「お前の点数を聞いた時は半信半疑だったが、やれば出来るじゃないか」
「まぁ、これだけに絞ればね!」
「くそっ、フザケンナよ! こんな点数高いなんざ聞いてねぇぞ!!」
僕達に文句を言うくらいなら雇い主に文句を言えという話だが……
「まあ良い。
明久!
「勿論!!」
「誰がサルだ!」
とりあえず、召喚獣を一直線に突っ込ませる。
「へっ、そんなもん避けてくださいと……」
ゴスッ
「言ってるようなものだからな」
但し避けられるなら……だが。
「なっ、テメェ今何をしやがった!!」
「わざわざ教える訳が無いでしょうに」
簡単に言うと速度に緩急を付けただけだ。
召喚獣の操作は慣れてないと全力疾走しか出来ないが、慣れていれば全力疾走に見せかけた手加減した走りが出来る。
相手はカウンターを狙っていた(と言うより狙うように誘導した)のでタイミングを崩してやれば面白いようにクリーンヒットする。
「へん、その程度、俺たちにも!」
横から見ていた
「……ヌルいですね」
だが、動きにキレが無い。はっきり言って下手くそだ。
明久は簡単に避け、すれ違いざまに攻撃を加える。
「僕達の副代表の技がそんな簡単に真似出来る訳が無いでしょう」
「随分と嬉しい事を言ってくれるな」
そもそも相手の不意を突かないと成功しない技なんだけど……
と言うか、何でこいつらはこんなに態度がデカいんだ……?
一年分の経験値があるから余裕だとでも思っているんだろうか?
一年前の試召戦争がどれほどの規模で行われていたかは知らないが……勝利を蹴って更に上を目指すような輩はそうそう居ないだろうし、一度負けたら3ヶ月の間仕掛ける事が出来ない事を考えるとFクラスは既に一年分くらいの経験は積んでると思う。
それに加えて僕達は観察処分者だから更に経験を積んでいて……
……経験値で言ったらまず間違いなく負けないね。
「仕方ねぇ。二年相手に大人気ねぇが、経験の差ってやつを教えてやるよ!!」
その『経験』はたった今心の中で否定した所なんだが……
で? その経験豊か(笑)な先輩の行動は……召喚獣を遠くに動かして距離を取った?
あんな遠くにやったら普通に操作し辛いだけだと思うんだが……
「うおおぉぉぉぉおおおお!!!!」
ブラフ……かなぁ? まあ、正攻法で行くか。
「明久!!
「っ! 分かった!!」
そして明久は
せずに
「何っ!?」
そして僕は……そのまま
「くらえっ!!」
補足しておくが……飛び道具使い相手に距離を取るのは自殺行為だぞ?
ナイフの弾幕の一部が綺麗に命中し、
……アレ? この場合……
『え~、試召戦争のルールにより、召喚獣が外に飛び出した場合は戦死扱い。つまり戦闘不能となります』
「何だと!?」
そうだったんだ! 知らなかった……
召喚者が出た場合は敵前逃亡扱いになり問答無用で戦死だが……召喚獣が飛び出るなんて滅多に無いからな。
間違っても敵前逃亡にならないように召喚者は余裕をもってフィールドに立っている。
そして召喚獣は普通は前に立っているので更に余裕だ。
これを場外にするにはかなりの攻撃力が要るし、その場合普通に0点になって戦死になる。
しっかしそんなに鉄人の補習が怖いんかなぁ……?
『シュミはベンキョウ!! ソンケイするヒトはニノミヤキンジロウ!!』
……確かに怖いか。
「くっ! だがテメェ等ごとき、俺一人で十分だ!!」
「そうか。じゃ、明久!
「OKっ!!」
「ふん、そんな真っ直ぐな攻撃……って騙されるかよぉっ!!」
騙すとは人聞きが悪い。そもそもそっちが勝手に盗み聞きして……まあいいや。
「そんな事言って何か仕掛けて『ズシャッ』何っ!?」
何で僕がアイコンタクトではなく、バレやすいハンドサインを使ったと思ってるんだ。
バラす為に決まってるだろう。
え? それは騙してる? 気のせいだ。多分。
『ただいま決着が着きました!!
試験召喚大会優勝は、二年Fクラス吉井明久君と、二年Fクラス空凪剣君のペアです!!
皆様、盛大な拍手をお願いします!!』
※『召喚獣の場外』に関するルールは探しても見つからなかったので本作で独自に設定しました。