バカ達と双子と学園生活   作:天星

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如月ハイランド編
プロローグ


 僕の手には今、2枚のチケットがある。

 如月ハイランドペアチケット。

 問題のあるチケットは学園長が回収済みなので、ここにあるものはまっさらな代物だ。

 ちなみに明久は誘いたい人が居ないとの事なので僕が預かった。

 さて、問題はこれを誰に渡すか……だ。

 これを求めている人物は僕の知る限りでは4人。

 姫路、島田、木下姉、そして霧島。

 『ペアチケットが2枚だから4人で行ってくると良い♪』何て事は口が裂けても言えないしなぁ……

 仕方ない、消去法で選ぶ事にしよう。

 残念ながら、今回は姫路と島田は除外させてもらう。

 あの二人が明久を信頼しているのか? と問われればちょっと苦しい。

 召喚大会でのあの二人を見たらなぁ……

 煽り方にも問題はあったのかもしれないが、それにしてもである。

 そして同じような理由で霧島も除外出来てしまうな。

 あくまでざっと確認した分だが……

 

 ・アイアンクローでデートに引っ張る。

 ・映画館ではスタンガンで黙らせる。

 ・プールでは躊躇無い目潰し。

 

 ……等など。

 正直な話、あの優等生がこんな行動を取るとは全く予想してなかった。

 学力が全てではない事を(悪い意味で)実現してしまっている。

 とにかく、姫路と島田を除外するなら霧島も除外になってしまう。

 となると、とりあえず木下姉は確定か。

 え? 秀吉に対してだが前科がある? 済んだ話だろう。

 

 さて話を戻そう。

 こうなると一枚余ってしまう。

 かと言って除外した連中の中から選ぶのもなぁ……

 ……いや、これは良い機会なのかもしれない。

 試召戦争の交渉の責任は僕にある。

 何とか……やってみますか。

 

  ……side out……

 

 

 

  ……光side……

 

 ある日の昼休みの事だ。

「ふ~、やっとお昼ね。優子、購買行こ」

「ちょっと待って。ノートが……完成っと」

「あ、ボクも行くよ」

 そんな風に、みんなで話していた時だった。

 

ドゴッ ドォオン……

 

 振り向くと、扉が倒れていた。

 そしてその向こうには何故かパンを大量に抱えた兄さんが……

「ちょ、剣っ!? 何やってんの!!」

「全てはここの扉が自動ドアじゃないのが悪いんだ。

 高橋先生、今度改装して下さい!」

「一理ありますね。手配しておきます」

「ちょ、先生も乗らなくて良いですから!!」

 冗談だと思いたいけど、このヒトの場合は素で言ってそうなのでコワい。

 っていうか自動ドアなんかにしたら逆に不便な気がする。(こういうレアケースを除けばだけど)

「……で、一体どうしたの? そんなパン抱えて」

「購買を往復する分の時間が稼げるだろ?

 ほれ、100均だ。適当にもってけ」

「あ、ボクこの焼きそばパン頂き~」

「…………美味しい」

 え? 何であっさり受け入れてるの? 私がおかしいの!?

「毎度あり~。

 それと、今日はお前たちに例のアレを渡しに来たぞ」

「アレ?」

「チケットだよ。如月ハイランドプレオープンペアチケット。受け取れ!」

「「っ!!!」」

 あ~、そう言えばそんなのあったわね。

 企業の息がかかったチケットは回収したとか言ってたっけ?

「で、それだけ? それだけならわざわざパンを用意してまで時間を開ける必要は無いわよね?

 あと、このオムそばパンもらうわ」

「100円な。

 霧島が誰を誘うのかは分かりきってるが、木下姉の方を確認しておきたくてな」

「わ、私?」

「お前が誘うのって明久だよな?」

「なっ、なななな何で!?」

「貸しがある相手って言ったらあいつだろうなと。

 どうだ? 正解か?」

「…………

 うん、そうよ」

「え? 優子、もしかして吉井君に気があるのカナ?」

「ち、違うわよ!! そういうのじゃなくて、ただ……」

「工藤、理由なんて関係無い。そうは思わないか?(ニコニコッ)」

「う~ん、一理あるね(ニコニコッ)」

「その妙な笑顔を止めなさい!!」

 この二人組……意外と凶悪ね……

「そういう訳なら、僕が明久に伝えておく。

 どうせチケットが使える日付は決まってるわけだし」

「あ、うん、おねが

「え~、こういうのは、素直じゃない女の子が恥ずかしがりながら誘うのがポイントなんだよ?

 あとお代わりもらうね。はい、100円」

「だから、そういうのじゃなくて……」

「おう、毎度。

 工藤、その気持ち、理解できない訳じゃない。むしろそうした方が面白……面白そうだとは思った」

 今言い直そうとして止めてたわね……

「でもな、例えば今からFクラスに直行して明久を誘う……いや、声をかけると、どうなると思う?」

「…………?」

「異端審問会が黙っちゃいないでしょうね」

「まあそういう事だ。デートどころじゃなくなる」

「だから……もう否定するのも疲れたわ」

「アレ? 認めるの?」

「だから違うってば!!」

「まあデートでも何でも構わないが、日付を間違えるなよ?

 しっかりスケジュールを開けておけ」

「分かった。ありがとう」

「どういたしまして。

 ところでパンは要らんか? 100円だぞ?」

「えっと……じゃあ……これもらうわ」

 そういえばまだ大量にパンが残ってるんだけど……

「ところで兄さん、これ、余ったらどうなるの?」

「僕の分になる。

 食い切れなかったら明久のカロリーになる」

「…………10個もらうわ」

 人にあげるのが何か釈然としないから。

 

  ……光side out……


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