バカ達と双子と学園生活   作:天星

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05 昼休みにて

 午前の競技が全て終了し、昼休みに入った。

 予定表によれば、野球大会が長引いた場合は昼休みを削る事になっていたようだが……第一回の裏で終了したからなぁ……

 

「昼休みが終わったら応援合戦、そして球入れ、大縄跳び、借り物競争、騎馬戦、最後にクラス対抗リレーか」

「あの、野球大会は……?」

「得点入んないからなぁ……」

 

 現在のFクラスは首位をぶっちぎり……という事はなく、全体順位で5位程度。

 原因は、集中力が持続せず午前後半の競技が振るわなかった事、直接対決しない他学年のクラスの成績が普通に良い事等だ。

 まぁ、上々か。皆にとっては野球大会の方がメインの競技だし。

 

 さて、話を戻そうか。

 現在は昼休み。この時間はどんなイメージがあるだろうか?

 お昼の休み……まんまだな。

 皆でお昼を食べる時間。まぁ、この辺が多数な意見かな?

 ……独りで隅っこの方で空腹を紛らわす時間と答える人が少ない事を祈る。

 さて、僕の場合は……

 

「じゃ、これが雄二からの依頼だ。頼んだぞ」

「おっけ~」

 

 ……他クラスの生徒との談笑に紛れて交渉する時間、と言った所だろうか。

 例えば某Bクラスの副代表とかと。

 

「ところで、大丈夫なの? 学園長と交渉したのは坂本くんだから、優勝してもFクラスの没収品しか返されない……なんて事は無い?」

「あ~……僕は交渉の現場を見てないが、雄二は『俺たちが教師チームに勝てたら持ち物検査で没収された物を返してもらう』と言ってそれが了承されたらしい。

 この『俺たち』と言うのが『2年生』の事を指すって解釈すれば問題ない」

「酷い拡大解釈を見たわ」

「これからやろうとしてる作戦はもっとヒドいぞ。その紙を開けてみ?」

「何々? えっと……この指示は……え、ちょっと待って? ええええっっ!? まさかっ!?」

「ちなみにルールをまとめたプリントはここにある。ほれ」

「……これ、大丈夫なの……? ルール違反じゃないの!?」

「……多分な!」

「……ルール違反で失格なんて嫌だからね……? ちゃんと乗りきりなさいよ?」

「そこら辺は雄二が上手くやってくれる事を祈ろう。

 ところで、お前は何を没収されたんだ?」

「聖剣エクスカリバー」

「貴様は学校に何を持ってきてるんだ!? っていうか道を歩いてるだけで警察官に没収されるぞ!?」

「冗談よ冗談。本当はエクスカリパーよ」

「……演劇に使えそうな剣だな。で、本当は?」

「ああ、うん。麻雀牌よ」

「そりゃ没収されるよ」

 

 麻雀って賭け事のイメージが強いからなぁ。

 この学校の少々厳しい持ち物検査なら余裕でアウトだろう。

 

「私は確率計算と心理分析を巧みに駆使して行うあの競技が好きなだけなのにっ!」

「言いたい事は分かるけどなぁ……」

 

 麻雀に対する世間一般の風あたりは強い。

 

「まぁ、麻雀談義は今はいい。とにかく頼んだぞ」

「りょーかい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 他クラスとの悪だくみ……じゃなくて交渉を終えた僕はみんなの下へと戻る。

 どうやら皆はAクラスのメンバーと先に昼食を食べていたようだ。

 少しくらい待っててくれても良いじゃないか……まあ良いんだけどさ。

 とりあえず、挨拶して腰を下ろす。

 

「ただいま」

「おうお帰り。首尾は?」

「上々だ。ところで、何の話をしていたんだ?」

「ああ、Aクラスへの頼み事と……」

「『没収された物は何か』っていうお題で盛り上がってましたよ。

 あ、空くん、これ、おにぎりです」

「お、さんきゅ」

 

 瑞希が朝に作っていたおにぎりだ。

 米の形を整えた後に適当に塩をまぶし、その後海苔を巻くだけという極めて単純な料理であるため、手順や調味料を間違えなければ普通に美味しく作れるらしい。

 ……まぁ、その『手順』や『調味料』を一人で料理してても間違えないようになるだけでかなり苦労していたのだが……

 

「お前……姫路の料理を躊躇無く受け取ったな……」

「もぐもぐ。

 それで、お前たちは何を取られたんだ?」

 

 Aクラスのメンバーに話しかける。

 まずは光が勢いよく語り出した。

 

「それが聞いてよ! 秘蔵の包丁を2本も没収されちゃったのよ!!」

「学校に包丁なんか持ってくるんじゃない!!

 ……で、どんな包丁なんだ?」

「『露断(つゆたち)』と『魂滅の刃(ソウルブレイカー)』」

「何でそんな物騒なモンを持ってきてるんだ!!」

 

 『露断』は光の包丁コレクションの中で……って言うか僕が知る刃物の中でほぼ最高の切れ味を誇る逸品。

 まな板はもちろん、ガラスや鉄筋コンクリートくらいなら豆腐のように切断できる。

 『魂滅の刃』は『実体無き物すら切り裂く』とかいう胡散臭いキャッチコピーで通販で売られていた代物。

 光が以前、どっかの怨霊を切り裂いたとか言っていたが……真偽は不明。少なくとも本人は信じている模様。

 なお、どちらも見た目は完全に日本刀っぽいが……光が包丁だって言ってるんだから包丁なんだろう。きっと。

 

「って言うか、それを何に使うつもりだったんだ……?」

「ああ~、演劇部の部長がね、何か見てみたいって言うんで持ってきたのよ」

「部長に代わってワシから謝っておくのじゃ。すまぬ」

「いや、あの部長なら仕方ないだろう」

 

 恐らく、これが一番キテレツな没収品だろう。これ以上のものは無い……と良いなぁ……

 

「……それじゃ、他の連中はどうなんだ? 頼むからまともな物であってくれ。

 あ、そうだ。木下姉だ。貴様ならまともだろう」

 

 と言うより、物を没収されたんだろうか?

 

「え、わ、私っ!? えっと、その……しょ、小説を……」

「…………ああ、良かったよ。()()()まともで」

「そ、そそそうね。うん」

「あれ? 剣は小説の中身は訊かないの? 優子さん、僕には教えてくれないんだよ」

「あ、明久くんにはアレは早すぎるわ!!」

「そうだぞ。その辺にしておいてやれ」

 

 誰しも人に言えない秘密ってあるからな。例えば、例えばだが……BL趣味とか。いや、他意は無いよ?

 

「ほい次行くぞ。工藤愛子っ!」

「はい待ってました~! ボクはね……

 ……録音機を取られちゃったんだヨ!!」

「…………?

 それなら、勉強の為って言い張れると思うが?」

「それがね~、中にちょっと不適切な音声が含まれちゃっててさ~。

 あ、内容聞きたい?」

「それはそこで鼻血を必死に堪えている奴に教えてやると良い」

「…………っ!(ブンブンブン)」

「お~、確かにイジりがいがありそうだネ。

 でも、剣くんが来る前にやっちゃったんだよネ~」

「そうか、では霧島は?」

「ちょ、スルー!?」

「……ヴェール」

「ん?」

「……如月ハイランドで貰った、ヴェール」

「……ちょっと待て、アレだよな?

 如月ハイランドのプレオープンのウェディング体験の時に貰ったアレか!?」

「…………(こくり)」

「……マジか」

 

 かなり大事な物だよなそれ……

 

「どうやらうちのお袋にほつれた部分を直してもらう為に預けてたらしいんだよ。

 で、俺が学校に着く前に渡した後、持ち物検査があったらしい」

「いや、ちょっと待て、それくらいは流石に没収されないんじゃないのか!? ちょっとしたアクセサリだとか、極論ハンカチとかって言い張れば大丈夫なんじゃないのか!?」

「他のもんと纏めて袋ごと没収されたらしい。そして色々と事情があって、その袋の中にヴェールが入ってたって事に気づいたのはついさっきだった」

「そりゃまた……」

 

 いやでも、流石にそれはおかしいだろう。

 確かに勉強に関係ないものではあるが……そんな大事な物まで没収するのはいくらなんでも横暴だろう。

 ……どうやら、連中に少々お灸を据えてやらにゃあならんようだな。

 

 

 

「ところで、剣くんは何を没収されたのカナ?」

「ヴァンガード」

「へ?」

「……カードゲームだ」

「……何か、思ったよりも普通だネ」

「…………ああ」


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