バカ達と双子と学園生活   作:天星

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01 知識

 そんなこんなで時間を適当に置いてから2人で本屋へ向かう。

 ちなみに瑞希には買いたい本などは特に無いらしい。

 『じゃあ何でついてきたんだよ』なんて事は訊くまでも無いが。

 

 

 そしてしばらくして本屋の前に辿り着く。

 その扉はまだ閉まっていた。

「……ちっ、少々早すぎたか」

「もうすぐ開く時間ですけど……?」

「数秒とはいえ僕を待たせるとは良い度胸だ。やはりピッキングを……」

「しないで下さいよ!!」

 

 時計の、針が、進む。

 そして、今日という日が始まってから時計の秒針が540周したその瞬間……

 僕は駆け出していた。

 そして……

 

ゴンッ

 

「いてっ!」

「何してるんですか!?」

「くっ、今日は開店がやや遅い日だったか!!

 最近は通常より早いから油断してんた!!」

「あの、開店に早い遅いなんてあるんですか……?」

「あるに決まっているだろう!!」

「そうなんですか!?」

 

 そんな感じでコントをしていると普通に店が開いた。

 

「おっと、そんな話をしている場合ではなかった。行くぞ!!」

「は、はいっ!」

 

 新刊コーナーに駆け込み、目的のブツを回収していく。

 

 『照-Teru- Side雀』 7巻

 『米これ 日の丸サイド!』 1357巻

 『Goddes Beats!! Toward Sun Door』 59巻

 『ばねの人々』 2巻

 

 ……回収完了だ。

 

「ふぅ、今回は何とか取れた」

「あの~……」

「ん? どうした?」

「これって、どれも最新刊なんですよね?」

「ああ」

「じゃあ、コレは一体……?」

 

 瑞希が恐る恐る見せてきた一冊の本。

 

 『照-Teru- Side雀』 8巻

 

 そう、書かれていた。

 念のため、自分の手元の本を確認する。

 

 『照-Teru- Side雀』 7巻

 

 ……そう、書かれている。

 

「一体、どういう事なんでしょうか……?」

「……こ、これはまさかっ!!」

「何か心当たりがあるんですか?」

「ああ。この本屋には七不思議が存在する」

「え? はぁ……」

「例えば、『発売日の早朝に一冊しか無い新刊の本』『開店前の扉の前では殆ど人が居ないように感じるが実際には沢山居る』等がある。

 そしてその中に『発売日になってないのに入荷する本』というものが存在するっ!!」

「…………はい?」

「恐らく今回はそれに遭遇したのだろう、でかした瑞希!!」

「あ、えっと……喜んで頂けて良かったです?」

「よし、褒美に家の合鍵をもう一本やろう」

「要りません」

 

 うん。知ってた。

 

「じゃあ仕方ない。お前の家の鍵を……」

「もっと要らないですよ! って言うか何で持ってるんですか!?」

「ああ、さっきスリ取った」

「ええっ!?」

「冗談だ。そんな慌ててポケットを確認しなくても良いぞ」

「……驚かせないで下さいよ!!」

 

 

 

 

 

 そんなやりとりをしながらとりあえず家に帰る。

「よしっと。これでとりあえず今日やるべきことは終わりだ。

 ……ところで、お前はこれからどうするんだ?」

「え? 特に予定は無いですよ? 空くんはどうですか?」

「奇遇だな。僕も特に予定は無い」

「それは良かったです。じゃあデートしましょう!」

 

 あれ? 何か今、話が跳ばなかったか?

 『瑞希に予定は無い』→『僕にも予定は無い』→『じゃあデートしよう』

 

「……うん、何の問題も無いな。

 って、なるわけないだろうが!!」

「え? 何かおかしかったですか?」

「…………はぁ、まぁいっか。

 で、どこに行きたいんだ?」

「え? えっと…………どうしましょうか?」

「……よし、話をまとめようか。

 お前はデートというものをしてみたい。

 が、詳しい事は全く分からない。ここまでは良いな?」

「はい。そうです!」

「自信を持って言う事じゃないからな?

 それで一つ訊くが……僕がデートの方法とかを知っているように見えるか?」

「いいえ、全然!」

「よく分かってるじゃないか」

 

 仮に知識を持っていたとしてもそれを活用しようという発想が無かったのでほぼ役に立たない代物となっている。

 

「ど、どうしましょうか……?」

「まぁ落ち着け。分からないのなら調べれば良い。そうだろう?」

「なるほど、そうですね!」

「では、このギャルゲーを参考に……」

「ちょっと待ってください? 何だか急に不安になってきたんですが!?」

「安心しろ。このゲームの世界は割と致命的なレベルの個人情報があっさり流出したり、一度話しかけた後にしばらくの間話しかけないだけで悪い噂を広める地雷な女子が多数居たり、主人公が毎週スタンド使いと戦ったりするが、それ以外は至って普通の世界だからな!」

「不安しか無いんですけど!?」

「むぅ、そこまで言うのであれば仕方あるまい。

 じゃあそうだな……ショッピングモールにでも行くか」

「えっと、それはどうしてですか?」

「ゲーセンや映画館といった、『らしい』場所が多数集まっている、

 フードコートもあるから食事の心配も無いし、休憩所もあるから歩き疲れても休める。

 ついでに、交通の便が良い場所にあるから、気が変わったらすぐに別の場所に行ける。

 こんな所だな」

「よくそんなスラスラ出てきますね。凄いです!」

「……って、御空にメールで相談したら返ってきた」

「数秒前の感動を返してください。

 って言うか、いつのまに相談したんですか!?」

「ん? まぁ細かい事は気にするな。

 しっかし流石は御空だ。的確なアドバイスだな」

「確か、Bクラスの副代表の方でしたよね? 何者なんでしょうか……?」

「…………さぁな」


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