バカ達と双子と学園生活   作:天星

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11 再戦

「それで、本っっっ当に葉月とは何もないのね?」

「当たり前だよ!!」

「僕が言うのもおかしいが……普通信じるか……?

 名前すらついさっき知ってたんだぞ?」

「何と言いますか……吉井君って小さい子に好かれそうなイメージがありますから……」

 それって遠回しに……

「姫路サン? それって遠回しに小学生レベルのバカって言ってない!?」

 と言うか、『小さな女の子に好かれる→お仕置き』ってのはどうなんだ?

「それで、結局誰と行くの?」

「ん? ……ああ、チケットか。

 今んとこ特に予定は無いからもしかすると譲れるかもしれん」

「え?」

「ホントですかっ!?」

「場合によっては……な。

 あんまり過度な期待はするなよ?」

「ちょっと、剣! 大丈夫なの!?」

「ん、どうした? 誰か誘う当てでもあるのか?」

「そうじゃなくて! そのチケットは学えフムグッ!」

「(その話は白昼堂々とするんじゃない!!)」

「? どうしたの?」

「何でもない。早く店に戻るぞ」

「フムギュー!!」

 

  ………………

 

「もうじき五回戦だ。

 残った人数が少なくなってるから試合間隔が短くなってきてるな」

「うんそうだね。さっきまではもうちょい休めてたんだけどね」

 棒立ちになって召喚獣の操作をしてるだけでもそこそこ疲れるけど、観察処分者だと召喚獣の疲労もフィードバックされるから地味にキツい。

「ところで、次の相手は誰なの?」

「まぁ、間違いなくこの二人だろうな」

 

[2-A 霧島翔子]

[2-A 木下優子]

 

「うっ、これは……強敵だね……」

「一騎打ちで勝った奴が何を……

 と言いたい所だが、確かに強敵だ。

 油断するなよ? 相手は、多分絶対前より強い」

「え? どういうこと?」

「前回の戦争で僕達はこの二人に圧勝したんだ。

 雪辱を晴らさんと自分を磨き上げているはずだ」

 木下姉の場合は主に操作技術で負けてたが、霧島の場合は純粋な(?)点数で圧倒したからなぁ……

「うわぁ……

 で、何か作戦はあるの?」

「………………ああ」

「何か、凄く嫌な予感がするんだけど……」

「気のせいだろう。そろそろ行くぞ」

「そうだね。行こう!」

 

 

  ………………

 

 

『それでは、召喚大会準決勝を始めます』

 

 それで、結局相手は……

「やっぱり吉井君達か。宜しくね」

「……今度は負けない」

 うん、予想通り。

「こっちこそ、よろしく」

「じゃあ僕は、今度()負けない」

 この二人もここでぶつかるのは容易に想像が付いたのだが……

 今日色々とあったせいで準備が全ておじゃんになってしまった。

 本来なら木下姉を秀吉とすり替えた上に明久の代わりに康太が召喚して3対1でフルボッコにするという鬼畜な作戦を取る予定だったんだたな。

 どうも監視されてるっぽい現状でグレーどころかほぼブラックな手を使うのは避けたい。

 なのでまぁ、セカンドプランを使う羽目になるわけだ。

 

『それでは召喚して下さい』

 

「「「「試獣召喚(サモン)!!」」」」

 

 [フィールド:保健体育]

 

Aクラス 木下優子 342点

Aクラス 霧島翔子 451点

 

Fクラス 吉井明久 68点

Fクラス 空凪剣  400点

 

 うわ~、強そ~。

「それじゃあ剣、例の作戦を!!」

「……っ!」

 お~、面白いように警戒してるね。

 雄二に霧島の考えが大体分かるように、霧島も雄二の考えが大体分かるんだろうが……僕の中身なブラックボックスだからな。

 で、作戦だっけ?

「(僕が、霧島を、殺るから、お前は、木下姉を、殺れ!!)」

「…………え?」

 何だ見逃したのかぁ?

「(僕が、霧島を、殺る……

「いや見逃したわけじゃないから!!

 っていうか作戦ってそれだけ!?」

「(今日、急に、雄二の、搦め手が、使えなく、なったんだ。

 代案なんざ、簡単に、思いつく、訳が、無いだろう!)」

「き、キサマ何て無茶言いやがる!!」

「だって戦争の時はもっと差があったじゃんか」

 補足すると戦争時は62対375(約6倍)。今は約5倍だ。

「あの時とは状況が……

「ならばこうしよう。これに勝てたら……

 今日の間だけAクラスのケーキを好きなだけ奢ってやる」

「Yes sir!!」

 ……逆に不安になるくらい単純だな……

 さて、僕もバカじゃない。

 いくらケーキの力でドーピングしても明久は木下姉には敵わないだろう。

 それで良い。

 僕がすべき事は、明久がやられる前に()()()霧島を倒す事だ!

「待たせたな。さて……行くぞっ!!」

 霧島の召喚獣に突撃する。

 それに合わせて霧島の召喚獣が刀を振るう。カウンター狙いだな。

 飛び込みをかける人にとってカウンターは確かに脅威だ。

 だったらこう考えよう。

 カウンターが怖いなら、それにカウンターしちゃえば良いじゃない♪

 

ガギィィィンン!!!

 

 霧島の刀に対して正確に攻撃を叩き込む。

 刀を弾き飛ばしそのまま本体に攻撃を……

 

ゾクッ

 

「っ!!」

 急いで強制終了して横に跳ぶ。

 今のは……

「……どうして、避けられたの?」

 召喚獣に刀を拾わせながら霧島が問いかけてくる。

 つまり何かヤバかったんだな。

「そうだな……」

 直感で避けただけなのだが、強いて言うのであれば……

「反応が薄かったから……かな」

 刀を弾き跳ばされたというのに棒立ちになってたからな。

 驚いていたから? いやいや、そんな生易しい相手ではない。

 つまり相手にとってモロに攻撃を喰らった方が得だった……という事だろう。

 普通に考えてそんな状況はある訳が無いので……

「……なるほど、腕輪か」

「…………」

 

Aクラス 霧島翔子 450点

 

 よく見ると1点だけだが減っている。

 気づかなかっただけで何かが発動したのか、それとも準備か何かだけで点数消費するような凄まじいコストの能力なのか……

 ……ところで、僕の隣では明久が戦っている。

 因縁の対決という事もあり、お互いに意識を集中しているわけで……

「喰らえっ!!」

「え? きゃっ!」

 

Aクラス 木下優子 267点

 

Fクラス 吉井明久 58点

 

 機会があれば飛び道具で結構減らせる。

「ナイス剣っ!」

「っ! 優子!!」

「行かせるかよぉっ!!」

「ッッ!」

 霧島が避ける方向を予測してナイフを投げる。

 そのナイフはクリーンヒットし……

 そのままの勢いで戻って来たぞ!?

「危なっ!!」

 咄嗟に避けたが、少し掠ったな。

「だが、腕輪の正体は大体分かった。

 『反射』だな?」

「…………」

「ふむ、種が分かれば何とかなる。

 一応訊くが、僕の腕輪の能力は覚えているな?

 トレース!」

「……消耗戦になっても、負けるのは点数の低いあなたの方」

「それは均等に消耗する場合の話だ」

 さっきと同じように召喚獣を突撃させる。

 

 ……さて、この『反射』という能力同士がぶつかり合った場合、どうなるのか?

 まぁいくつか考えられるが……実際に見てみた方が早いだろう。

 

 霧島の召喚獣の鳩尾に、正確に拳を叩き込む!

 

ガギィィィィィン

 

「くっ、通ったか……?」

 この場合お互いの反射能力が適用されて……要するにお互いにぶっ飛ぶはずだ。

 その結果……

 

Aクラス 霧島翔子 202点

Fクラス 空凪剣  177点

 

 お互いに消耗するが、減少量は向こうの方が大きい。

 同じ衝撃が拳と鳩尾に来たら、どっちが痛いかは明白だよね?

「ふぅ、痛ってぇ……」

 ただ、ちょっとでも腕の角度が狂うと関節あたりに甚大なダメージが入るわけだがな……

「しっかし減少幅が思ったより大きいな。

 反射する威力に比例して消費点数が増えるってとこか」

「…………」

 そういう事らしいな。

 そうなると、このまま消耗戦になるとマズいな。

 十分抜けると思ったが……

 ……仕方ない。アレを試してみるか。

「行くぞ!!」

 と言いつつ木下姉にナイフを投げながら「え? ととっ!!」チッ、外したか。

 霧島の召喚獣に再び突撃。

 さっきと違うのは、そのまま攻撃せずに、相手の攻撃を捌きながら上手く回りこみ……

「捕まえたっ!!」

 ゆっくりかつ迅速に(矛盾しているが……)霧島の召喚獣に背後から抱きつく。

「っ!!」

 能力の影響でじわじわと点数が減っていくが、それは向こうも同じだ。

 抱きついた状態からさらに腕を霧島の召喚獣の首に回す。

 そのまま、ゆっくりと、ヘシ折る!!

 

Aクラス 霧島翔子 Dead

Fクラス 空凪剣  122点

 

「っ……」

 300点近くあっても首を折られたら流石に生き残れないらしい。

「明久、今行くぞ!」

 

 

 

 その後、明久と二人で木下姉を袋叩きにして勝利を収めた。

「……また、勝てなかった……」

「勝てなかったけど……楽しかったよ。

 次は覚悟してね!」

「そうか。リベンジマッチを期待してるぞ」

「やった! これでケーキが!!」

 おい、空気読めや!!

 

『勝者、吉井・空凪ペア!!』

 

 

  …………

 

 

「……ところで、お前たちはどうしてこの大会に参加してたんだ?

 霧島はチケット狙いで確定だろうが……」

「私も一応チケットを……」

「ん? 誰か誘いたい奴でも居るのか?」

「えっと……日頃のお礼と言うか、借りがあると言うか……」

「ああなるほど。その単語で大体分かった」

「えっ!?」

「……チケットに関しては興味無いから、もしかしたら譲れるかもしれん」

「ホントに!?」

「あんまり過度な期待はしないでくれ?」

「う……分かった。ありがとね」

「気にするな。それより、早く教室に戻ろう」


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