バカ達と双子と学園生活   作:天星

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祭りの終わり

「よっ、お前ら。大活躍だったな」

「雄二、見てたのか?」

「ああ。観客席から見せてもらったぜ。ハンドサインをああ使うとはな」

「まあな。ところで、あのサル先輩は一体何をしようとしてたんだ?」

「サル先輩……? ああ、坊主変態か」

「雄二、変態に向かって先輩なんて失礼じゃないか」

「いや明久、それだと変態を擁護してるぞ」

「? その通りだけど?」

 ……お前も大概だよなぁ……僕も人の事言えんが。

「あの坊主なら右手に砂か何かを握ってたみたいだから明久に目潰しでもかけようとしたんじゃないのか?」

「……そりゃまた」

 召喚獣で視線を引きつけるとはいえ、バレたら一発で退場だぞ?

 召喚者の戦闘行為は厳格に禁止されてる…………はずだから。

「さてと。後は学園長と話を纏めるだけだな。

 僕が処理しとくから、お前たちは祭りを楽しんでいてくれ」

「ん? 良いのか? じゃあ頼んだぞ」

「おう」

 

  ……学園長室……

 

 えっと……まずはノックだっけ?

 

コンコンッ

 

『誰だい?』

「2ーFの空凪です」

『入んな』

 

ガチャッ ギィィィ バタン

 

「ちゃんとノックして入るとは、感心じゃないか」

「光までもが貴方の事をババア呼ばわりしてるので、せめて僕はまともな対応をしようかと……」

「ふん、で、何の用だい?」

「いくつかありますが……まずは……」

 康太から借りた機械を起動する。

 えっと…………あそこだな。

 部屋の片隅に置かれた観葉植物を調べる。

 …………………………あったあった。

「どうぞ」

「これは……」

「盗聴器でしょうね。とりあえずスイッチは切っておいたので大丈夫ですよ」

「なるほどねぇ……」

「学園長は言動に気を遣ってるようでしたので、もしかしたらと思って自分の伝手で探知機を用意しました」

「そうかい……

 ……実を言うと、盗聴に関してはあまり疑って無かったんだよ。

 学園長室の警備はそんなに緩いつもりは無いからね」

「…………となると、警戒してたのは盗聴ではなく録音ですか」

「鋭いねぇ……隠しててもしょうがない。最初はお前さんたちを疑ってたよ」

「成績不良の生徒達ですからね。むしろ成績に余裕があるAクラスよりも遥に操りやすい。

 まぁ疑うのも無理は無いでしょうね」

「そう言ってくれると助かるよ」

「どうも。

 あと、これも渡しておきます」

 

カチッ

 

  『……先輩、一つ訊きたい事があります』

  『ぁんだ?』

  『教頭先生に協力してる理由は何ですか?』

  『……そうかい。事情は理解してるってコトかい』

  『まぁ大体は。それで、どうなんですか?』

  『進学だよ。上手くやれば推薦状を書いてくれるらしい。

   そうすりゃ受験勉強とはオサラバだ』

  『そうですか。そっちの……常村先輩も同じ理由ですか?』

  『まぁな』

 

カチッ

 

「裁判レベルで使える証拠かは分かりませんが、まあ何かしらの役には立つでしょう」

「そうかい。 ……助かるよ」

「いえいえ。それでは教室の改修の件、お願いしますね。

 では、失礼します」

「あ、ちょいと待ちな!」

「何でしょうか?」

「今回の礼さ。こいつをくれてやる」

「これは?」

「アタシが暇つぶしに作った『白の腕輪』さ。

 召喚獣を召喚してる時にこいつを付けて『セット』と宣言すれば点数に関係なく腕輪が使えるようになる代物さ。

 但し、10点消費する」

「念のため訊きますが、高得点者の使用による暴走等の危険は?」

「無いよ。仕組みが簡単だからそんな不具合は簡単に修正出来たのさ」

「そんな腕輪があったならこれを賞品に……無理か」

 技術的に簡単なものなら宣伝に使うのは無理か……

「そういう事でしたらありがたく頂きます。

 では失礼します」

 

 

 ……あ。

「っと、ちょっと宜しいでしょうか?」

「何だい?」

「例の如月ハイランドの噂ですが……あれって事実ですか?

 もっともらしい理由付けの為に学園長がでっち上げたとか……?」

「ああ、()()()事かい?」

 学園長が懐から2枚のチケットを取り出す。

「…………なるほど」

 そして()()()()()()()()()()2枚のチケットを確認する。

「既に回収済みだったとは。恐れ入りました」

「ふふん、企業の思惑なんて知ったこっちゃ無いが、うちの生徒を勝手に使われるのは癪だからねぇ」

「ふふっ、そうですか。

 それでは失礼します」

 

 

  …………

 

 

「康太、これ、助かった」

 借りていた盗聴器の探知機を返す。

 実は学園長に直訴した翌日から借りていたのだが……学園長自身もきっちり警戒してたみたいだし、泳がせておこうかと思いいままで放置しておいた。

 あの盗聴のせいで学園長との繋がりがバレて営業妨害等に遭ったが……最初の時点で手遅れだったと思うので関係無い。

「…………毎度」

 一体何故こんな機械を電話を掛けた翌日に用意出来たのかは……まぁあえて訊かないでおこうか。

 

 

  ………………

 

 

『只今をもちまして、清涼祭一般開放終了時刻となりました。

 生徒の皆さん、2日間お疲れ様でした』

 

「ふぅ、お疲れ様皆。

 Aクラス副代表として、ここに居る全員に感謝するわ。

 皆が頑張ってくれたから企画を成功させられた。本当にありがとう!」

 Fクラスも十分に貢献出来たみたいだな。

 収益金の分配は……どうなるかなぁ……?

 ……うん、訊いてみた方が早いな。

「光、今回はどれだけ儲かったんだ?」

「ん? えっとね、半分にしてもFクラス教室を改善出来るくらい……かな?」

「…………一体いつから気付いてた?」

「あの姫路さんが召喚(PR)大会に出るって聞いた時から」

「…………なるほどね」

 やっぱり鋭いなぁ……コイツ。

「となると、収益金分配は半々で良いのか?」

「ええ。その辺が妥当な所。

 偏らせると今の良い雰囲気が台無しになりそうだし」

「それもそうか」

「それじゃ、最後の仕事よ。

 後片付けをしないとね。Fクラスの皆には重い物とか運んでもらうから、覚悟しといてね!」

「フッ、望む所だ。よぉっし、やるぞお前ら!!」

 

「「「「「オオオッッーーー!!」」」」」

 

 

   ………………

 

 

 この後、姫路は転校せずに済む事になったらしい。

 とりあえず、一件落着といった所か。

 っと、そうだ、これの使い道も決めないと。

 如月ハイランドプレミアムペアチケット。

 いくつか計画は立ててるが……どうなるかな…………


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