バカ達と双子と学園生活   作:天星

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「さあ行ってみましょ~。

 陽炎Lv.1さん、
 想星さん、
 枝垂桜.さん、
 クロードさん、
 RC314さん、
 蒼龍さん、
 光明さん、
 犬きち1993さん、
 青空猫さん、
 泡沫´さん、

 感想ありがとうございました!

 では、スタート」


27 死の淵で求めた名前

『第二学年、及び第三学年の皆さんにご連絡です。

 たった今、三年の代表が戦死しました。

 第二学年の勝利です!』

 

 僕達の勝利を告げる放送が鳴り響く。

 達成感は……あんまり無いかなぁ……

 

「お疲れさまでした。空くん」

「ああ、やっと終わったな。この壮大な寄り道が」

「……高城先輩、覚えていらっしゃいますね? 明日からあなた達の教室はFランクに降格です」

「バカな……有り得ない、有り得ない……」

「……聞いてないですね。まあいいです」

 

 放心状態になるとは。失敗に対する免疫が付いてなかったのだろうか?

 ある意味でエリートらしい性格だったのかもな。

 

「それじゃあ、帰りましょうか」

「そだな」

 

 

 

「そう言えば空くん」

「何だ?」

「凄い点数を取ってましたね。

 どうやったんですか? まさか、『死の淵から帰ってきたから』ってだけじゃないですよね?」

「いや、それで大体合ってるんだがな……」

「それだけで納得するのは吉井くんくらいですよ。

 もっと詳しく説明してくださいよ」

「僕もはっきりと分かってるわけじゃないんだがなぁ……」

 

 少し間を置いて、頭の中で情報を整理する。

 

「……夢を見た」

「夢?」

「僕が睡眠薬で眠ってた時の話だ。

 そこで僕は狭い部屋の中で自分の本質についてずっと考えていた。

 おっと、何で考えてたとか訊くなよ? 夢なんだから理由なんて分からん」

「あ、はい」

「僕はかつて、自らの本質は剣だと言った。

 そしてお前は僕の本質は鞘だと言ってくれた。

 どちらが正しいのか、目の前にこれまた何故か置いてあったダーインスレイヴを前にずっと悩んでいたんだ」

「昏睡状態の間、ずっと悩んでたんでしょうか……?」

「だとしたら凄く悩んでたんだな……

 とにかく、もの凄く悩んでた後にふと気づいたんだ。

 そうだ、鞘から抜いてみたらわかるんじゃないかって」

「あの、妙にしっかり覚えてますけど本当に夢の話なんですよね? 妙な話で誤魔化そうとかしてないですよね?」

「してないしてない。なんなら合言葉使っても良いし。

 それでだ、今度はダーインスレイヴを抜くかどうかを悩んでてな……」

「悩みっぱなしですね」

「ああ。ホントに奇妙な夢だったよ。

 で、紆余曲折あって抜いたんだが……そこから何が出てきたと思うよ」

「何ですか?」

「赤錆だらけのボロッボロの剣だ。

 かの有名な伝説の魔剣かと思いきや、それは僕達が見ていた虚像であり、実際はただのハリボテだったってわけだ」

「……そう、ですか」

「そう、これが僕の本質だ。

 ただのハリボテの剣と鞘」

 

 自身の限界以上の能力を強引に引き出して強いように見せかける存在。

 実際問題として、素の実力はほぼ全ての面において姉さんに劣るだろう。

 相手が天才なのだからむしろ当然なのだが……この奇妙な異能を得た当時の自分にそんな事は理解できてなかった気がする。

 ああ、怪我の治りが速いのも関係してるかもな。無事であるようにふるまえるようになるまで治るのはかなり速いんだが、そっから先が異様に遅いんだよ。話す必要も無かったんで誰にも話してないけど。

 

「…………」

「どうした? ほら、ここ笑うとこだぞ? 嗤ったらどうだ?」

「空くんっ!!」

「……冗談だ。とりあえず最後まで話をつづけるぞ。

 せっかくだから名前も付けてやったよ。『虚構の魔剣"空剣(からつるぎ)"』。

 どうだ? カッコいいだろ」

「……カッコいいですかね?」

「……でだ、もの悲しくなって俯いていると、どこからか声が聞こえたんだ。

 『私は失望なんてしない。ありのままのあなたを見せてほしい』ってね」

「誰かの? 誰の声なんですか?」

「……想像に任せよう。

 続けるぞ。『私が新しい鞘になる。あなたの全てを見つめて、あなたを呪いから開放する』

 ……こんな感じだったかな」

「それで、どうなったんですか?」

「終わりだ。

 次の瞬間には目が覚めていて、何か体が軽かった」

「……そうですか、ところで、誰の声だったんですか?」

「でだ、この奇妙な夢で注目すべきは謎の声の『呪いから開放する』って言葉だ。

 呪い、魔剣のデメリット、つまり、時間制限やその他を消し去ってくれたんじゃないかと思う」

「不思議な話ですね。ところで……」

「この学校のシステムも不思議だから今更だ」

「そうですけどそうじゃなくて」

「まあいいじゃないか。何でこんな事になったかなんてさ」

「それもそうですねそれで……」

「……ああ、鞘の方にも名前を付けたぞ。聞きたいか?」

「いえ、だから……」

 

「命名する、『解放の魔剣鞘(まけんしょう)"凪路(なぎみち)"』だ。どうだ、カッコいいだろ?」

 

 その名前を聞いて瑞希は驚いたような顔をした後、微笑みながらこう言った。

 

「そうですね。とても良い名前だと思います」




「今回の章を書く前の段階の話だが、この辺の話のサブタイにはもう一つ候補があった」

「へ~、どんなの?」

「『 he is the vessel of dark sword.』
 ……面白いタイトルだろ?」

「…………これは……」

「この文にはちょっとした仕掛けがある。いや、仕掛けなんて大したもんじゃないが。
 せっかくだから答えは言わないでおこう。
 ヒントとしては……文としてちょっとおかしい所があるって事かな」

「ああ、やっぱり。
 ところで、何で没になったの?」

「今回の話のくだりで書いた事をどういう風に書くかがまだ決まって無かったからな。
 最初の案は各話の冒頭に僕が悩んでる場面を小出しにする……って感じだったんだが、色々と面倒だったりしたんで最後にまとめる形になった。
 そしてその途中で使うサブタイの予定だったんだよ」

「途中で……なるほどね」


「さて、次回が最終話で、今回の戦争の締めやら何やらの話になるから僕の物語、虚構の少年の物語は今回の話が実質的な最終話となるわけだがいかがだっただろうか?」

「虚構の少年に開放の少女ってわけね。
 最後は虚構じゃなくて本物になってた気がするけど……まいっか」

「鞘を得る事で本物になったって事だな。
 この辺を後付けで作ったにしては上手い事まとまってただろ?」

「…………え、後付けだったの!?」

「ああ。まあな。
 ここだけに限らず途中で色々と修正を繰り返しながら書き進めてたからなぁ……
 リメイクすればより整合性のとれた作品に仕上がるはずだ。
 ……そんな気力は全くないが」

「あ、そ、そう……」


「あと、凪路のおかげで僕の能力も大幅に変わっている」

「あ、それ気になってたのよね」

「まず、集中モードの使用時間が3時間に延長されている。
 普通の人でも3時間も集中が持つ人はそうそう居ないから、弱点は完全に解消されたと言えるな」

「人外になったわね……」

「但し、その時の能力は1割ほど低下している。
 まぁ、1割で済んでいるだけでも十分なんだがな」

「う~ん……チート過ぎない?」

「これは本作には全く関係ない裏設定なんだが……
 本来、凪路の能力は『対となる装備のデメリットを打ち消す代わりに使用者の能力を1割に低下させる』なんだ」

「一割()? 一割()ではなく?」

「空剣と組み合わせた時のみ()になるって設定だな。
 本作ではそれ以外と組み合わせる気が無いから意味のない設定だが」

「なるほどねぇ」

「だから、僕が使った時のみチートの性能を発揮するわけだな。
 こういう設定もまあ面白いだろう?」


「あ、そうそう、前回のアレの解説を書いておいた」

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=123591&uid=39849

「あの新言語ね……」


「では、明日もお楽しみに!」

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