雄二が発したAクラスへの戦争宣言。
これに対してクラスの皆は……
『何をバカな事を!』
『勝てる訳が無い!』
『姫路さんさえ居れば何も要らない!!』
……まぁ否定的だ。
文脈から何となくは分かると思うが、『試験召喚戦争(通称、
各生徒は自分の点数に比例した強さを持つ召喚獣を呼び出し、お互いに戦わせる。
相手のクラス代表を先に倒した方が勝ち。という単純なルールだ。
当然の事ながら学力が高い方が有利な仕組みになっており、最低辺クラスであるFクラスでは勝ち目などまず存在しない。
「いや、そんな事は無い!! 必ず勝たせてみせる!!」
だが、この戦争はあくまで学力が高い方が
「このクラスには勝てる奴等が揃っている!!
今からそれを説明していく」
ま、お手並み拝見といこうか。
「木下秀吉が居る!!」
『おお!! 演劇部のホープ!!』
『木下優子の双子の妹!!』
「今言ったの誰じゃ!! ワシは弟じゃ!!」
秀吉? こう言っちゃうのもどうかとは思うが、成績自体は大したこと無いぞ。
Fクラスに振り分けられてるわけだし。
まぁ、女子が少ないFクラスなら、
ちなみに双子の姉はAクラスだ。その事実が成績が良いイメージを錯覚させるのに一役買っているのだろう。
……何か所々キツい言い方になってしまったな。
まとめると、有能ではあるがAクラスとの力関係を覆せる程のものではない。と言った所か。
「土屋康太が居る!!」
『土屋? 誰だ??』
本名の方はあまり出回ってないが……
「『
『なっ!? あのムッツリーニだと!?』
「ち、違う!!(ブンブンブンブン!!)」
二つ名の方は主に男子の間で神のように崇められている。
この学校で出回っているグレーゾーンの写真の大半はこいつが撮ったものだからな……
一体いくら稼いでいるのか……
「姫路瑞希が居る!!」
『そうだ!! 彼女が居る!!』
『俺たちには姫路さんが居る!!』
『姫路さん結婚して下さい!!』
「え!? あの、えと……」
実力については何度か言ったから問題ないな。
そして最後の奴、そろそろ止めとけ。本気で嫌われるから。
「島田美波が居る!!」
『た、確か人を殴るのが趣味な!!』
『美波様!! 罵って下さい!!』
「う、ウチが言ったのはそういう事じゃなくて!!」
おいおい、早速誤解させてるぞ……
完璧に自業自得なのでフォローはとりあえずしないでおく。
で、肝心な島田の実力だが、数学とかみたいに日本語が読めなくても解けるタイプの問題に関してはBクラスレベル……だったかな?
数学自体にも日本語が関わってないわけではないので、地力はAクラスレベルまであるかもしれない。
もうちょい日本語が読めればここまで落ちてくる事は無かったろうな……
「そして、吉井明久と空凪剣も居る!!」
シ~~~~ン…………
おいお前ら、覚悟は良いか?
……何て冗談はさておいてだ。雄二よ、これ以上名前を出す必要はあったのか?
『誰だそいつら』
『そんな奴居たか?』
『何か大したことなさそうな奴らだな』
「ちょっと雄二!! 何で僕の名前がオチ扱いなのさ!!」
「オチ? 何を言っている。
お前ら、知らないようなら教えてやる。こいつらは『
えっと解説すると観察処分者とは……
「まぁ誰にでもなれるものじゃないわね」
「バカの代名詞とも言われておうのぅ」
「そうだ。居てもいなくても変わらんような奴らだ」
「オイコラテメェら覚えとけよ?」
「あ、あの……観察処分者って何ですか……?」
姫路は存在すら知らなかったようだ。まぁ、その性質を考えると無理も無いんだが。
「えっと、観察処分者っていうのはね、物理干渉能力を持った召喚獣を使って雑用とかをこなす人の事だよ」
召喚獣は立体映像みたいなもんで(実際には少々異なるようだが)物に触れる事はできない。
だが、設定をいじれば物に触れる力、物理干渉能力を得る。
この召喚獣の腕力は明久の悲惨な点数であっても成人男性の軽く10倍はあるので力仕事に非常に役に立つ。
「今さりげなく罵倒された気がしたんだけど?」
「……気のせいだろう?」
何か今日の明久は鋭い気がするなぁ……
「それって、凄く便利ですよね?」
「残念ながら現実は一方的に便利なんて事は無い。
観察処分者仕様の召喚獣はフィードバックがあってな、
召喚獣の疲労の一部は本体に帰ってくるし、攻撃されれば痛覚の一部が体を襲う」
そんな物騒なものに任命されるのはよっぽどの問題児だけであり、故にバカの代名詞とも呼ばれているわけだ。
『つまり、戦えない奴が二人も居るのか』
『使えないな』
「……まぁそれは置いといてだ」
一体今までの会話は何だったんだ……?
「この空凪剣にも二つ名がある。
『
『ま、まさかあいつが!?』
『伝説の相打ちの男!?』
むしろ僕と結びついてなかった事が驚きなんだが……
以前、体育の授業中に鉄人と何かの武術の試合っぽいものをやったんだけど……
……勝っちゃった。
授業だという事もあってかなり手加減してくれていたはずなんだけどね。(それでも僕以外に勝った者は居なかったが)
その勝ちを収めた直後に気力を使い果たして昏倒した事と、僕自身の名前から相殺の魔剣の二つ名が付けられたらしい。
「俺は今回、こいつを副代表に任命する!!」
『おお!! あいつが!?』
『それって見かけ倒しの役職だよな!!』
副代表か。
クラス代表と比べるとその権限は驚くほど少ない。
誰かがさっき言っていたが、ほとんど名前だけの役職と言っていいだろう。
ま、名前だけであっても肩書きがあると箔が付くから、ありがたく貰っておこう。
クラス内での発言とか、他クラスとの外交とか、結構便利だ。
……多分。
「当然、代表である俺も全力を尽くす!!」
『確か坂本って神童とか呼ばれてたよな?』
『って事は試験で不調だっただけでAクラスレベルなのか!?』
あいつの実力ならEか、良くてDだろうが……黙っておこう。
……あくまで、テストで採点できる分の実力……だがな。
「教師連中も本当に愚かな事をしたな。
最低辺だと呼ばれているクラスに、こんなにも有能な奴らが集まってる。
さぁ、勝ちたい奴はペンを取れ! 決戦の刻は近い!!
俺たちFクラスの真の実力を! 上に居る優等生供に見せつけてやろうぜ!!」
「「「「「オオオオオオーーーー!!!!!」」」」」
「お、おー……」
姫路さん、ノリが分からないなら無理に頑張らなくてもいいんだよ?
「それじゃ剣、副代表としての初仕事だ。
Dクラスに宣戦布告してきてくれ。開戦時刻は……今日の午後。昼休みが終わってからだ」
「参考までに訊いておくが、下位クラスの宣戦布告の使者って、エラい目に遭うよね?」
死者……では無いと信じたい。
「何を当然の事を訊いてるんだ。行ってこい」
逝ってこい……では無いと信じたい。
「そうだな。行ってくる」
「あ、あの、さっき大変な事になるって聞いたんですけど……どういう事なんでしょう?」
「ん? ああ。試召戦争は上位クラスにとっては何のメリットも無いからな。
おまけに潰れた授業は夏休みとかに補習が入る。
そんな面倒な事をされたら使者が暴行を受けるのはある意味当然だな」
「ぼ、暴行って、空凪君は大丈夫なんですか!?」
「当然だ。何たってあのダーインスレイヴだからな」
※本作中のダーインスレイヴに関する情報は誤りです。
正確には『一度鞘から抜いたら誰かの命を喰らい尽くすまで鞘に戻らない剣』
とかなんとか。
この情報に関して一切保証しないのでご了承下さい。