バカ達と双子と学園生活   作:天星

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12 真意

「てやああぁぁぁっっっっ!!!」

「ぐふぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

 ……ふむ、今起こった事をありのままに話すぞ。

 Aクラス前まで着いたら、光の声(声?)が聞こえて、教室の扉からチンピラっぽいのがぶっ飛んできた。

 そのまま避けると後ろの3人(明久はともかくAクラス女子二人)が危ないので上手く受け流して地面に叩きつけてやった。

「ぐへっ!」

「っと。光、何があったんだ?」

「ああお帰り。

 チンピラ達が徒党を成して私たちを拉致ろうとしてきたんで正当防衛で撃退した所よ」

「そうか。理解した」

 徒党を成して襲撃ねぇ……

「ちょっと!? 何か今とんでもない事がサラリと流れていった気がするんだけど!?」

「ん? 何がだ?」

「ねぇちょっと!!」

「騒がしいな。何があったんだ?」

 廊下の向こうから雄二がやって来る。一体どこに行ってたんだ?

「ああ雄二。実はさ……」

「まあ言わなくても大体分かるぞ。

 チンピラ供が徒党を成して襲ってきたんで剣が正当防衛で撃退した所だろ?」

 かなり惜しいぞ。

「殺ったのは私だけどね♪」

「…………何っ!?」

「……光の実技体育の成績はトップクラス」

 決して実技保健の成績ではない。某ボーイッシュな女子と被るから、そこは間違えてはいけない。

 そして忘れてはいけない。光はあの鉄神滅剣(ダーインスレイヴ)の姉だということを……

「ところで雄二。襲撃されてたってのにどこに行ってたんだ?」

「手紙で呼び出されてな。

 行ってみたらチンピラ供が徒党を成して襲ってきたから返り討ちにしてやった。

 鉄人に引き取ってもらったぞ」

「つまり引きつけられたのか。随分と手が込んでるな」

「そうだな」

「そして光、『拉致ろうとしてきた』と言ったな?」

「ええ。ま、未遂に終わったけど」

「……雄二。どうやら問い質さなきゃならん奴が居るみたいだな」

「だな。呼んでくるからFクラスの教室で待っててくれ。あそこなら安全だろ」

「頼むぞ。明久、行くぞ」

「え? ケーキは!?」

「んなもん後だよ後」

「えええええっ!?」

 まだまだ時間はあるんだから、別に良いだろうに……

「何か知ってるなら、私も行かせてもらうわ。

 一応当事者の一人だからね」

「光なら問題ないだろう。行くぞ」

 

 

  ……Fクラス教室……

 

 

「呼んできた。もうじき来る」

「サンキュ」

「ところで、誰を呼んだの?」

「ババァだ」

「それだけじゃ分からな……

「学園長がわざわざ来るの?」

 『ババァ=学園長』というのもどうかと思うが……

「確かに学園長は高齢の女性だけど……

 その学園長がどう関係してるの?」

「さっきの襲撃も含めて、一連の妨害工作の原因があのババァにあるはずだ」

「ババァに原因って……えええっ!?」

「何で吉井君が驚いてるのよ……」

 そういう奴なんだ。気にするな。

「でも原因が学園長ってのは気になるわね。

 最悪の場合は私もババァと呼ぶ事にするわ」

 その発言はいかがなものだろうか……

「……やれやれ、わざわざ来てやったってのに、随分とご挨拶だねガキ供が」

「……こんにちは。ババァ」

 決定したらしいな……

「出たな! 諸悪の根源め!!」

「明久、それは言い過ぎだぞ」

「黒幕は言い過ぎだが……俺達に話すべき事を話していないのは十分に裏切りと言えるだろうな」

「ふむ……やれやれ。

 賢しいヤツだとは思っていたけれど、まさかアタシの考えに気がつくとは思わなかったよ」

 順序立てて考えていくとかなり分かりやすかったと思うが……

「訊いておくけど、一体何の話?」

「アンタは……空凪の妹の方かい」

「ええ、まぁ」

「じゃ、僕達の取引の内容をかいつまんで説明しよう。

 まず、僕達がこのFクラス教室の惨状を直訴した事が始まりだ。

 その僕達に対して学園長はある条件を出す。

 召喚大会の景品である『如月ハイランドプレオープンプレミアムペアチケット』を回収できたら改修してもいい

 ……とな」

「違和感しか無いわね。

 学園長が法律に関わりかねない直訴を却下する事も、ペアチケットを回収させる事も」

 ごもっともだ。

「なんでもそのチケットには怪しい噂があったらしくてな。

 まぁ何とか回収したかったらしい」

「……わざわざFクラスに頼むなんて、ますます怪しいわね」

「そうだ。怪しさを感じた雄二は学園長に一つの提案をした。

 『大会で使う教科を指定させてくれ』」

「それを学園長は飲んだワケ?」

「ああ」

 回収を頼むなら何度でも使えるが、大会の科目指定なんて大技は一回しか使えない。

 つまり学園長は僕達にのみ回収を呼びかけていたわけで……

「となると学園長は

 『点数の低い生徒に優勝してほしかった』

 って事になるわね」

「…………はぁ、隠してても無駄みたいだねぇ。

 そうさ。その通りさ」

「でも、なんでわざわざそんな事を……?」

「明久、この学校においてテストの点数は単なる成績の指標じゃない。

 もう一つの使い道……分かるよな?」

「当然だよ。試召戦争でしょ?」

「そ。点数が関わる話で、成績以外の事ならそれ関連の話しか有り得ない。

 今回のケースだと……召喚大会のもう一つの商品である『二つの腕輪』だ」

 大会の景品になってる腕輪は召喚者が装着する事で特殊なボーナスを得る事が出来る代物だ。

 

 『白銀の腕輪』は先生の代わりに立会人になれる効果。

 範囲は先生のフィールドと同じくらい、科目はランダムになるとか。

 『黄金の腕輪』は召喚獣を2体に分ける効果。

 操作の難易度が跳ね上がりそうだな……今は関係ないが。

 

「それを低得点者に勝ち取ってもらいたかったという事は、その腕輪は高得点者では正常に機能しない……

 とかそんな感じでしょうか?」

「まさか学園長室に隠しカメラでも仕掛けたんじゃないだろうね……?

 そうさね。いま言った通りさね」

「……あれ? でも、点数が高い人には使えませんって言っておけば済む話じゃないの?」

「正常に機能しない以上はどう言い繕っても欠陥品だ。

 そんなもんを大々的に発表してみろ。信用はガタ落ちだ」

「そしてこの学校の場合、信用問題は致命的。最悪の場合は廃校すら有り得る」

 姫路が転校……どころか全員転校になるな。

「その通りさね。

 だから何としても、お前たちに勝ち取ってもらわなくちゃならないのさ」

 ふむ、ところで……

「僕の点数だとかなりヤバいと思うのですが……?」

「一番影響するのは振り分け試験の点数なのさ。

 少しの間なら耐えてくれるさね」

 それはつまり長時間の使用は厳禁という事では……

 勝ち取ったら雄二に渡しておこう。

「それと……敵の正体は教頭でしょうか?」

「え? どういう事!?」

「明久、敵はこの学校を潰そうとしている。

 そんな事してメリットがあり、なおかつここの内部事情に詳しく、更にチンピラや常夏を動かせる人物は誰だ?

 ほぼ間違いなく教頭だ」

「でも、潰れたら教頭先生も困るんじゃぁ……?」

「それ以上に喜ぶ人間が居る。

 この学校に生徒を取られた近隣の私立高校とかな。

 そういう連中に頼めば再就職には困らない、と言うより引き抜かれる直前に爆弾を残しているようなものだろう」

「…………なるほどね」

「アタシも教頭だと睨んでる。

 近隣の私立高校に出入りしてるって目撃情報もあるからまず間違いないさね」

 ほぼ確定……だな。

「学園長、どうもありがとうございました。

 訊きたいことはもうありません。

 僕達は明日に備えます」

「そうかい。じゃ、頼んだよ」

「はい。大船に乗ったつもりで待っていて下さい」


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