まずは恒例のお礼コーナー。
蒼龍さん、
泡沫´さん、
光明さん、
クロードさん、
走り高跳びさん、
想星さん、
夢見る青年さん、
凛@小毬さん、
ダークリベンシャーさん、
火水 総さん、
感想ありがとうございました!
それじゃ、本編スタート!」
「随分と面白そうな話をしてるのね」
不意に聞き覚えのある声が教室に響く。
ドアの方を振り返ると、お馴染みの人物の姿が。
「御空か。こんな朝早くに何をしてるんだ?」
「いや、それこっちの台詞だからね!?」
「どっちもどっちだろうが。で、どうした?」
「せっかく時間ができたんで、Fクラスの戦略を探りに来たってとこかな。
盗み聞きするつもりは無かったんだけど、ゴメンね」
「大した話はしてないし構わん。
そうだろ? 雄二」
「そうだな。大した問題じゃない」
話していたのは『様子を見よう』という事だけだ。
そこまで大きな問題ではない。
……まぁ、致命的ではないというだけで、問題には違いないんだが。
「つまりは小さな問題って事ね。
こんな所で借りを作るのも面倒だし……う~ん……」
なにやら考え込む御空。まあ気持ちは分かるな。
例えば僕がBクラスの戦略を盗み聞きしてしまったら……その代償は後で10倍くらいになって返ってきそうな気がする。
御空ならやりかねない」
「……そうだ。耳よりな情報を教えてあげるわ」
「ほぅ?」
「Cクラス代表の小山さんだけど、最近なんかうちの代表に再び近づいてるみたい」
「……あれ? 再びって事は、一回離れたのか?」
「合宿の件で色々あったらしいわ。うちのクラスは全面的にFクラスに協力してたもんね。Cクラス女子からの反感を買うのは当然の事よ。
特に、小山さんと代表は直接顔を合わせた場面もあったし。
二人の関係はいつの間にか解消されてたわね」
「そうだったのか……それは悪い事をしたか?」
「アレはそもそも坂本くんの作戦だったし、むしろ君たちは被害者だし、気にする事は無いんじゃない?
……君の行動次第では未然に防げた事だと思うけど。私は全然気にしてないから」
「お前も根に持つねぇ……」
「だから、気にしてないってば。ちっとも」
「はいはい。で、その小山が再び根本に近づいてる、と?」
「ええ。最初の試召戦争で見せたみたいな連携を企んでるのかもね」
「連携ってか搦め手か」
あの時は事前の仕込みもあったから逆に嵌める事ができたが……今回はどうなるかな。
とにかく、警戒しておくに越した事は無いだろう。
「お釣りが必要になるレベルの情報だな。
とにかく、助かった」
「いえいえ。ところで、今回も最終目標はAクラスなの?」
「……雄二、パス」
今後の戦略に関する事を独断で話す気は無い。
大人しく雄二に任せた方が良さそうだ。
「俺は言っても構わないが……Bクラスの最終目標を聞いてからだな」
「言うまでも無いでしょ? Aクラスよ」
あっさりと言ってのけたな。
……代表に予め相談してから来たのか、それとも独断でバラしたのか。後者なら根本が傀儡になってるんじゃないかと少し心配になるんだが。
まぁ、確かに言うまでもない事だろうしな。Bクラスより上のクラスはAクラスしか無い。
それ以外の選択肢となると……現状維持とかか。
「そいつは困ったな。俺たちもAクラスが目標なんだよ」
「でしょうね~。取り合いになるわね」
「はっはっはっ、困ったな」
「……念のため訊くけど、譲る気は?」
「あると思ってんのか?」
「いえ、ちっとも」
う~む、こいつは厄介な事になってるな……
こうなってしまうとお互いに『向こうがAクラスとぶつかった後、疲弊した勝者と戦えば良い』という事になってしまう。
そしてお互いに様子を見ている内に二学期が終わる……なんて事もあり得る。
「……じゃ、こうしましょう。
私たちも、少しだけ様子を見るわ。
そして、CクラスがFクラスに仕掛けるようなら、私たちはAクラスに攻める」
「そんなので良いのか? それだとBクラスが不利にならないか?」
「もちろん、いくつかの条件を付けるわ。
まず、なるべくなら理系の教師を使ってほしい。
FCの戦争で理系教師がそっちに流れてくれれば、BAの戦争では文系の割合が多くなってやりやすくなるから」
そう言えば、Bクラスは文系の方が多いんだったか。
根本も現国で400点越えてたし。
しっかしこの条件は……う~む……
明久あたりに多大な影響がありそうだが、それ以外の面子は何とかなるか?
島田とかならむしろ好条件だろうし。
「実技科目は使って良いのか?」
「まあ、良いんじゃない?」
「なるほど。とりあえず他の条件とやらも聞かせてもらうぞ」
「ええ。と言っても、もう一つは口約束程度で良いけどね。
FC,BAの両方の戦争が終わって、なおかつFクラスが勝利していたなら、可能な限り早くA教室を持つクラスを攻めること。
それだけよ」
A教室を持つクラスって言うと、単純にBA戦争で勝利したクラスって事だな。
「それくらいなら構わん。だが、Cクラスが仕掛けてこなかったらどうする気だ?」
「それは……その時に考えましょう」
テキトーな計画だなぁ……まぁ、僕も人の事は言えないんだが。
「そういうわけだから、飲んでくれる?」
「ああ分かった。必要なら紙に纏めてからサインするが、どうする?」
「面倒だし良いわ。坂本くんはともかく、空凪くんが口約束とはいえ約束を破るとは思えないし」
「……お前、信頼されてんなぁ」
「良くも悪くも、な」
そういう事言うと僕の隣に居る彼女がちょっと嫉妬するんで止めてほし……いや、それはそれで見てて面白いし悪くは無いか。うん。
「空くん、今何か妙な事を考えませんでした?」
「……気のせいだ」
一体いつからこんなに鋭くなったのやら。
「それじゃ、またね」
「……あ、ちょっと待った」
「何かしら?」
前回の試召戦争での苦い経験を思い出しながら提案する。
「できれば和平交渉を受けないで欲しい」
「……ああ、なるほど。負けた私たちが教室を維持する代わりにAクラスに味方する事を恐れている、と」
「そういう事だ」
「じゃ、こっちからもお願い。
倒したクラスはキッチリ止めを刺して」
「……だそうだが、どうする?」
これは僕の一存では無理だ。大人しく雄二に尋ねる。
「う~む……仕方あるまい。
但し、Bクラスも同じ条件を受けてくれ」
「それならもう一つ。そっちも和平交渉を受けないこと」
「よし、乗った」
「うん。じゃ、もう一度確認するわよ?
『お互いに戦争で勝った場合は確実に止めを刺して相手を行動不能にし、負けた場合は潔く負けて3ヵ月黙る』
これで良いわね?」
「ああ。書面にまとめるか?」
「そうねぇ……これはまとめておきましょう。破った場合の影響が大きすぎるわ」
「分かった。剣、紙あるか?」
「ほら、書いておいたぞ」
御空の要約はザックリし過ぎていたので自分なりに書き直したものを渡す。
「あとは教師の判があれば正式な協定になるだろ」
「んじゃ、私が持ってくわ」
「ん? そうか。ちゃんと3枚コピーしてもらうんだぞ」
両クラスの控えと教師に提出する分である。
「分かってるって。じゃあね」
「ああ。じゃあな」
交渉を終えて、御空は帰って行った。
次に会うのは戦場か、あるいは……
「……ところで雄二、条件を飲んで良かったのか?」
「何の話だ?」
「BクラスがAクラスに勝ったらBクラスに挑まなきゃならないんだが……Aクラスと戦えなくなるぞ」
クラスの目的としてはA教室だが、雄二個人の目的はAクラスとの戦いだからな。
……まぁ、本人に突っ込んで訊いたわけではないんだが……多分そうだろう。
「何だそんな事か。翔子が簡単に負ける訳が無えだろ」
「……なるほどねぇ」
まぁ、今の話はCクラスが動かなかったら何の意味も無いんだが……どうなるやら。
「よぉっし! 前書きでやんなかった分思いっきり雑談するぜ!!」
「いや、それもどうかと思うけど……」
「作者が1話だけ書いてしばらく悩んだ理由が『Bクラスにどう攻め込ませるか』だったりする」
「漁夫の利を狙った方が明らかに効率良いもんね」
「だからまぁ、『有利な条件を作ってくれるなら、先行してあげるよ』って事になったわけだな」
「私が言うのもなんだけどさ、Fクラスはあの条件で良かったの……?」
「まぁ、問題ないだろう。
急に科目が縛られたならともかく、事前に分かっていればいくらでも対処は可能だ。
むしろCクラスとの点数の差分が少なくなって良いんじゃないかな」
「仮にCクラスの視点から考えるとどうなるのかしらね?」
「ん? まぁ、ちょこまかと逃げられて科目変更で粘るっていうのをある程度防げるから向こうにとっても歓迎できるかもな。
あと、科目が少ない方が戦後の補充が楽だ」
「身も蓋も無いわね……」
「実際そうなんだから仕方ない」
「では、明日もお楽しみに!」