案の定と言うべきか、野球大会に関する決定を見た雄二と明久が学園長に直訴しに行った。
で、何か交渉の結果『教師チームに勝てれば没収品を返してくれる』事になったとか。
「今更『ルールを元に戻せ!』と主張するよりはかなり実利のある結果だとは思うが……勝算はあるのか?」
今回行われるのは『召喚野球大会』。
点数を力にして戦う競技だ。
教師陣は勿論、上位のクラスは普通に脅威となる。
……まぁ、力が全てというわけでもないが、あった方が良い事は確かだろう。
「勝算が無かったらそんな提案はしてねぇよ。
勿論お前にも協力してもらうけどな」
「カードが返ってくるなら別に構わないが……
それより、ルールを見せてくれないか? 何か交渉してたらしいじゃないか」
「ああ。これだ。
ついでに、トーナメント表と当日のプログラムだ」
雄二から3枚のプリントが渡される。
※ メタな事を言ってしまうと、3枚とも原作通りです。
ルールは簡単だったのでそのまま書き写しましたが、トーナメント表とプログラムは面倒だったので書きません。
ゴメンなさい。
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召喚野球大会規則
・各イニングでは、必ず授業科目の中から一つを用いて勝負すること
・各試合に於いて、同種の科目を別イニングで再び用いる事は認めない
・立ち会いは試合に参加していない教師が務めること。また、試合中に立ち会いの教師が移動してはならない
・召喚フィールド(召喚野球仕様)の有効圏外へ打球が飛んだ場合、フェアであればホームラン、その他の場合はファールとする
・試合は5回の攻防までとし、同点である場合は7回まで延長。それでも決着がつかない場合は引き分けとする
・事前に出場メンバー表を提出すること。ここに記載されていない者の試合への介入は一切認めない。尚、これにはベンチ入りの人員および立ち会いの教師も含む
・人数構成は基本ポジション各1名とベンチ入り2名の計11名とする
・進行に於いては体育祭本種目を優先する。競技の時間が重なりそうな場合は事前にメンバー登録の変更を行っておくこと
・その他の基本ルールは公認野球規則に準ずる
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教師チームはトーナメントの別のブロックに居て、決勝戦で当たる。
つまり、優勝しなくちゃならんのか。
……さて、
「……いくつかツッコミどころがあるんだが……」
「どうした?」
「このトーナメント、抽選で偶然決まったとかじゃないよな? それにしてはキッチリと並び過ぎてる」
「ああ、そうだな」
「だったら何でいきなり上位クラスと上位クラス、下位クラスと下位クラスが当たってるんだ……?
普通は決勝で当たるように分けないか?」
いきなり2年と3年のAクラスとBクラスがぶつかり、その後それぞれ勝った方がまたぶつかり合うというなんとも歪な組み合わせ。
そのおかげでFクラスがBクラス以上のクラスと当たるのは3戦目以降になってくれている。って言うか、3戦目しか当たらないようになっている。
良い事なんだが、何というか……
「あ~…………上位クラス同士の試合を確実に来賓に見せたかったんじゃないか?」
「…………なるほど」
この競技はあくまでもシステムのPRであり、体育祭を盛り上げる事を目指しているわけではない……と。
「で、他にもツッコミどころがあるんだろ? 言ってみろ」
「このルールについてだが……大事な文が二つほど欠けている。お前が仕組んだのか?」
「ああ。ってちょっと待て、『二つ』?」
「二つだが?」
「俺は一つのつもりだったんだが……どこがおかしいんだ?」
「ああ、それは……」
雄二に説明する。このルールの二つの問題点を。
「……とまぁ、これらは言うまでもないからわざわざルールに書かれてないんだと思うが、逆に言えばこれらを明確に禁止するルールは存在しないわけだ」
「た、確かに。片方は俺が仕組んだものだが、もう片方も一応大丈夫……だよな?」
「『ギリギリセーフ』と書いて『だいじょうぶ』と読むのならな。
そもそも、僕が見つけた不備を突いても教師陣に正攻法で勝てるとは思えんが?」
「教師陣には勝てなくても他の試合では使えるかもしれん。一応心の隅に置いておこう」
「かもな」
「あと一つ」
「まだあるのか?」
「いやまぁ、凄くどうでもいい話なんだが……
……1回戦の方が決勝とかに比べて試合数が多いのに、なんで割り当てられてる時間が同じくらいなんだ?」
1~3回戦は1時間、4回戦にあたる決勝は1時間半取られている。
「……あれ? 何でだ?」
「…………」
文月学園の闇は深い……のかもしれない。