バカ達と双子と学園生活   作:天星

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21 瞬間最高得点者

「……て、

 起きて、剣!!」

「んぁ? 終わったか?」

「ああ。終わった」

「そうか。じゃ、戦後対談だな」

「え? 結果は訊かないの?」

「愚問だな明久。僕達の代表が勝ったに決まってるだろ?」

 だって、雄二の顔は、どこか吹っ切れたような、晴れ晴れとした表情を浮かべていたから……

「…………勝ったよね?」

 やっぱ訊いとこ。

「ああ!! もちろんだ!!

 頼んだぜ!!」

「りょーかい」

 

 

「さて、この後どうしましょうかねぇ。

 Aクラス副代表の空凪光さん?」

「副代表じゃないけど……まあいいわ。

 今回の交渉の代表者だし」

 ん? そうだったか。まあいいや。

「この後の展開としては……

 1、総力戦を行う

 2、引き分けにして戦争自体を無効にする

 3、延長戦を行う

 4、対談にてどちらかの勝利とする

 ……こんな所か?」

「4に関しては論外だと思うけど?」

「そうだな。言ってみただけだ」

 お互い譲る訳が無いからな。

「1は一瞬で終わっちゃうと思うんだけど」

「うん。受けてくれたら楽だったけど、まぁ無理か」

 Aクラス代表が戦死している状態なので通常ルールにシフトした瞬間に決着が着く。

「妥当なのは2か3ね。

 私としては3が良いけど」

 ここで延長戦になった場合一気に不利になる。

「僕としては2の引き分けで十分だと思うけどねぇ……」

「そんな終わり方したらまたすぐに攻めてくるでしょ?

 それに、精神的な意味でも、ちゃんと勝っておきたい」

 困ったなぁ……

「……そうだ。こんなのはどうだ?

 5、引き分けだった一戦をやり直す」

「うぐっ!」

「当然、科目の選択からだ。

 どうなるかは……分かるな?」

 保健室で十分休めたし、400点越えの科目がいくつかある。

 その状態で工藤と戦ったら……断言しよう。間違いなく僕が勝つ。

「………………

 仕方ない。手札を切るわ。

 CクラスとDクラスの教室を見てきなさい」

「何……?

 ……まさかっ!!

 須川っ!! 急いで確認してきてくれ!!」

「え? 了解!」

 

  …………

 

「どうだった?」

「特に何も……

 Dクラスは普通の教室で授業を受けていたし、Cクラスはちょっぴり豪華な設備で授業を……

「なっ!! それは本当か!?」

「あ、ああ……そうだけど……」

 ……随分と面白い事してくれるじゃねぇか姉さんよぉ……

 Cクラスは本来ならランクダウンしているはずなので、Dクラスと同等の設備のはず。

 それが違うって事は、Aクラスは完全には決着を付けなかったんだな。それこそFクラスのように。

 今、僕達はFクラスがした事と全く同じ事を返されてる。

 相手にとっての好条件を飲まなければ……はぁ……

「そうまでして完全勝利が欲しいのかよ。

 引き分けじゃ満足出来ないってのか?」

「ええ勿論。

 だって、どこのクラスも戦争が仕掛けられるんだもん。

 きっちり勝利しないと、今よりもっと大変な事になるから」

 それは困ったなぁ……どうしたもんか……

「…………………………

 

 いいだろう。徹底抗戦してやるよ。

 延長戦の要求、受け入れてやる!」

「そう来なくっちゃ♪」

「ただし、勝負条件の選択権をくれ」

「それくらいなら構わないわ」

 ……さて、

「なぁ雄二」

「どうした? 謝罪なら受け取らんぞ」

「当然だな」

 信頼してくれているから、僕が間違えた可能性なんて微塵も考えちゃいない。

 そしてそれは……事実だ。

「で、誰を出すの? 須川君?」

「そんなもん……

 

 

 

 僕が出るに決まってるだろう」

「ッ!? あんたはもう

「もう出てるって? それは甘いな。

 高橋先生、今回の戦争の特殊条件である5対5の団体戦ですが……

 確かこういう取り決めでしたよね?

 『お互い5人ずつ選出して5回勝負』」

「そうだったと記憶していますよ」

「この取り決め、一人の出場回数は暗黙の了解で一回となりますが、

 これがもし、5回ではなく6回だったら、一人だけ二回出場する事になる。

 そうですよね?」

「そうですね……

 そういう風に捉えるのではなく、完全に独立した一戦と捉えるべきかもしれませんが」

「……だ、そうだ。

 光、何か反論は?」

「くっ……一体いつから仕込んでたの!?」

「ついさっき。

 徹底抗戦するって決断したら自然と出てきた」

「……はぁ……失敗した。完敗よ。

 でも、ちょっとだけ足掻かせてもらうわ。

 命令権だけど……アレに関しては第六試合は除外させて」

「そうだな。いいよ」

 ここでゴネると取り決めの定義がどうたらこうたらで僕の2回目の出場が取り消される恐れがあるからな。

「一応、微かな望みだけど……こっちからは代表を出すわ」

「ああ。僕も二回目だからな。問題ない」

「……頑張る」

「じゃ、指定しなさい。対戦方法を」

「ああ。科目は……そうだな、物理で良いか」

「…………で?」

「召喚獣バトルではなく純粋な点数対決。但し…………

 

 

 

 

 

 制限時間は5分だ」

「??」

「はぁ……でしょうねぇ……」

「では、問題を持ってくるので、別室で待機していて下さい」

 

  ………………

 

「制限時間は5分です。それでは……開始!」

「「………………」」

 ………………

「止め! ペンを置いてください。

 採点しますので、Aクラスで待機していて下さい」

 

  ………………

 

「それでは結果を発表します。

 まず、Aクラス霧島翔子、

 58点」

 まぁ5分ならそんなもんだろう。

 仮に素の点数を400とすると単純計算で33.3点。

 最初の方が問題が簡単だからその2倍……には届かなかったようだが。

「続いて、Fクラス空凪剣、

 

 

 108点」

「っ!!」

 そしてその400点を僕は半分の時間で取る。

 どういう意味かは……分かるな?

「代表がある程度長い時間における()()最高得点者なら、

 剣はより短い時間における()()最高得点者。

 あんな短い時間での点数勝負で勝てる訳が無い」

「やったな!!」

「剣、やったね!!」

 祝福ムードに包まれるFクラスの皆。

 …………はぁ……ため息つくのは今日で何度目だ……?

「さて、Fクラス、及びAクラスの全員に言っておく。

 ……Aクラスの設備は要らん!!」

「…………え?」

「…………はい?」

 

 「「「「「「「「「「ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」」」」」」


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