バカ達と双子と学園生活   作:天星

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09 陰謀

「…………ん? 調味料が無くなりかけてるか?」

「…………(コクリ)」

「じゃあ取ってこよう。何が要る?」

「助かるぜ副代表!

 えっと、砂糖とグラニュー糖と黒砂糖と角砂糖と……」

「おい須川、それは一種類で十分じゃないのか!?」

「チッチッチ、それぞれに微妙に個性があるのさ」

「そうだよ剣、一緒にしたら大変な事になるよ」

「…………(フッ)」

 康太のドヤ顔が地味にムカつくが……生憎と料理は専門ではないからな。

 集中が30分程度しか保たない僕にとってそれを越える時間の料理は致命的だ。

 ……流石に姫路の料理のようにはならない……はずだ。

「分かった。じゃあ取ってくる」

 

  …………

 

「砂糖とグラニュー糖と……あと何だっけ?

 とにかく甘そうなもん持ってけば……」

 

ガラッ

 

「ん?」

 ここは共用の倉庫だから誰かが入ってくる事は全く珍しく無いんだが……

 部外者のチンピラっぽい男が入ってくるのはかなり珍しいと言えるだろう。

「お客様、恐れ入りますがここは関係者以外立ち入り禁止となっておりますので……

「ンな事より、テメェが空凪とか言う奴で間違いねェか?」

 人が折角親切に教えてやってるってのに……

「……僕の事ではないですね。扉の向こう側に控えている身長170cmくらいの男の事では?」

「なっ、テメッ!! どうやって!?」

「足音で複数だってのは簡単に分かるでしょうに」

 補足しておくと身長に関してはテキトーだ。

 そもそも自分の身長を覚えてる人なんざそうそう居ないし、目測だったら誤差10cmくらいでも当たったって言えるだろうし。

「で、何か用事ですか? 忙しいんですが」

「ふ、フン! テメェに恨みはねぇが、ここでくたばって貰うぜ!!」

 見た目通りの行動しか出来んのかこの脳筋は。

 とは言えここは共用の倉庫だ。暴れられるのも面倒だな……

「お、あったあった」

 近くに置いてあった真っ赤なビンの中身を相手の顔面にぶちまける。

「ぐぎゃぁあああああぁあぁぁああああああああアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 タバスコ、唐辛子、その他諸々の『辛さ』という概念を集めたような調味料……らしい。

 お値段はイチキュッパ(万)。

 なお、人の顔にぶつけてはいけません。

「どうした! 大丈夫かヤスオ!!」

「貴様も邪魔だ」

 適当なビンの中身をぶちまける。

 チラッと見たラベルによれば……

 『弊社が開発した超最新の甘味料!!

  わずか一粒で通常の砂糖の50億倍の甘味!!(当社比)

  なお、細心の注意を以ってお取り扱い下さい』

 ……とか何とか。

「ぐぎゃぁあああああぁあぁぁああああああああアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 ……ふむ、極端な調味料に対して人は同じ反応になるんだな。勉強になった。

 とりあえず鉄人に通報しておくか。

 ってか、誰だよこんなゲテモノ調味料用意したの……

 

 

「へくちっ」

「あれ、瑞希、風邪でも引いた?」

「いえ、そういうわけではないですけど……」

 

 

  …………

 

「戻ったぞ。これで足りるか?」

「お~サンキュ。こんだけありゃしばらく保つぞ」

「そうか。ところで雄二はどこだ?」

「代表ならそこに……」

「何か用か?」

「ああ。あと明久も」

「え? ちょっと待って!

 ………………

 はい。どうしたの?」

「とりあえず場所を移すぞ。

 Fクラス教室なら問題ないだろう」

 

  ……Fクラス教室……

 

「わざわざ場所まで変えて話なんて、何があったんだ?」

「つい先ほど襲撃された」

「え!? 大丈夫……に決まってるか」

「ああ」

 僕がそんじょそこらのチンピラに負ける訳が無いからな。

「問題は『襲撃された』という一点に尽きる。

 雄二、どうやら予想以上に大きな力が働いてるようだ」

「クレーマーが現れてから薄々予想はしていたが……そこまでか」

「え? えっと二人供何の話?」

「要するに、僕達に召喚大会で負けてほしい連中が居るって事だ」

「えええっ!? 一体誰がそんな事を!?」

「いくつか思いつくが……断定するのはまだ危険だ」

 常夏コンビをはじめとする複数のチンピラを動かす事の出来る人物。

 それでいて確固たる動機がありそうな人物。

 確定でもいいんじゃないかという気もするが……

 予想も出来ない黒幕が存在する可能性も考慮しておく。

「そんなあやふやな黒幕よりもだ、もっと安定した情報を追うべきだ。

 召喚大会で僕達に優勝させないのが目的なら大会に手練を送り込んでると断定して良いだろう」

「そりゃそうだな。で、見つかったのか?」

「まずAクラス、最低でもBクラスと仮定してピックアップし、クレーマー(常夏)の被害を被った2-Aと2-Bを除外……する前に見つかったよ。

 こいつらだ」

 

[3-A 夏川 俊平]

[3-A 常村 勇作]

 

「え!? こいつらって!!」

「99%、あの変態(仮)のクレーマー供だろう」

 100%でないのは同姓の人物が居ないとも限らないからだ。

 Fクラスにも工藤とか久保とか藤堂とか居るし……(決してボーイッシュな少女や同せ……学年次席や学園長ではない)

「さっき掲示板を確認したが、どうやら順調に勝ち上がってるみたいだ」

 しかしAクラスだったとはなぁ……やはり学力はアテにならんな。

「えっと……結局僕達はどうすればいいの?」

「どうするも何もなぁ……

 まっすぐ挑んで普通に優勝するだけだ」

「……へ?」

「どうした? 何か問題でも?」

「いや、剣だったら『火種は残しておきたくない』とか言ってすぐに何とかしそうな気がするけど……」

「ふむ、確かに。

 必要があるならグレーどころかブラックな手段も厭わずに対処するだろう」

 必要があるなら……だが。

「それを堂々と言っちまうのはどうかと思うぞ……?」

「ここはFクラス教室(康太のテリトリー)だ。盗聴の心配も無い。

 そして対処しないのはしたくても出来ないからだ」

「どういう事さ?」

「今言ったのは全て推測だ。

 常夏コンビもただの煩いだけのクレーマーかもしれない。

 なら深く調査を……とも思ったが、召喚大会が終われば終わるんだ。そこまでの手間を掛けてまで排除するのは面倒だ。

 何かされたらその場で対処するのが一番効率的だ」

「なんか分かったような分からないような……」

「要するに、とりあえず召喚大会を勝ち抜いて、襲ってくるアホが居たら叩きのめせ。

 以上だ」

「凄く分かりやすかったよ、最初からそう言ってよ!」

 お前が訊いてきたんだった気がするんだが……まあいい。

「じゃあ俺は店への警戒を怠らないようにすれば良いんだな?」

「ああ。よろしく頼むぞ」


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