じる人はそうそう居ないだろうが、幽霊が居る可能性が0.1%でも頭をよぎる時点で怖がらせる効果としては上出来だ。

「……ちょっと、怖い」

「こういうのが平気なお前にしては珍しいな」

「……そうかも」

 ……しかし不気味だな。

 あいつが何も仕掛けてこない訳が無いんだが……

 あえて仕掛けない事でつり橋効果でも狙ってるのか?

 いや、そんな消極的な手段があいつのとっておきな訳が無い。

 とっておきと脅しておいて実は……という手段を取りかねないのがあいつだが……

 

 順路に従って進むが、何も起こらない。

 ……ここまで進んで何の仕掛けも無いお化け屋敷はアトラクションとしてどうなんだ?

 わざわざ貸し切って準備しているんだろうか?

 1階を踏破して2階に上がってしばらく進んだ所でようやく何かの演出が姿を現した。

 

『……じの方が……よりも……』

 

「……この声、雄二?」

「ん? そうなのか?」

 翔子が言うなら多分そうなんだろう。自分の声ってのは意外と分からないからな。

 これは録音か、もしくは秀吉の声真似か……

 しかし一体何のつもり……

 

『姫路の方が翔子よりも好みだな。胸も大きいし』

 

「……雄二。言い遺す事、ある……?」

「ちょ、おいおいおい!! 確かに怖いがリアル過ぎるだろうが!!」

 幽霊なんざ怖くは無い! 一番怖いのは人間だ!!

 ってボケてる場合じゃない。何とか翔子を宥めて……

 

ガタン

 

「ほ、ほら! 何かの演出だぞ!!」

 とりあえず注意を逸らして何とか……

「……気が効いてる」

 ……え? 金属バット?

「ちょっと待ちやがれ!! お前()は何がしたいんだよ!!」

 信じても良いのか? 俺の命は保証されてんだろなぁ!?

 翔子がバットを素振りしながら近寄ってくる。メチャクチャ怖い。

 とりあえず逃げるしかないっ!!

「……逃さない」

 このまま延々と逃げつづける訳にも行かない。

 何とかしないと……

 

ガッ

 

「なっ!?」

 廊下に障害物が置いてあったらしい。派手に転んでしまった。

 ってか、トリックアートで一目じゃ分からないように設置されてやがるっ!!

「……雄二、覚悟」

「くおおぉぉぉぉぉっっっ!!」

 

 金属バットが振り下ろされる。

 

 そして…………


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