バカ達と双子と学園生活   作:天星

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03 一回戦

  ……清涼祭 一日目……

 

「流石はAクラスの企画だな。そこら辺の店くらい越えてるんじゃないか?」

「当然よ。2クラス動員してるんだから、これくらい出来ないとね」

 従業員数100人か……

 委員会や部活関係で別行動の人も居るだろうが、それでも凄い人数だよなぁ……

 ……まぁ、僕自身も召喚大会に出るからちょくちょく抜ける訳だが……

「ところで、坂本君の姿が見えないけど、給料さっ引かれたいの?」

「まあ落ち着け。多分もうすぐ……」

 

ガラガラッ

 

「うーっす、戻ったぞ」

「おう雄二、お帰り」

 トーナメントの科目指定をしてきたのだろう。

 後で見せてもらわないとな。

「調子はどうだ?」

「バッチリだ。男子連中の一部が何気に料理が上手いからな」

 康太はまだ何となく分かる。

 明久も何気に上手い。

 そして……意外だったのが須川だな。もう3人だけで厨房が回せそうだぞ?

「店じゃなくて大会の方を訊いたんだが……」

「愚問だな。僕を誰だと思ってる」

 次回の試召戦争の為に準備をしておいたからな。

「お前は最初から心配してないが……明久の方は?」

「……それもそうだな。お~い明久!」

『な~に~?』

「召喚大会の準備は大丈夫か~?」

『大丈夫だよ~!!』

 厨房から出てこっちに来てくれると凄く助かるんだが……

「ごめんごめん、手が離せなくって。どうしたの?」

「……いや、済んだ」

 店の為に頑張ってくれてたんだからな。仕方ないか。

「あれ? あんたたちも召喚大会に出るの?」

「うぅん、空凪君ですか。強敵ですね」

 この2人も出るんだよな。雄二は対策はしてあるって言ってたけど……

「ま、お互い頑張ろう」

「あの……吉井君も出るんですか?」

「え? うん」

「もしかして……優勝賞品が狙いですか?」

 ……間違ってはいないな。

「まあ……そんな所かな」

「……誰と行く気ですか?」

「へ?」

「そうね、吉井、誰と行く気なの!?」

「島田さ、ちょ、落ち着いて!!」 

 ペアチケットの事を言ってるんだろうな……

 姫路が完全に誤解するのはまだ分かるんだが……島田よ、お前は他に心当たりが無かったのか……?

 とりあえず適当にフォローするか……

「僕の指示だ」

「「「へっ??」」」

「次の戦争に備えて、試験召喚システムに関係する二つの腕輪を獲りに行く。

 だが雄二と一緒に抜けるのもマズいと思って明久を指名して……

 ……ん? 僕何か変な事言ったか?」

「い、いえ、何でもないです」

「そ、そうよね。吉井が誰かを誘う訳無いもんね!」

 色々とギリギリ間違ってないんだが……その発言の意図を問いたいな。

 まあ今はいいか。

「……それをAクラスのど真ん中で言って良かったの?」

「構わん。優勝者が誰かなんて後で簡単に分かるだろ?」

 それよりそろそろ……

 

 ピンポンパンポーン

 

  『間もなく、召喚大会第一回戦が始まります。

   出場選手は、競技場に集まって下さい』

 

 ピンポンパンポーン

 

「じゃ、行ってくる。雄二、頼んだぞ」

「ああ。全力でブチのめして来い!!」

 

 

  ……競技場……

 

 

『それでは、試験召喚大会第一回戦を始めます』

 

 アナウンサー 兼 審判 兼 立会い教師は数学の木内先生。

 で、相手は……

「頑張ろうね、律子」

「うん!」

 何か見たことがあるような、無いような……

 ついさっき雄二から貰ったトーナメント表によれば……2ーBの『岩下(いわした)律子(りつこ)』さんと『菊入(きくいり)真由美(まゆみ)』さんか。

 そういえばBクラスの教室に居たような居なかったような……

 まあいいや。誰であろうとなぎ倒すだけだ。

 

『それでは、召喚してください』

 

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 [フィールド:数学]

2ーB 岩下律子  179点

2ーB 菊入真由美 163点

 

 Bクラスの中堅……と言ったところか。

「それじゃ、僕達も召喚しようか」

「ん、そうだな」

 敵前逃亡で不戦敗なんざ御免だからな。

「「試獣召喚(サモン)」」

 

2ーF 吉井明久 63点

2ーF 空凪剣  400点

 

 「「「…………ゑ?」」」

「さて始め……どうしたお前ら?」

「いやいやいいやいやいや!!!! その点数は一体なにさ!!!」

「お前な、新学期が始まってから清涼祭までに何日あったと思ってる。

 とっくに完全補充済みだよ」

「ちょっと!! 400点って腕輪持ちじゃない!!」

「そんなのに勝てる訳がっ!!」

 微妙に過剰反応な気もするが……何か腕輪に対してトラウマでもあるのか?

 まぁ、僕の腕輪の能力は相手が腕輪持ちじゃないとかなり制限されるんだけど……

 

『それでは、始めて下さい』

 

「くっ、片方が腕輪持ちでも、もう片方は雑魚よ!! 2対1なら勝機はあるわ!」

「そ、そうね! 行きましょう!!」

「ざ、雑魚って……」

「ふむ、歩調といい、意思疎通といい、なかなか息が合ってるな」

「フッ、そうだね。でも、本当のコンビネーションと言うには程遠いね!!」

 えっ? そこまでか……?

「何を失礼な!」

「私たちのチームワークは完璧よ!!」

 完璧……も言い過ぎな気がするがな。

「そこまで言うなら見せてあげようじゃないか。

 剣、行くよ!!」

「いいだろう。僕達のチームワーク、見せてやろうじゃないか!!」

 よし明久、まずは……

「「援護(この戦い)は任せた!!」」

 僕の召喚獣は敵に突っ込んで行き、明久の召喚獣はまるで鏡のように相手から離れ……ってオイコラ。

「何逃げてんだこの野郎!!」

「え~、だって剣一人でも十分でしょ~?」

 否定出来ないのがなんとも。だがな……

「…………いいだろう。真の、究極のコンビネーションプレイというものを見せつけてやろうじゃないか……」

「え? あの、剣? 目が笑ってないんだけど……」

「ハッハッハッ……気にするな。

 逝けっ!! 明久ミサイル!!」

「え? ちょっ!! ぐぺぁっ!!」

 明久の召喚獣を自分の召喚獣で掴んで相手に投げ込む。

「よく分からないけど……チャンスよ!」

「ええ、先にこのバカを仕留めるわよ!」

「おい明久、死にたくなきゃ全力で働け!」

「んな無茶なっ!! おわっ、ちょっ!!」

 ふ~む、流石は観察処分者。2対1でもちゃんとほぼ無傷で防いでるよ。

 さてじゃあ……

「喰らえやっ!!」

 

ビュン サクッ!

 

2ーB 菊入真由美 Dead

 

「えっ!?」

「今だっ!!」

 

ズバッ!

 

2ーB 岩下律子  Dead

 

「っ!!」

「……これが、チームワークというやつだ。

 ……一応」

 明久を囮にして僕が距離を置いて援護する。

 そして一人倒した隙を突いて明久がもう一人を撃破するという完璧な作戦だ!

 援護と言うには威力が高すぎた気もするが……気にしてはならない。

「うぅぅ……負けちゃったかぁ……」

「うん……そうだね……」

「運が無かったな。僕達が相手じゃなければもっと上まで行けてたと思うぞ」

「そんな風に励まされてもねぇ……」

「そして、チームワークに関してだが……」

「剣ィッ!! さっきはよくもぐぺあっ!!」

「……とりあえず、背後から襲ってくるようなチームメイトよりはずっと良かった……と言っておこうか」

 彼女らにとって全く助けにならない情報な気がするがな……

 

『勝者、吉井、空凪ペア!』


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