バカ達と双子と学園生活   作:天星

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19 表(=裏の裏)

『それでは、第三回戦を始めます。

 各クラスの代表者は前に出て下さい』

 さきほど雄二が科目を交互に決めようと言ったので、今回はこっちが決める番だ。

 となると……

『…………(スック)』

 康太(保健体育)になるな。

 その一つの科目に対する彼の情熱を侮ってはいけない。

「で、相手は?」

『空凪光。お前の妹だな』

 光かよ……厄介だな……

『そういえば、お前の妹って強いのか?』

「僕の妹だぞ?」

『……なるほど、大体分かった。

 気を引き締めて行かないとな……』

 と言っても正確な点数は把握してないんだけどね。

 400点越えてたら……ヤバいかもしれない。

 

『それでは科目は何にしますか?』

『…………保健体育』

『ホントは君の相手は愛子がする予定だったんだけどね~。

 ま、お手柔らかに』

 アイツの腕輪の特性を考えると、場合によっては本当にお手柔らかに行った方が良いかもしれないな……

『んじゃ、試獣召喚(サモン)

『…………試獣召喚(サモン)

 

 [フィールド:保健体育]

Aクラス 空凪光  428点

 

Fクラス 土屋康太 572点

 

 『凄い点数だ!!』

 『流石ムッツリーニ!!』

 『これなら勝てる、絶対勝てる!!』

うん、点数は勝っている。

っていうか最後の奴、死亡フラグ建てるのやめてくれ。

 

『…………加速』

 あ、ヤバッ、

 

キィィン

 

『っ!!』

 一瞬だけ康太の召喚獣がフリーズする。

 その隙を見逃してくれるほど……甘くは無いよなぁ……

『隙アリっ!!』

『くっ……』

 

Aクラス 空凪光  398点

 

Fクラス 土屋康太 374点

 

 わ~お。流石は高得点保持者。

 点数がごっそり削れたよ。

 そして点数抜かれたよ。

『おい、今のは……』

「光の腕輪の能力だよ。

 他の腕輪を発動しようとした瞬間に自動で発動し、相手の腕輪の発動と、ついでに一瞬だけだが動きを封じる」

『知ってたのか!?』

「悪いな。お互いに言わないという協定を結んでてな」

『くっ、そうか……なら仕方ない』

 腕輪の能力はさっき言った分だけじゃないんだが……協定によりここで言う事は出来ない。

 

 結論を言うと、この試合は光が勝った。

 康太も善戦したんだが……残念ながら届かなかった。

『やっと一勝ね。

 命令権に関してはとりあえず保留させてもらうわ』

 まぁ、持て余すよな普通……

 

『まさか康太が保体で落とすとはなぁ……』

『…………面目ない』

「気にするな。僕が言うのもアレだが相手が悪かった」

 これで一勝一敗一分。どうなるかなぁ……

 

  …………

 

『それでは第四回戦を始めます。

 各クラスの代表者は前に出てきて下さい』

 大将戦は代表同士で行うというのは協定で決まっているので、雄二以外の人となると……

『姫路、頼んだぞ』

『はいっ!』

 ここで使わなかったら宝の持ち腐れも良い所だ。

 で、相手は……

『僕が行かせてもらうよ』

 久保(くぼ)利光(としみつ)

 前に一回だけ話した……

「同性愛者だな」

「ま、間違ってはおらぬのじゃろうが……」

「冗談だ。この場合、『学年次席』と言うべきか」

 本来の……っていう言い方もおかしいけど、本来の実力なら光の方が上だ。

 ただ、アイツってテストの点数に執着しないからなぁ……良くも悪くも。

 

『では、科目を選んでください』

『総合科目でお願いします』

 

 なるほど。相手の弱点を突いたり、自分の得意分野で戦うのではなく、正々堂々と正面から挑むという訳か。

 学年次席としてのプライドみたいなもんかな?

 

『では、召喚して下さい』

「「試獣召喚(サモン)!!」」

 

 [フィールド:総合科目]

Aクラス 久保利光 3997点

 

Fクラス 姫路瑞希 4409点

 

 桁がおかしく見えるがこれが正常だ。

 総合科目は10科目の合計点がそのまま現れる。

 一科目当たりの点数に直したらそれぞれ400と441点ってとこだな。

 点数では……勝っちゃってるよねぇ……何か負ける気がするなぁ……

 ちなみに腕輪を装備できる点数は400点だが、総合科目の場合はそのまま10倍で4000点だ。

 姫路は腕輪が使えるが、久保は使えないという事になる。

 

『ぐっ、点数を上げたね姫路さん……

 だが、勝負はまだ分からない!!』

 

 試合が始まった以上僕にはもう何も出来ないんだが……暇つぶしにこの後の展開でも予測してみようか。

 僕が仮に久保だったらどう動くか?

 まず、点数で不利なので他の何かでその不利を覆す必要がある。

 戦闘経験は……姫路と大して変わらない気がするな。

 雄二のように奇策を思い付いても……実行できるだけの器用な操作技術も無いだろう。

 となると……アレを使うかな?

 

  ……3分後……

 

Aクラス 久保利光 1723点

 

Fクラス 姫路瑞希 2605点

 

 単調なぶつかり合いを繰り返し点差は更に広がった。

 でも、これ僕の想定の中で最悪のシナリオなんだけど……

 召喚獣の点数はRPG風に言うなら攻撃力と防御力とHPになる。

 単純なぶつかり合いをしているだけだとこのように点差が広がっていくのは誰にでも想像が付く事であり、それはつまり……

 

『そこです!!』

『っ、はぁぁっ!!!』

 

 あ、戦局が動いたらしい。

 姫路よ、油断しすぎじゃないか? そこで腕輪を使うっていうのはアウトだろう……

 

Aクラス 久保利光 1713点

 

Fクラス 姫路瑞希 1605点

 

 久保の残された手札は『弱さ』くらいしか無かった。

 自分の実力を偽り、相手に弱く見せる事で油断を誘った。

 その結果……こうなった。

 召喚獣の操作は簡単なものなら一年生の時に実習でやっているので、横に思いっきり跳ぶくらいなら誰にでも出来る。(受身を無視すればだが)

 それに加え、あの熱線は僕が第一試合の時に見せてしまっているからな……

 事を急いた姫路が負け、諦めずに僅かな可能性の隙間を突いた久保の勝利だ。

 Fクラスとしては残念な結果ではあるが……まぁいいか。

 これで、一勝二敗一分……と。


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