バカ達と双子と学園生活   作:天星

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10 信用

 召喚大会ももう四回戦だ。

 これが終わってもうしばらくしたら五回戦が始まって、翌日に決勝戦(第六回戦)が行われる。

 で、相手は……

 

「まさかここで当たるなんてね」

「よろしくお願いしますね」

 

 姫路と島田。Fクラスの女子コンビだ。

「うん、よろしくね」

「どっちが勝っても恨みっこ無しだ。行くぞ!」

 

『それでは、召喚して下さい』

 さて、この二人とぶつかる場合、四回戦に当たるのは分かっていたし、この二人がほぼ間違いなく勝ち上がってくるのも分かっていた。

 つまり何が言いたいかと言うと……

「「「「試獣召喚(サモン)」」」」

 

 [フィールド:古典]

Fクラス 姫路瑞希 399点

Fクラス 島田美波  6点

 

 対処するのは意外と容易だったという事だ。

「なっ!? 四回戦は数学じゃないの!?」

「悪いな。お前たちに渡したあのトーナメント表には雄二の手で細工がしてあってな」

 っていうか一回戦と同じ科目という時点で気付くべきだったな。

「ふははははは! 1桁しか無い島田さんの召喚獣なんて居ないも同然だね!!」

「ちょっと! 卑怯じゃない!!」

「そうは言うがな、細工しようがしまいが点数は変わらんかっただろ?」

「くぅっ……」

 それじゃ、サクッとやらせてもらい……

 

Fクラス 空凪 剣 400点

Fクラス 吉井明久  9点

 

「………………おい」

「………………正直、済まないと思ってる」

 

「「「「………………」」」」

 

 もの凄くいたたまれない雰囲気だ。

 あの細工、本当に役に立たなかったな……

 点数は一応勝ってはいる。

 だが、この点差だとなにかの拍子に逆転される恐れがあるな……

 戦いに100%を求めるのは無茶だが、50%で挑むのもツラいものがある。

「(……仕方ない。適当におちょくってみるか)」

「(な、何する気……?)」

「(そうだな……

  ……こんなのはどうだ?)

 二人共! 少し話を聞いてくれ!」

「はい?」

「何よ?」

「明久は僕の指示で大会に参加したと言ったが…実はそれだけじゃない」

「「??」」

「実は……ある人物と如月ハイランドに行こうとしている!」

「え?」

「だっ、誰と行くつもりですか!?」

「お、教えて! 教えなさいっ!!」

「ふっふっふ、知りたいか? 本当に?

 ならば教えてやろう。それは、島田……」

「えっ!?」

「え? 吉井はウチと……」

「葉月だ」

 つい先ほど否定したとんでもない事をここで持ち出す事により相手を動揺させるという完璧な作せ……

「瑞希、殺るわよ」

「ええ。殺っちゃいましょうか」

 ……あれ、即断?

「ちょっと剣!? 何か僕の命が危うくなってる気がするんだけど!?」

「(……お前、信用、無いな)」

「なんでここでサイン!? ちょっと!?」

 スマン。まさかここまですんなり受け入れられるとは。

 作戦修正だ。明久に攻撃が集中している隙に奴らを倒す!!

 作戦名、『明久ミサイル・バージョン2』だ!!

「何か今見捨てられた気がしたんだけど!?」

「気のせいだ! 死にたくなけりゃ死ぬ気で戦え!!」

「さぁ吉井くん! お仕置きですよ!」

「瑞希は吉井の召喚獣をボコにして! ウチは吉井をボコにする!!」

「ちょっ、それルール違反っ!!」

『ルール違反はありません』

「ちょっとぉぉぉおおおお!!!! 審判にも見捨てられたぁ!?」

 それはどうなんだ審判っ!!

 ……か弱い(?)女子の力でボコにされても大したことは無い……と判断したのかもしれない。

 決して島田に気圧されたわけでは無い……と信じたい。

 とにかく、さっさと倒すぞ!

 

ヒュッ サクサクッ

 

Fクラス 姫路瑞希 314点

Fクラス 島田美波 Dead

 

 とりあえず島田さんは戦死。これで明久(本体)の無事は……

「さぁ覚悟しなさいっ!」

「ちょ、戦死したのに!?」

 ……今回の大会において、戦死者に補習義務は無い。

 つまり召喚者はその場に留まる事になる。

 普通は全く問題無いんだがなぁ……

「いい加減に……しろっ!!」

「ムギュッ」

 一瞬で締め落とす。今度こそ明久(本体)の心配はしなくて良いだろう。

「はああっっ!!」

「ちょっ、とっ、とっ!!」

 あの点差で姫路の猛攻を凌いでるよ。明久って実は天才なんじゃないか……?

 とにかく、この隙に……

「行けっ!!」

「邪魔を……しないで下さい!!」

 

ガギィィィン!!

 

Fクラス 姫路瑞希 277点

 

Fクラス 空凪 剣 312点

Fクラス 吉井明久  6点

 

 お互いの召喚獣が強く吹っ飛ぶ。

 点数はこっちの方があるはずなんだが……装備重量とかその辺の影響でこちらの方がダメージが大きいな。

 ……うん、意外とマズい状況かもしれない。

「やああっっ!!」

 そして明久の召喚獣に一直線に突っ込んでくる。

 ……これは……

「スマン明久!」

 

サクッ

 

Fクラス 吉井明久 Dead

 

「痛っ!」

「えっ!?」

 明久の召喚獣が消えた事により姫路の攻撃が大きく空振りし、決定的な隙が出来る。

「そこっ!!」

 その隙を突いて強烈な一撃を叩き込むっ!

 

スパッ!

 

Fクラス 姫路瑞希 Dead

 

「っ!!」

「ふぅ……」

 何とか勝てたぞ……

「明久、大丈夫か?」

「う、うん。手が少しピリピリするけど……大丈夫だよ」

 姫路の大剣でぶった切られるよりマシだろうという判断だったが……

 今回けっこうキツい役回りをさせてしまったな。後でケーキでも奢るか。

 

『勝者、吉井・空凪ペア!』


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