バカ達と双子と学園生活   作:天星

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03 布石

 さぁって、宣戦布告か。少しワクワクするな。

 

「失礼します。Fクラス副代表の空凪剣です。

 Dクラスの代表の方はいらっしゃいますか?」

「……僕がDクラスの代表だ。

 何の用かな?」

 

 こいつが敵の大将か。

 確か……『平賀(ひらが)源二(げんじ)』だったかな。

 うちの代表みたいな尖った性質は無く、良くも悪くも普通な感じだった気がするな。

 Dクラス代表となるとちょうどド真ん中の順位だし。

 

「えっとですね、

 我々FクラスはDクラスに対して試験召喚戦争を挑みます」

「!? 初日に……正気か!?」

「当然でしょう。

 開戦時刻は昼休みが終わる時刻としたいのですが」

「……異論は無い」

 宣戦布告は原則として断る事は出来ないが、開戦時刻を多少ゴネる事は出来る。

 スムーズに纏まって良かったと言えるだろう。

「ではこれにて……

 

『ちょっと待てや!!』

『ここから生きて帰れると思うなよ!!』

 

 あ、やっぱり?

 

『誰か、獲物を持って来い!!』

『釘バットだ!! 20ダース持って来い!!』

 

 な、何か予想以上に物騒な事を言ってるんだが!?

 っていうか240本もどうやって使うの!?

 

「……君には悪いけど、うちの連中を止める気は無いよ」

「ハハハ、結構ですよ。一応覚悟はしてましたから」

 激昂するわけでもなく取り乱すわけでもなく、代表に限って言えばかなり褒められた態度だと言えよう。

「んじゃぁお前ら……まとめて掛かってこい!!」

 

 

  ………………

 

 

「って感じで宣戦布告してきたぞ」

「ご苦労だった」

 とりあえずDクラスの猛攻を軽くいなして帰ってきた。

 正当防衛という名目で病院送りにしてやっても良かったのだが、代表の態度が結構良かったので止めておいた。

 一撃もクリーンヒットしなかった連中はさぞかしストレスが溜まってるだろう。

「これから作戦会議だから、屋上に来い」

「りょ~かい」

 

 

  ……屋上……

 

 

 会議のメンバーは僕と雄二に加えて、さっき名前が挙がった連中(明久、康太、秀吉、島田、姫路)か。

 まぁ妥当な人選だな。

「じゃ、会議を始めるぞ」

「まさかとは思うけど……何も考えてないって事は無いよね?」

「明久、お前じゃ無いんだから。ちゃんと考えてあるよ。

 会議っつっても作戦を伝えるだけだ」

「相手は仮にも上位クラス。

 勝算が無ければ挑む訳無いだろ?」

 雄二が皆を煽ったので士気だけは絶好調だが、それだけで勝てるほど甘くは無い。

「ところで、一つ疑問があるのじゃが、何故Dクラスなんじゃ?

 段階を踏むなら一つ上のEクラスじゃろうし、勝負に出るならAクラスじゃろ?」

 その疑問は尤もではあるが……

「まぁ大体想像は付くな」

「お、言ってみろ」

「んんっと……

 Aクラスに挑んでもまず勝ち目は無い。

 だったらFクラスに都合が良い条件を飲んで貰わなきゃいけない。

 となると交渉の材料が必要だ。

 試召戦争に関する交渉なら試召戦争をネタにするのが一番手っ取り早い。

 一番分かりやすいのが、他クラスを攻め落としても設備を交換せず、その設備をネタに脅迫する事だ。

 Bクラスあたりを攻め落とせればかなり楽になるだろうが……まぁ厳しいな。

 ここもやっぱり他のクラスを使って好条件に導く必要がある。

 で、使うクラスだが、Eクラスは無理だ。

 脅されるリスクと突っぱねるリスクが同じだからな。

 となるとその一つ上のDクラス。

 そこを落として適当な協定を結べば良い。

 と言う訳でまずはDクラス。

 ……以上、こんな所か?」

「俺の説明する所が殆ど無くなっちまったな。

 後はまぁ、景気付けだな」

「「「「「????」」」」」

「……スマン雄二、僕には荷が重かったみたいだ……」

「合ってるんだがなぁ……

 とにかく、Aクラスに勝つ為にはDクラスを落とす必要がある」

 至極単純明快だ。なるほどなるほど。

「なるほどのぅ。まずはDクラスに勝たなければならんのぅ」

「そういう事だ。剣、開戦時刻はちゃんと伝えたな?」

「ああ。昼休み終了時刻に開始だ」

「そうか。Dクラスの様子はどうだった?」

「完全にキレてたな。

 かなり見下されてると思って良いだろう。

 あと、相手の攻撃を全部避けたから相当ストレスが溜まってるはずだ」

「そこまでしなくても良かったんだが……まぁいいか」

 

 

「昼休みが終わってからって事は……お昼ご飯が先ね?」

 そうなるな。

「そうだな。明久、今日くらいはまともな物を食えよ?」

「そう思ってくれるならパンの一つや二つ奢「却下だ」って……って早いよ!!」

「仕送りをゲームや漫画に使い込む貴様の自業自得だ」

「うぐっ!!」

 日々の食事を塩水や砂糖水で凌げる生命力には感嘆するが……それとこれとは話が別だ。

「あの……もしよろしければ私がお弁当を作ってきましょうか?」

 …………うん?

 何か今一瞬背筋がゾクッっとしたぞ?

 面白そうなシチュエーションのはずなのに……寒気がする……

「え!? 本当に良いの!? 僕、塩水と砂糖意外の物を食べるのは久しぶりだよ!!」

「じゃあ、明日のお昼は持ってきますね」

 例えるなら、そう。

 大地震や大津波の前触れのような……

「…………ちょっと良いか?」

「はい?」

「差し出がましいようだが……味見はしっかりしてくれよ?」

「え? えっと……」

「何言ってるのさ! 料理を作ったら味見をするのは当然じゃないか!!」

「!!!!」

 明久ナイス!!

 後は…………何事も無い事を祈るしかないな……

「ふ~ん、瑞希ってば優しいのね。

 吉井に()()作ってくるなんて」

 おい、その言い方は……

「え、あの……よろしければ皆さんにも……」

 ……デスヨネー。

「俺たちにも良いのか?」

「は、はい!」

「それは楽しみじゃのう」

「…………(コクコク)」

「………………」

「どうした剣?」

 この謎の悪寒の中心に親友達だけ送るわけにもいかんか。

「……良いんじゃないかな?」

「分かりました!! それじゃ、皆さんにも作ってきますね!!」

 …………ホントに大丈夫だろうな……?


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