バカ達と双子と学園生活   作:天星

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06 決戦開始

『プレイボール!!』

 

 いよいよ、決勝戦が始まった。

 対戦相手は勿論教師チームだ。

 こちらは後攻になったので、それぞれ守備位置に着く。

 なお、今回僕はセンターに居る。

 ピッチャー、キャッチャーはそれぞれ明久と雄二だ。

 僕がピッチャーやキャッチャーをやろうという案もあったのだが、ピッチャーをやると高い確率でキャッチャーが蒸発。

 キャッチャーはピッチャーに指示を出す立場なので、僕の実力では心許ない。

 雄二たちが召喚大会に本腰を入れるようになってからようやくルールブックを読み始めた素人だからな。野球のセオリーも分からんし、実戦経験も乏しい。いや、一応常識的な事は分かっていたが。

 まぁ、そもそもの前提として、キャッチャーにはそこまでの点数が要求されないんだけどな。

 ……ちなみに、ピッチャー瑞希、キャッチャーが僕という禁断の組み合わせも一応は検討されたが、ストライクゾーンに入る確率が低すぎるという理由で却下された。

 

「はは……野球なんて何年ぶりでしょうかね。試獣召喚(サモン)

 

 化学教師の布施先生がトップバッターとしてバッターボックスに入る。

 そして召喚と同時に点数が表示される。

 

 [使用科目:化学]

化学教師 布施文博 501点

 

2-F  吉井明久 109点

 

 うわぁ、これはヒドい。

 明久もだいぶ成長したはずなんだが……教師にはまだまだ敵わないな。

 さて、どう出る?

 

 

 ……何か3球目でレフトフライが上がって楽々とアウトが取れた。

 この戦いは力が全てじゃないっていうのは分かっていたつもりだが……

 教師チーム、僕達が思っていたよりは強くは無いかもしれない。

 

 アウトカウントが一つ増えた所で次のバッターが出てくる。

 

「次は僕ですか。試獣召喚(サモン)っ」

 

 確かあの人は……現国教師の寺井先生か。

 僕達Fクラスの現国担当は竹内先生なので顔を合わせる機会は少なかったりする。

 

現国教師 寺井伸介 211点

 

 おおよそBクラス上位からAクラス下位レベルってとこだろうか?

 担当科目じゃないんだから妥当と言えば妥当な点数だろう。

 ただ、さっきの布施先生よりはスポーツをこなせそうな印象を受けるので油断はできない。

 

 ……なんて事を考えていたら一球目であっさりと打たれてしまった。

 

「ちゃんと捉えたと思ったんですけど、やっぱり生身とは違いますね」

 

 野球経験者だったんだろうか? それならしかたがない……か?

 むしろ一塁打で済んだ事を安堵した方が良いかもしれない。

 

 次のバッターは……Aクラス担任、そして学年主任の高橋先生か。

 ……あれ? 確かあのヒトの点数って……

 

学年主任 高橋洋子 801点

 

 

 

 

 

 

……僕、疲れてるのかな。

 こういう時は一度深呼吸だ。スーハースーハー……

 

 ……よし。

 

 

 

 

 

 

学年主任 高橋洋子 801点

 

 ……現実は、決して変わる事は無かった。

 そう言えば、合宿の時に瑞希と補習室でこんな会話をしたっけ……

 

『何人かが召喚獣で対抗しようとしたんですが、先生の点数が……』

『……数学か? 500点くらいか?』

『……824点です』

 

 ……つまり、アレだけが異常なのではなく、ほぼ全ての理系科目があの水準だと思って良いだろう。

 800点を越えているという事は、単純計算で半分にしても400点を越える。つまり、僕が30分テストを挑んでも絶対に敵わない水準という事になる。

 文系科目はどうなってるんだろうなぁ……知りたくも無いが。

 こんなもんは当然敬遠……って、ちょっと待て。

 何かフォームに違和感が……

 

「高橋先生、手が逆だ。それだと打ちにくいはずだ」

 

 ああ、どうりで。

 鉄人から高橋先生にかけられた一言で僕もようやく気づいた。

 って言うか、それすら分からないってどうなんだ? 素人ってレベルじゃないぞ?

 そこに付け入る隙ができそうだな。明久と雄二、頼んだぞ。

 

 

『ストライッ!』

 

 アウトコースの球にバントを当てようとして失敗したようだ。

 バントと言うと……『アウトカウントを一つ増やしてでも塁を進める』というような戦術のはずだ。

 しかし、あの点数を考えると愚策に思える。ちょっと脅すだけでフォアボールを取って出塁できるだろうし、バットが掠るだけでもかなりぶっ飛ぶはずだ。

 って事は……これは罠か。

 バントはバントでも、フェアを狙うプッシュバントだろう。

 

 

『ストライッ! バッターアウトっ!』

 

 続く二回の投球も明久が上手い位置に投げる事で乗り切った。

 いくら点数が高くても、こういった駆け引きには弱いようだ。

 

 さて、次のバッターは4番か。

 野球において4番バッターというのは強い人が任される。

 となると当然……

 

「俺の番だな。試獣召喚(サモン)

 

 鉄人こと西村先生の登場である。

 

補習教師 西村宗一 756点

 

 この人が野球が得意という話は聞かない。

 まあ当然だろう。運動全般が得意なのだからわざわざ野球を指定して噂する必要が全くない。

 それに加えてこの点数。

 敬遠で歩かせるのは当然だが、下手な敬遠球だと強引に打ち抜かれる可能性もあるレベルだ。

 

『フォアボール』

 

 ……まぁ、そうなるな。

 

 

 ……その後、何とか1アウト取って攻守交代。

 そして、攻守交代した。

 本当に一瞬で終わったよ。ビックリだったよ。

 まぁ、雄二が仕込んであるのはこの試合の最後の1回だ。そこまでは耐えるしかあるまい。

 さて、第二回の守備だ。頑張ろう。


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