そんなこんなで時間は流れ、体育祭当日となった。
「頑張りましょうね、空くん!」
「まぁ、適当に頑張るが……あまり気を入れすぎなくても良いんだぞ?」
「え~? 頑張りましょうよ」
「だってなぁ……没収品が戻ってくるに越した事は無いが、返ってこなくてもフォローできる範囲内だし、本競技で良い成績取っても名誉がもらえるだけだしなぁ……」
「みんなで頑張る事が大切なんですよ!!」
「……聖典(笑)の為にか?」
「アレは別です」
何か瑞希の目が若干怖くなった。これ以上揚げ足を取るのは止めておこう。
「……僕から言える事はあんまり無いが……楽しんでこいよ」
「はいっ♪」
そう言って瑞希は野球大会の一回戦の会場へと向かう。
え? 僕? 一回戦は不参加だよ。
だってねぇ……召喚獣を使ってボールという名の小さな的をバットという細い棒で殴ったり、ボールという小さな砲丸をミットという小さな的に投げたり……地味に負担が大きいんだよね。
最初から飛ばして決勝戦でぶっ倒れるなんていう情けない展開は避けたい。
初戦の相手は2-Eなんで、僕抜きでも問題ないという事になり僕は温存する事になった。
試召戦争をやったら瑞希一人で全員蹴散らせるくらいの戦力だからな。野球ではどうなるか分からんけど。
そういうわけで、僕は本競技に適当に参加する。一応これでも副代表だし、クラスをまとめなければ。
とりあえず、Fクラスが集まっている場所に赴き、声を上げる。
「さて、
一斉に視線が集まる。やや小バカにするような台詞だった為か、結構な敵意を感じる。
まぁ、視線が集まれば十分だ。
「諸君らは諸君ら自身の手で聖典その他を取り返す権利を失った。
まぁ、正確には後で助けてもらうわけだが……あくまで補助だ。
だが、どうか腐らないで欲しい。今は没収品の事しか眼中に無いかもしれないが、どうか腐らないで欲しい」
もともと腐ってるんじゃ……? というツッコミは黙殺させてもらおう。
「考えてもみたまえ、今日は日頃からバカだと罵られ続けてきたFクラスにとってのアピールタイムだ。
諸君らの行動や成果は全校生徒に知れ渡る。
……この意味が、分かるか?」
『おい、どういう事だ?』
『ま、まさかっ!?』
『何っ、分かったのか!?』
「フッ、どうやら我々には聡明なる同士が居たようだな。
ではバカでも分かるように言ってやろう。
今日は、全校生徒に自身をアピールする事ができる貴重な場だ。
もう一度言う。『全校生徒に』だ。
そこの聡明なる同士よ、我が校の生徒は何人だ?」
『え、えっと…………』
「……1クラス50名、三つの学年があり、一学年6クラスとする」
『えっと……3×6×50で……
3650人だ!!』
「……900名だ。この愚か者が。
さて、本校には900名の生徒が在籍している。
そして、単純に考えれば、そのうちの半分である450名は……当然、女子だ」
『な、なんだって!? そんなに居たのか!?』
『って事はアレか!? もしやっ!?』
『気づいちまったみてぇだな。俺たち50人くらいで分けても一人当たり400人のハーレムが出来上がるってぇわけだ!!』
「……単純計算でも9名だ」
数学以前に算数ができてない奴が居るんだが……大丈夫なのだろうか?
と言うか、450人全員がお前たちに好意を寄せるという事はまず無いと思うのだが……
え? 一人も居ないんじゃないかって? う~ん……
まぁ、450人も居て、Fクラスがちゃんと目立てば一人か二人くらいは奇特な人間が……居る可能性は無きにしも非ずかもしれない。
「まぁ、そういうわけだ。気合を入れていくぞ」
『『『『おおおーーーーーーーっっっ!!!!』』』』
これで、バカどもは活躍してくれるだろう。
本当はわざわざこんな事する必要は無いんだが……こっちがサボってると野球の方に行ってる連中の士気が下がるからな。
……聖典を求めて戦う連中の士気がそう簡単に下がるとは思えないが、不安要素は取り除くに越した事は無い。
それに、ちゃんと勝てた方が瑞希も喜ぶだろうしな。
……その後、野球大会の方は無事に勝利したようだ。
あと、本競技に参加したFクラス生徒は皆優秀な成績を収めたが『気合が入りすぎて逆に引く』などの意見が他クラスから出ていたようだ。まぁ、些細な問題なので放っておこう。