バカ達と双子と学園生活   作:天星

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04 迷走

 僕たちは明久たちとともにアミューズメントエリアを遊び倒した。

 途中までは割と平和に遊んでいたのだが、クイズゲームで瑞希と木下姉の実力が拮抗し、一進一退の攻防を展開した。

 勝負は白熱し、気付いたら昼食時になっていた。

 2人共負けず嫌いな所あるからなぁ……人の事は言えんが。

 まぁそんなわけで、今現在僕達は2人でフードコートをぶらついてる。

 

「ん~……色々あるなぁ……何か食いたいもんとかあるか?」

「そうですね~…………」

 

 適当にぶらついてみてはいるんだが、『これだ!』というような店は見当たらない。

 

「何か良さげな店は無いもんかねぇ……」

「そうですね……」

「だったら、あっちの方に穴場の良い店があるよ?」

「お、そうか。じゃあ案内してくれ」

「お願いしますね」

「うん! この道を真っ直ぐ進んでね~」

 

 

 

 

 

 

 そして少し歩いて……

 

 

 

「……って、何でノーリアクションなの!? そこは驚く場面だよね!?」

 

 のんびり振り返って自然な感じで会話に乱入してきた人物の姿を確認する。

 そこに居たのはBクラス副代表こと御空零だった。いやまぁ、声で分かってたんだが。

 

「驚くったってなぁ……」

「ですよねぇ……」

「いや、空凪くんに驚かれないのは何となく分かるんだけどさぁ……どうして姫路さんまで平然としてるの!?」

「え? ああ、空くんがゲームしてる最中に一瞬だけ明後日の方向に視線を向けたんで何かなって思ってそっちの方を見たら御空さんが居たので」

「何それ!? それはそれで怖いよ!?」

 

 瑞希の言う通り、ゲーム中に何か視線を感じたんで確認した記憶があるが……本当に一瞬しか確認しなかったはずだ。

 それをはっきりと見てたんだろうか……?

 

「……で、どうしてお前がここに居るんだ?」

「そうだよね? そういう質問が真っ先に来る場面だよね!?

 すんなり受け入れてどっかの店に行く場面じゃないよね!?」

「多少順番が前後しただけじゃないか。

 で、どうして居るんだ?」

「いや~、朝に突然『デートの仕方を教えてくれ』ってメールが来たからね。

 空凪くんと付き合えるような変人に興味があったんで来てみたんだ。

 にしてもあの姫路さんがねぇ……」

「それってどういう意味ですか?」

「いや、バカにしてるわけじゃなくてね。姫路さんも変わったんだなぁって。

 良い変化か悪い変化は別として」

「まぁ、こんなのと付き合えるようになるっていうのは確実に悪い変化だろう」

「そんな事無いですよ! 良い変化に決まってますよ!!」

「はいはい、仲が良い事で。

 それじゃ、こっちよ」

 

 

 そんなこんなで、僕達は御空の案内に従ってついていく。

 

「……結構遠いのか?」

「いいえ、そんなに遠くは無いわ」

「そうか」

 

 

 

 

  ……数分後……

 

 

「………………」

「………………」

「………………」

 

 

 

 

 

 

 

  ……数十分後……

 

 

「……おい、まだ着かないのか?」

「え、ええ。もうちょっとで着くわ。(……多分)

「なんだか、少し不安になってきたんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

  ……更に数十分後……

 

「……いい加減に腹が減ってきたんだが?」

「も、もうちょい! もうちょいのはず!!」

「……あの、もしかしてですけど……

 ……道に迷ったんですか?」

「な、ななな何言ってるのよ!! わ、わたっ、私ともあろうものがそう簡単に道に迷うわけが……」

「……迷ったんだな?」

「い、いいえっ! 私は迷ってない!! この街が迷ってるのよ!!!」

「凄い言い訳だな……」

「どうしましょうか、空くん」

「……まぁ、簡単な事だ。

 今朝も言った通り、分からないなら調べれば、あるいは分かる誰かに訊けば良い」

 

 そう言って僕はおもむろに携帯を取り出す。

 

「あ、もしもし? ちょっとお願いしたい事が……」

 

 

  ……そして数十秒後……

 

 

 キキッという音とともに、僕達の目の前に一台のタクシーが止まる。

 

「お久しぶりですね。お元気でしたか?」

「ええ。お客さんもお元気そうで何よりです」

 

 僕が呼んだのは一台のタクシー。

 かつて光と秀吉を尾行する際に協力してもらった運転手の人である。

 

「わざわざお呼び立てしてしまって申し訳ないです」

「いえいえ、どうせ暇だったんで、お客さんが居るのは純粋に有難いですよ」

「それじゃあ、電話で説明したように、手近な良い店までお願いします」

「了解っ! それじゃあ皆さん乗ってください」

 

 全員が乗り込んだのを確認すると車が動き出す。

 そしてものの数十秒で停止する。

 

「はいっと。ここがお勧めですよ!」

「ありがとうございます。では、失礼します」

「あ、お客さん、お代!」

「御空、頼んだぞ」

「ええええええっっ!?」

「何を驚いている。お前が道に迷わなければこんな所まで来る羽目にならなかったんだぞ?」

「うぅぅぅぅ……しょうがない……」

「はい、毎度っ、またのご利用をお待ちしています!」

 

 定形文句を残して運転手は去って行った。

 

「しっかし、流石は土地勘のある運転手。現在地から見える目印を適当に伝えただけですぐに場所を特定してとんできたし、『近くの手頃な店に連れて行ってください』って言うだけで迷い無く車を動かしたな」

「ところでさ、タクシーに乗る意味はあったの!? 道を尋ねるだけじゃダメだったの!? 私の財布が寂しくなっただけな気がするんだけど!?」

「だって、電話しておいてタクシーを利用しないなんて失礼極まりないじゃないか」

「それはそうかもしれないけどさ!!」

「あの~……とりあえずご飯食べませんか?」

「おっと、それもそうだな。

 御空、お前はどうするんだ?」

「え? ああ、私はもう別の場所で食べたから。2人で楽しんでね。

 それじゃ、またね」

 

 そう言い残して御空は去って行った。

 

「……あいつ、道に迷わないと良いんだが……」

「……そうですね」


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