「……ん? お前たちどうした?」
明久と島田と秀吉がなにやら話し込んでいる。
割と珍しい組み合わせ……かもしれない。
「あ、えっとじゃな……」
「剣、お願い。この企画絶対成功させて!!」
「企画を成功させるのは当然だが……何かあったのか?」
「う~ん……まあアンタならいいか。
一応内緒の話だからね?」
一呼吸入れてから島田が話し始める。
「瑞希なんだけど……あの娘、転校するかもしれないの」
「……なるほど。確かに成功させないとな」
「今の一言だけで理解するとは、明久とは大違いじゃな」
「その明久はどうしたんだ? 一言も喋ってない気がするが……」
「さっきからフリーズしておるのぅ……」
明久の様子を確認すると……
「……ハッ!! 秀吉、僕がモヒカンになっても好きでいてくれるかい……?」
「……何を言っておるのじゃ?」
「……フンッ!」
「ぐぺぁっ!! ハッ! 僕は一体何を……」
『ハッ!!』って台詞の後でまだ正気に戻って無かったみたいだな。
「えっと、姫路さんが転校ってどういうことさ!!」
「そのままの意味よ。何とかしないと瑞希が転校しちゃうかもしれない」
「島田、それだけじゃ明久には伝わらないぞ。
そうだな……明久、Fクラスをどう思う?」
「え? どう思うって言われても……」
「じゃあ、このAクラスの設備と比べてどう思う?」
「最悪だと思う」
「じゃあ、Aクラスに入れるはずが何かの手違いでFクラスに入れられたら?」
「それはもう最低最悪だね」
「そ、その最低最悪な状況に置かれているのが姫路だ。
姫路の親はどう思う?」
「そんなの、一刻も早く連れ出したいに……あ」
明久も気づいたみたいだな。
「ま、ご両親が怒るのも無理は無いわなぁ」
主に姫路の為の振り分け再試だったんだが……本人の意志が一番重要だからな。
「つまるところ『設備の質』。これがFクラスが抱える問題の一つ目。
これは清涼祭の収益次第でどうとでもなる」
「一つ目って事は、他にもあるの?」
「ああ。と言っても本質的には違わないがな。
ぶっちゃけると『教室の質』だ」
「教室の質?」
「設備の質と変わらない気がするのじゃが?」
「付属品ではなく、建物自体の質だ。
数週間あそこの床下を改造したりしてて深く実感したが、あの建物の衛生状態は訴えられるギリギリと言っても過言ではない。
これを改善するには専用の工事をしてもらう必要があるから、収益金だけではどうにもならん」
「それじゃあどうすることも出来ないって事?」
「いや、僕達の手に余るならもっと上に相談すればいい。
学園長に直訴すれば動かざるをえないはずだ」
「そっか。じゃあ大丈夫なんだね?」
「多分な。そして最後に一つ」
「まだあるの……?」
「ズバリ、『クラスメイトの質』だ。
明久、Fクラスの連中をどう思う?」
「バカだと思う」
「お前も含まれてるがな」
「なにおう!?」
「少なくとも客観的な評価という意味ではお前が一番目立ってるかもな。
親だったら自分の子供が素行の悪い不良とつるんでていい顔はしないだろ?」
「そこまでFクラスの評価は悪いのかのぅ……?」
「『学力最低クラス』。
この称号だけで学年順位一桁の生徒には十分な悪評だ」
「そういうものなのかのぅ……」
要はFクラスの評価を上げられれば良いわけだが……何かあったかな?
「それについては手は打ってあるわ」
「ほぅ? 聞かせてくれ」
「清涼祭の試験召喚大会。
そこでウチと瑞希が組んで優勝すればFクラスの評価を上げられるわ!」
「なるほど。良い案だ」
出来れば姫路以外のFクラス生徒が優勝したいが……とりあえずいいか。
「この三つの問題に対して、現在出来る事は一つだな。
企画成功に向けて頑張ってくれ。
……さっきから光が睨んでるし……」
「わ、分かったのじゃ」
「が、頑張るわね」
「う、うん」
じゃ、とりあえず働くか。