……翌日……
さて、話を始める前に昨日あった事をざっと説明しよう。
Cクラスは目論見どおりAクラスに特攻、玉砕。
今頃は一つランクが下の設備、Dクラスと同等の設備で楽しくやってるだろう。
そして午前中であっさり終わった為、補充期間はその日の午後で終了した。
つまり、やっと仕掛けられるワケだ。最終目標である、Aクラスへと!
……Aクラス教室……
「一騎打ち?」
「ああ。代表同士の一騎打ちを提案する。
その方が簡単だし、早く終わるだろ?」
今までの宣戦布告は僕が一方的にぶつけて去っていくだけで良かったが、今回は好条件に持っていく為にしっかり交渉する必要がある。
相手の交渉の代表は木下姉。こっちは雄二が担当している。
「何が狙いなの?」
「当然、Fクラスの勝利だ」
そういえば結局勝つ為の策は思いついたのかな?
王水弁当事件でうやむやになってしまったが……
「確かに簡単で早く終わるかもしれないけど……
危ない橋を渡る必要は無いわね」
ふむ、良く言えば慎重、悪く言えば消極的な意見だ。
じゃ、雄二、お前が集めてきた手札をぶつけてやれ。
「ふ~ん……
ところで、Bクラスとやりあう気はあるか?」
「び、Bクラスって……昨日来たアレ……?」
「ああ。
Bクラスの名が出た瞬間にクラスの空気がガラッと変わったな……
雄二の謎の策は戦略的にかなり良い影響があったようだ……かなり複雑な気分だが。
「……BクラスがFクラスに負けたなら、3ヶ月は宣戦布告出来ないはずだけど?」
ふむ、確かに。
敗戦の報復による戦争の泥沼化を防ぐ為に、負けたクラスは3ヶ月間どのクラスにも宣戦布告出来なくなる。
だが……
「あの戦争は内容はどうあれ対外的には『和平交渉にて終結』となっている。
つまりいつでも戦争が出来る状態だ。
勿論、Dクラスもな」
試召戦争の公的な勝利の定義は代表の撃破ではなく設備の交換とかランクダウンとか、その辺で定義されている。
よって、今回設備に手を付けてないので(あくまで公的には)引き分け扱いになっている。
「……それって脅し?」
「事実を言ったまでだ。
で、どうする?」
「…………はぁ……仕方ない。
良いよ。受けてあげる」
「そうか。助かる」
「でもそうね、こっちからも提案。
一騎打ちを1回きりじゃなくて、お互い5人ずつ選出して5回勝負にしない?」
「そのくらいなら構わない」
確かにな。
っていうか、もしかすると最初からそっちを狙ってたんじゃないか?
無理難題を吹っかけた後妥協したように見せるのは詐欺師の常套手段だからな。
「ホント? 嬉しいな」
「だが、対戦方法はこちらが決めさせてもらう」
「うぇっ、うーん…………」
「……受けても良い」
おっと代表のご登場か。
キナ臭い戦場に突っ込めるのは自信なのか無謀なのか……
「……但し、負けた方は勝った方に何でも一つ命令できる」
この提案は……どういう意図の物だろうか?
クラス間の協定や契約という類の物ではなく個人的な約束というか……そういう類のニュアンスを感じる。
『破ったときのペナルティは?』とか言うのはナンセンスだろうな。
「いいだろう。その条件で受けよう」
「ちょ、雄二!? まだ姫路さんがOKしてないよ!!」
ん? 何で姫路の名前が……?
ああ、
僕はまったくもって信じてないが……不安を払拭させるという意味でもちょっと手を出すか。
「では、こういうのはどうでしょうか?
1対1が5回なんです。
それぞれの戦いの勝者がそれぞれの戦いの敗者に命令出来る……というのは。
これならあくまでも負けは自己責任です。クラスメイトに被害が及ぶ事は無い」
「…………」
「そちらの代表さんがご不満なら、確約も付けましょう。
貴女と対戦するのはうちの代表だ……と」
「……それなら……良い」
「俺も異存は無い」
「え? アレ……?」
明久が混乱しているが……まぁ放っとこう。
「じゃあこうしましょう?
5回のうち3回はそっちが決めて良いわ。
残り2回はこっちで決めさせて」
妥当なライン……かな?
さて、雄二の対応は?
「決まりだな。じゃあ開戦時刻を決めよう。いつが良い?」
「そうね……午前10時からでどう?」
「乗った。じゃあまた会おう」
さて、どうなる事やら……
「ッッッッ!!!!!」
この……嫌な気配はっ!!
「ん? 剣? どうした?」
「…………大丈夫だ。問題ない」
「そうか? なら良いんだが……」
僕の直感が……警告を発してる。
一体……何が……?