「これで完了です」
家に帰ってすぐ、傷の手当てを行った。
最初は僕が自分でやると言ったのだが、瑞希が『私の為に怪我をしたんですから、手当ては私がやります!』と頑として主張するのでしょうがないから任せた。
水で洗うだけで良いと言ったのだが……洗った後にラップを巻いて、更に包帯を綺麗に巻くというキッチリした手当てを施された。
余談だが、最近では傷口を消毒する事やガーゼを直接傷口に当てる事は殆ど無く、密着型の絆創膏等が使われる。今回のように大きな傷は傷口が乾燥しないようにラップを巻き、漏れ出た体液を吸い取る為に布を当てるのが正しい処置らしい。
「……すまなかったな」
「え? 何がですか?」
「僕のせいで面倒事に巻き込んでしまった」
「気にしないでください。空くんのせいじゃありませんよ」
「だが……」
「大丈夫です。確かに危ない目には遭いましたけど、それでも、今日は空くんと一緒にいられてとても楽しかったんです!」
「…………そうか」
「空くんは、どうでしたか? 今日私と一緒に居て、楽しかったですか?」
楽しかったか……そうだなぁ……
「……ああ。楽しかったよ。悔しいくらいにな」
「良かったです。
それじゃあ、明日もまだどこか、二人で行きましょうよ! きっともっと楽しいですよ!」
「……かもな。そうするか」
「それじゃあ明日はどこに行きましょうか!」
「気が早いな。ったく。
……まぁ、良いか」
二人で今後の予定を話し合う。
その後、瑞希は帰る気は無いようだったのでのんびりと雑談をする。
……あ、せっかくだから訊いてみるか。
「瑞希」
「はい、何ですか?」
「……お前はどうして僕の事をこんなにも信用できるんだ?」
「また妙な事を訊きますね」
「今日、お前を見捨てた時もハッタリだとすぐに見破っていたようだったしな。
少し気になっただけだ」
「そうですね……ちょっと矛盾してるかもしれませんけど、『信用できないから』です」
「それは……確かに矛盾しているかもな」
「空くんは信用できないので、言葉の裏までじっくり考えないと本音が分かりません。
だから、しっかりと疑って、考えて、おかしな点があったら何でそうなるのかをしっかりと考えて……
そうやって疑うからこそ信じられるんですよ」
「……そうか、そうだったな」
あの瑞希が人を疑う、か。
これは、良い変化、なのかな。
そうであって欲しいなぁ。
瑞希は変わりつつある。良くも悪くも。
それなら、僕も変わるんだろうか?
それは分からない。
変わるとしても、良い変化なのか、悪い変化なのか。
分からないことだらけだな。
だが、それも面白そうだな。
ああ。本当に、面白そうだ。